エヌイーシーモバイリング(株)は19日、都内に報道関係者を集め、オフィスなどの遠隔地から、公共施設に設置した大型ディスプレーなどの表示装置に、インターネット上で公開されているウェブ情報をプッシュ配信できるシステム“Information on Demand(IOD:仮称)”の実証実験を開始すると発表した。実験は、5月1日から9月末日まで行なわれる。
モバイルマルチメディア推進室主任の内山隆氏 |
説明会において、同社モバイルマルチメディア推進室主任の内山隆氏は「インターネットは、見ようとするサイトのURLを入力して、情報を“引っ張って”くる“プル型”が従来の形。それならば、見せたいと思う側が、任意の場所に見せたいサイトを表示させる“プッシュ型”があっても良いのではないかと考えた」と述べた。具体的なイメージについて、同氏は「iモードなどの端末から表示装置に、見せたいウェブサイトのURLを電子メールで送信する。表示装置は、指定されたアドレスに自動的にアクセスして、ウェブサイトを表示する」と述べた。
ユーザーのニーズに合わせたシステム構築例 |
IODのシステムは、Windows 2000上で動作する。表示装置は、RGBに対応した入力端子があれば接続が可能だという。評価版に搭載している主な機能としては、10件程度のURLアドレスの指定機能や、URLアドレスごとの表示日時および曜日の指定機能、RGB装置の電源制御機能や、表示状態情報のレポーティング機能など。ブラウジングにあたっては、ADSLやFTTHなどのブロードバンド回線や、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)の第3世代移動通信サービス“FOMA”を利用することにより、動画のストリーミングなども表示できるという。また、無線LANや、NTTドコモのパケット通信サービス“DoPa”やFOMAなどの無線通信回線を利用すれば、回線施設が不要になり、災害時の避難所など、電源のみしか用意できない場所に設置された表示装置へも配信が可能になるとしている。
IODの、公共施設での利用イメージ |
同社は、想定されるIODの利用分野や用途として、駅前などに設置されている映像表示媒体(電光掲示板や大型ディスプレーなど)における広告分野での利用や、各種行政施設やイベントホール、大学のキャンパスやホテルなど、民間公共施設における公共分野での利用を例に挙げている。
なお、今回の実証実験の目的は、表示装置にインストールするオリジナルブラウザーの研究・開発と、商品化に向けてのビジネスプランの策定など。実証実験中の主な設置場所は、各展示会や同社のオフィスなどで、一般公共施設などには設置しない予定。
IODについて、同社モバイルマルチメディア推進室システムマネージャーの島田博輝氏は「現状で課題としているのは、表示装置に組み込む制御装置の小型化。パソコンそのものだと場所を取るので、実際の製品では、“SBC(Small board Computer)”(※1)などを利用したい。ストレージに関しても、HDDなどを組み込むと装置が大きくなるし価格が高くなってしまうので、何を採用するか考えている。実際の製品では、2~3万円に価格を設定したい」と述べた。また「新宿や渋谷などにある巨大ディスプレーは、背後に巨大なスタジオがあって、そこで制御を行なっている。IODは電子メールで、複数の拠点に一斉配信を行なえるので、そのようなスタジオも不要になるだろう」と語った。
※1 SBC :組込み機器などに使われる小型シングルボードコンピューターのこと。