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電子ディスプレイ展、システムLSIソリューションフェアが開催──17インチ有機ELワイドディスプレーが参考出品

2002年04月17日 06時29分更新

文● 編集部 佐々木千之

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16日、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する電子ディスプレー(※1)の専門展示会“EDEX2002 電子ディスプレイ展”と半導体・システムLSIの専門展示会“ESS2002 システムLSIソリューションフェア”が、東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開幕した。会期は18日までの3日間で、入場料は無料。

※1 EDEX2002で取り上げる“電子ディスプレー”は、液晶ディスプレー、有機EL(OLED)ディスプレー、蛍光表示管などを指しているが、PDPは含まれていない。

EDEX2002は今回で17回目、ESS2002は26回目の開催で、2001年から同時開催となっている。展示会のほかに、開発者向けカンファレンス“電子ディスプレイフォーラム”および“ESS2002 Conference”と、さらに半導体製造機器関連団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が主催する半導体製造機器・部品材料の展示会“SEMI FPD Expo 2002”も併催となっている。EDEX2002の出展社/団体は31で前回の35から減少したが、ESS2002は32と前回の21社から大きく増加た。JEITA/SEMIでは、昨年並みの3万5000名の来場者を見込んでいる(イベント別の来場者は非公表)。

3つのイベントを合わせて、昨年並みの3万5000人の来場者を見込む
3つのイベントを合わせて、昨年並みの3万5000人の来場者を見込む

開催概要に関する記者会見で、EDEX2002 電子ディスプレイ展実行委員会の高木侯冶委員長は「ディスプレーを生かすにはモバイルやブロードバンドを実現する半導体・LSIが必要、半導体にはそれを生かすためのディスプレーが必要で、互いにそれなくしては成り立たない」とEDEX、ESS併催の意義を述べた。

EDEX2002 これまでで最大の17インチ有機ELディスプレーがお目見え

EDEX2002で目立ったのは、前回もそうだったが携帯電話用の小型ディスプレーパネルで、STN液晶、(アモルファス)TFT液晶、低温ポリシリコン液晶それぞれにおいて、透過型、半透過型、反射型のバリエーションを各社が展示していた。傾向としては国内の携帯電話の動向を映す形で、モノクロは姿を消し、カラー全盛。表示色数も6万色以上のものがほとんどとなった。ただ色数についてはパソコン向けのように1600万色までは必要とされないということで、最大でも26万色に落ち着きそう。今後は動画対応のための応答速度向上や、高解像度化が進むとみられる。

シャープが参考出品した2インチの“高輝度カラーアドバンストTFT液晶モジュール”従来の透過型液晶パネルと同じ透過率のまま明るさを2倍にし、さらに反射率が3倍にしたというシャープが参考出品した2インチの“高輝度カラーアドバンストTFT液晶モジュール”従来の透過型液晶パネルと同じ透過率のまま明るさを2倍にし、さらに反射率を3倍にしたという
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、2.2インチで240×320ドットという高精細の半透過型液晶パネル
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、2.2インチで240×320ドットという高精細の半透過型液晶パネル
日本電気が参考出品した、2.1インチ低温ポリシリコンカラー液晶パネル(176×240ドット。26万色)日本電気が参考出品した、2.1インチ低温ポリシリコンカラー液晶パネル(176×240ドット。26万色)
日立が参考出品した2.2インチで240×320ドットという高精細液晶パネル日立が参考出品した2.2インチで240×320ドットという高精細液晶パネル

パソコン向け液晶パネルは比較的出品が少なく感じられた。これは東芝松下ディスプレイテクノロジー(株)のような事業統合で出展社が減ったことや、韓国系企業でパソコン向けの展示を行なったのがサムスン電子(株)のみだったこと、日本IBM(株)や台湾のパソコン用液晶パネルメーカーが出展していないことなどが理由だろう。目新しい展示としては、これまで15インチでSXGA+(1400×1050ドット)、UXGA(1600×1200ドット)に留まっていたノートパソコン向けに16インチのものが登場した。ノートパソコンで16インチ(対角41cm)は大きすぎるのではとも思うが、説明員によると「ノートパソコンメーカーからの要望があった」(日立製作所)のだという。

セイコーエプソンが参考出品した、反射型の低温ポリシリコンTFT液晶パネル。320×320ドット26万色表示が可能。低温ポリシリコンではさらに高解像度を狙うとしている
セイコーエプソンが参考出品した、反射型の低温ポリシリコンTFT液晶パネル。320×320ドット26万色表示が可能。低温ポリシリコンではさらに高解像度を狙うとしている
シャープが展示していたノートパソコン向け16インチSXGA(1280×1024ドット)液晶パネル。輝度は当たり200cd、コントラストは400:1
シャープが展示していたノートパソコン向け16インチSXGA(1280×1024ドット)液晶パネル。輝度は200cd、コントラストは400:1
日立の16.1インチUXGA(1600×1200)液晶パネル
日立の16.1インチUXGA(1600×1200ドット)液晶パネル
セイコーエプソンが開発中という3.5インチ(240×320ドット)のPDA向け半透過型カラー液晶パネルセイコーエプソンが開発中という3.5インチ(240×320ドット)のPDA向け半透過型カラー液晶パネル
シャープが参考出品していた3.7インチで480×640ドット(220ppi)の高精細VGAカラーアドバンストシステム液晶パネル
シャープが参考出品していた3.7インチで480×640ドット(220ppi)の高精細VGAカラーアドバンストシステム液晶パネル

携帯電話、パソコン向け以外では、各社がテレビ向け液晶パネルを出品した。シャープ(株)の『アクオス』が大型液晶テレビという市場を切り開いたのを見て、一気に参入の動きが激しくなったようだ。対するシャープは、アクオス用の液晶パネルの外販に踏み切っている。

三洋電機の液晶テレビ向け40インチワイドカラー液晶パネル
三洋電機の液晶テレビ向け40インチワイドカラー液晶パネル
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、テレビ向けの14インチ低温ポリシリコン液晶パネル(640×480ドット)。上下左右160度で色変化の少ない広視野角と、16msという高速な応答性、1平方メートルあたり500cdという高輝度が特徴。20インチのものも展示していた
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、テレビ向けの14インチ低温ポリシリコン液晶パネル(640×480ドット)。上下左右160度で色変化の少ない広視野角と、16msという高速な応答性、500cdという高輝度が特徴。20インチのものも展示していた
日本電気が参考出品した21.3インチで2048×1536ドットという高解像度のTFTカラー液晶パネル。コントラストは300:1で、輝度は1平方メートルあたり200cd。同じ大きさ、解像度で、コントラストが700:1、輝度が700cdというモノクロTFT液晶パネルも展示していた
日本電気が参考出品した21.3インチで2048×1536ドットという高解像度のTFTカラー液晶パネル。コントラストは300:1で、輝度は1平方メートルあたり200cd。同じ大きさ、解像度で、コントラストが700:1、輝度が700cdというモノクロTFT液晶パネルも展示していた

さて、今回の展示の中で、最も人を集めていたのは東芝松下ディスプレイテクノロジーが出品した、17インチの有機ELワイドディスプレー(1280×768ピクセル)(※2)。報道陣はもちろん、出展各社や技術者がひっきりなしに訪れていた。17インチというサイズは昨年ソニー(株)がCEATECなどに出品した13インチ(800×600ピクセル)を上回り、これまでイベントなどで展示された有機ELディスプレーとしては最大クラス。輝度は100~300cd/m2でコントラストは200:1以上で、2、3年後に製品化したいとしている。動画表示性能は高く、さすがは有機ELディスプレーといったところだが、色は色温度の低い、かなり黄色っぽいもので、発色の良さでは同時に展示していた2.2インチ(176×220ピクセル)のものがはるかに優れていると感じた。

※2 カラー液晶ディスプレーでは1ドットが1ピクセルに対応するが、有機ELやPDPではRGBの3つのドット(蛍光体/発光セル)で1ピクセルを構成する。本稿では液晶パネルの解像度としてはドット、有機ELパネルの解像度としてピクセル表記とした。

東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示して注目を集めた17インチのカラー有機ELワイドディスプレー。1280×768ピクセルと解像度も高い
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示して注目を集めた17インチのカラー有機ELワイドディスプレー。1280×768ピクセルと解像度も高い
同じく東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示した2.2インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。他社の有機ELディスプレーと比較しても鮮やかな発色が印象的同じく東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示した2.2インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。他社の有機ELディスプレーと比較しても鮮やかな発色が印象的
東北パイオニアが参考出品した1.8インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。2003年に製品化の予定東北パイオニアが参考出品した1.8インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。2003年に製品化の予定
セイコーエプソンが参考出品した2.1インチのカラー有機ELディスプレーパネル。高分子有機EL素材を使用し、130ppiという高解像度を得たというセイコーエプソンが参考出品した2.1インチのカラー有機ELディスプレーパネル。高分子有機EL素材を使用し、130ppiという高解像度を得たという

有機ELディスプレー開発では最も進んでいるメーカーの1つである三洋電機(株)は、5.5インチや2.2インチサイズを展示していたが、これは昨年のCEATECなどで展示していたのと同じものということだった。ただ、2.2インチのものは秋以降の年内に製品化すると明言した。また、カーオーディオ向けのモノクロ有機ELパネルの商品化で先行している東北パイオニア(株)も1.8インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELパネルを展示し、2003年に製品化の予定としていた。

東北パイオニアが参考出品した有機ELパネルを使ったMDプレーヤー。実際にこうした商品が間もなく登場の見込みという
東北パイオニアが参考出品した有機ELパネルを使ったMDプレーヤー。実際にこうした商品が間もなく登場の見込みという

ESS2002 デジタルカメラや携帯電話向けプロセッサーが展示

ESS2002では、各種のプロセッサーコアに周辺回路を加え、さらにメモリーやシステム(ROM)までを1チップにしたいわゆる“System on Chip(SoC)”製品の展示が比較的多く、一層の高密度化が進む傾向にあるが、一方でコストについてもシビアな要求があるため、一気になんでも高集積化、1チップ化となるわけではないという。

ESS2002の展示の中で目をひいたのは、富士通(株)が展示していたデジタルカメラ用チップセット“Millennia2”と日立製作所の携帯電話向けアプリケーションプロセッサー『SH-Mobile』。

Millennia2(MB9118x)の評価用ボード。右にCCDとレンズ部分、左にモニター用液晶パネルが見える。Millennia2は0.18μmプロセスで製造する。CPUコアは66MHzで動作し、500万画素クラスの画像を毎秒3コマ処理できるという
Millennia2(MB9118x)の評価用ボード。右にCCDとレンズ部分、左にモニター用液晶パネルが見える。Millennia2は0.18μmプロセスで製造する。CPUコアは66MHzで動作し、500万画素クラスの画像を毎秒3コマ処理できるという

Millennia2はデジタルカメラ用のほぼすべてのシステムをハードウェアで持っているため起動が高速で「電源オフからでもすぐに立ち上がり、CCDが暖まれば即撮影できる」(富士通)という。Millennia2を搭載して“起動の速さ”を売りにするデジタルカメラは間もなく発売されるとしている。Millennia2はCF、スマートメディア、SDカード、メモリースティック、USBといったインターフェースをすべて持っているため、デジタルカメラ用以外にカードリーダー向けの引き合いもあるという。

日立製作所が展示していた、SH-Mobileを使用した動画メール対応携帯電話システム日立製作所が展示していた、SH-Mobileを使用した動画メール対応携帯電話システム
SH-Mobileのロードマップ
SH-Mobileのロードマップ
三菱電機が展示していた、Bluetooth搭載PDAのデモ。同社のプロセッサー『M32R』とBluetoothチップセットを使用しており、3台のPDAをマルチポイント接続して、画像(非同期データ)と音声(同期データ)を同時に転送するというデモを行なっていた
三菱電機が展示していた、Bluetooth搭載PDAのデモ。同社のプロセッサー『M32R』とBluetoothチップセットを使用しており、3台のPDAをマルチポイント接続して、画像(非同期データ)と音声(同期データ)を同時に転送するというデモを行なっていた

またSH-Mobileは日立のSHシリーズとして初の携帯電話向け製品で、パートナー各社との提携によって、MPEG-2、MP3、Javaといった各種のミドルウェアもあわせて提供できるという。現在のように「1つのプロセッサーで、通信からアプリケーションまですべて動かすのはそろそろ限界」(日立)としており、このSH-Mobileを搭載した携帯電話が間もなく登場するという。携帯電話におけるコミュニケーションプロセッサーとアプリケーションプロセッサーの2プロセッサー構成への動きが本格化しそうだ。

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