日本電気(株)は16日、都内の本社に報道関係者らを集め、政府や企業向けに、ブロードバンド&モバイル関連システムを効率的に構築できるソリューション“iBestSolutions/BroadBand&Mobile(アイベストソリューションズ ブロードバンド&モバイル)”を確立し、同日付けで関連製品の販売を開始すると発表した。
左からNECソリューションズのITソリューションマーケティング事業本部長である山崎幸雄氏と、ソリューションズ開発研究本部長である海老野柾雄氏 |
発表会の冒頭で、NECソリューションズITソリューションマーケティング事業本部長の山崎幸雄氏は「iBestSolutionというのは、1999年に“Invitation to Internet”という形でインターネットの普及に対応するために、弊社のソリューション体系をインターネットに特化して整備したもの。11日付けで発表した通り、今回これを“Empowered by Innovation”という形でブロードバンド対応にリニューアルし、“iBestSolutionV2”とした。本日は、これにブロードバンド&モバイルを追加し、要の一つとして発表させていただく」
「情報システムは、ネットワークの進展に合わせて変化しつつある。従来、メインフレームを中心にして、個々のシステムが単機能のシステムとして働いていたわけだが、インターネットの進展に伴っていろいろなシステムがつながり始めた。ネットワークで接続されたシステムは、取引先の顧客や、関係企業間の取引そのものを取り込み始めている。さらに、ブロードバンドの進展にともなって、流通するコンテンツそのものが大きな広がりを見せ始めた。扱う情報そのものが変化し、関係取引先の連携についても、一段と進化している」
NECが考える、信頼性と拡張性、安全性とスピードを備えたオープン・ミッションクリティカルなシステム基盤と、広帯域で双方向に常時接続が可能な通信環境、および経済性と省力性を兼ね備え、ノンストップで運用できる安全性を持った情報システム |
「いわゆる、直接システムに携わる人々を飛び越えて、企業組織の有機的な連携によって革新が加速化し、企業そのものを進化させる。このような情報システムが必要でないかと思う。求められる条件としては、信頼性と拡張性、安全性とスピードを備えたオープン・ミッションクリティカルなシステム基盤と、広帯域で双方向に常時接続が可能な通信環境、および経済性と省力性を兼ね備え、ノンストップで運用できる安全性を持っていなければならない。これらすべての要件に呼応して強化したのがiBestSolutionV2。弊社ではこれを“コラボレーション型情報システム”と標榜している」と述べた。
iBestSolutions/BroadBand&Mobileの構成図 |
iBestSolutions/BroadBand&Mobileは、大きく分けて“BBM活用ソリューション”と“BBM共通基盤ソリューション”という2つのソリューションによって構成される。BBM共通基盤ソリューションでは、BBM共通基盤ソリューションと組み合わせて、政府対消費者(GtoC)や企業体企業(BtoB)など、さまざまなビジネス領域において利用できるソリューションを提供する。今回同社は、“ネットワーク型教育ソリューション”と、“遠隔相談ソリューション”、および“BBマンションソリューション”という3つのソリューションメニューについて発表した。今後、電子政府・電子自治体による住民サービスソリューションや、遠隔医療・介護支援ソリューション、モバイルマーケティング、電子調達など、順次ソリューションメニューを発表し、提供していくという。
ネットワーク型教育ソリューション。早稲田大学などで実用段階に入っているという |
ネットワーク型教育ソリューションは、受講者が都合の良い時に合わせて学習できるシステム“オンデマンド型授業システム”だけでなく、ネットワークを介して受講者同士が協力して課題に取り組むシステム“協調型教育システム”などを提供するというもの。早稲田大学や東北福祉大学などの大学が導入し、実証実験を経て、すでに実用段階に入っているという。また、遠隔相談ソリューションは、金融商品の説明やシミュレーション、利用相談などを、ネットワークを介してVoIPなどで行なう“遠隔相談システム”を提供し、マルチチャネルによるコンタクトセンターなどを構築できるというもので、こちらも某金融機関において、すでに実用段階に入っているという。そして、BBマンションソリューションは、マンション住居社向けにブロードバンドを利用して、マンション構内のブロードバンド接続サービスだけでなく、セキュリティー・管理サービスや生活・地域情報提供サービスなど、多様なサービスを提供するための基盤システムを、マンションや住宅建設業者に対して提供するというもの。これは2001年11月から実験に着手し、現在も実証実験中という。提供に当たっては、同社も参画している総務省の認可法人“通信・放送機構(TAO)”が行なっている、次世代住宅情報化実証実験の成果も反映させていくという。
BBM共通基盤ソリューションを構成する製品群と開発環境 |
一方、BBM活用ソリューションの基盤となる“BBM共通基盤ソリューション”は、ストリーミング配信用ソフト“StreamPro(ストリームプロ)”や、モバイルサービス基盤ソフト“Moirissimo(モアレッシモ)”、著作権保護基盤ソフト“RightsShell”、位置情報基盤ソフト“ActiveTrace(アクティブトレース)”などの製品群と、JavaやXMLに対応したシステム開発環境で、開発ツールと各コンポーネントのパッケージ“ActiveGlobe SystemDirector”などを利用して、システム構築を短期間かつ経済的に構築できるというもの。主なソリューションメニューとしては、コンテンツ配信やデジタルアセット管理、著作権保護などを可能にする“BB配信ソリューション”、モバイル対応システムやモバイルコマースなどを可能にする“モバイルソリューション”、企業内のネットワーク構築やサービス基盤などを提供する“ネットワーク基盤ソリューション”などを用意している。
MPEG-7の映像検索技術 |
また同社は、今後もBBM共通基盤ソリューションについて、継続的に強化・拡充を進めていくために、現在行なっている研究開発活動について発表し、デモンストレーションを行なった。同社では、MPEG-7への取り組みや、高機能映像検索技術の開発、覚や聴覚など複数の手段を組み合わせたインターフェース“Web・音声統合サービス基盤技術”(マルチモーダル技術)への取り組みなどを行なっているという。
同社独自の高速映像検索方式によるMPEG-7の映像検索 |
MPEG-7については、国際標準化活動に積極的に取り組んでいるほか、同社独自の高速映像検索方式を開発しているという。これについては、15秒のTVCMムービーにそれぞれメタデータを付加し、連続して収録されているムービーの中から、特定のムービーを検出するという、同社が開発した高速映像検索のデモンストレーションを行なった。同技術では、24時間のビデオデータの中から、平均1秒程度で特定のシーンを検出できるという。同社はこの技術を利用した、デジタルアーカイブシステムの製品化にも取り組んでいるという。
マルチモーダル技術 |
マルチモーダル(※1)技術については、同技術を利用した、ウェブ画面に音声から入力を行なえる情報サービスなどの開発に取り組んでいるという。これによってコールセンターなど、音声対話が必要なサービスの付加価値の増加と、システムインテグレーションにかかるコストの削減を行なえるという。また、国際標準化団体W3Cのウェブ・音声統合仕様策定ワーキンググループである“Multimodal Interaction WG”に参加し、同社の技術を標準仕様へ反映する活動を行なっているという。
※1 マルチモーダル (Multimodal)人が知覚できる1つのチャンネルを流れる情報(言語、個性、感情など)を“モダリティー”と言い、これを複数利用するコミュニケーションを“マルチモーダル”と呼ぶ。コンピューターの分野では、言葉、身振り、表情などを含むインターフェースのことを指す。NECソリューションズのソリューションズ開発研究本部長である海老野柾雄氏は今後の取り組みについて、「従来のサーバーなどインフラをベースとして、技術を加えてコンテンツやソフトウェアの付加価値を高めて提供していきたい」と述べた。
同社はiBestSolutions/BroadBand&Mobileについて、今後3年間で1200システムの販売を見込んでいる。また、iBestSolutions/BroadBand&Mobileをはじめとして、iBestSolutionsV2に関するセミナーやソリューション紹介を行なう“e-Trend Conference&Fair”を、5月8、9日に東京都渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行なう。また、中堅・中小企業を対象したセミナーやソリューション紹介を行なう“iBestSolutions.Suite Fair”を、7月4、5日に東京都千代田区の東京国際フォーラムにおいて開催する。