16日、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する電子ディスプレー(※1)の専門展示会“EDEX2002 電子ディスプレイ展”と半導体・システムLSIの専門展示会“ESS2002 システムLSIソリューションフェア”が、東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開幕した。会期は18日までの3日間で、入場料は無料。
※1 EDEX2002で取り上げる“電子ディスプレー”は、液晶ディスプレー、有機EL(OLED)ディスプレー、蛍光表示管などを指しているが、PDPは含まれていない。EDEX2002は今回で17回目、ESS2002は26回目の開催で、2001年から同時開催となっている。展示会のほかに、開発者向けカンファレンス“電子ディスプレイフォーラム”および“ESS2002 Conference”と、さらに半導体製造機器関連団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が主催する半導体製造機器・部品材料の展示会“SEMI FPD Expo 2002”も併催となっている。EDEX2002の出展社/団体は31で前回の35から減少したが、ESS2002は32と前回の21社から大きく増加た。JEITA/SEMIでは、昨年並みの3万5000名の来場者を見込んでいる(イベント別の来場者は非公表)。
3つのイベントを合わせて、昨年並みの3万5000人の来場者を見込む |
開催概要に関する記者会見で、EDEX2002 電子ディスプレイ展実行委員会の高木侯冶委員長は「ディスプレーを生かすにはモバイルやブロードバンドを実現する半導体・LSIが必要、半導体にはそれを生かすためのディスプレーが必要で、互いにそれなくしては成り立たない」とEDEX、ESS併催の意義を述べた。
EDEX2002 これまでで最大の17インチ有機ELディスプレーがお目見え
EDEX2002で目立ったのは、前回もそうだったが携帯電話用の小型ディスプレーパネルで、STN液晶、(アモルファス)TFT液晶、低温ポリシリコン液晶それぞれにおいて、透過型、半透過型、反射型のバリエーションを各社が展示していた。傾向としては国内の携帯電話の動向を映す形で、モノクロは姿を消し、カラー全盛。表示色数も6万色以上のものがほとんどとなった。ただ色数についてはパソコン向けのように1600万色までは必要とされないということで、最大でも26万色に落ち着きそう。今後は動画対応のための応答速度向上や、高解像度化が進むとみられる。
シャープが参考出品した2インチの“高輝度カラーアドバンストTFT液晶モジュール”従来の透過型液晶パネルと同じ透過率のまま明るさを2倍にし、さらに反射率を3倍にしたという |
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、2.2インチで240×320ドットという高精細の半透過型液晶パネル |
日本電気が参考出品した、2.1インチ低温ポリシリコンカラー液晶パネル(176×240ドット。26万色) |
日立が参考出品した2.2インチで240×320ドットという高精細液晶パネル |
パソコン向け液晶パネルは比較的出品が少なく感じられた。これは東芝松下ディスプレイテクノロジー(株)のような事業統合で出展社が減ったことや、韓国系企業でパソコン向けの展示を行なったのがサムスン電子(株)のみだったこと、日本IBM(株)や台湾のパソコン用液晶パネルメーカーが出展していないことなどが理由だろう。目新しい展示としては、これまで15インチでSXGA+(1400×1050ドット)、UXGA(1600×1200ドット)に留まっていたノートパソコン向けに16インチのものが登場した。ノートパソコンで16インチ(対角41cm)は大きすぎるのではとも思うが、説明員によると「ノートパソコンメーカーからの要望があった」(日立製作所)のだという。
セイコーエプソンが参考出品した、反射型の低温ポリシリコンTFT液晶パネル。320×320ドット26万色表示が可能。低温ポリシリコンではさらに高解像度を狙うとしている |
シャープが展示していたノートパソコン向け16インチSXGA(1280×1024ドット)液晶パネル。輝度は200cd、コントラストは400:1 |
日立の16.1インチUXGA(1600×1200ドット)液晶パネル |
セイコーエプソンが開発中という3.5インチ(240×320ドット)のPDA向け半透過型カラー液晶パネル |
シャープが参考出品していた3.7インチで480×640ドット(220ppi)の高精細VGAカラーアドバンストシステム液晶パネル |
携帯電話、パソコン向け以外では、各社がテレビ向け液晶パネルを出品した。シャープ(株)の『アクオス』が大型液晶テレビという市場を切り開いたのを見て、一気に参入の動きが激しくなったようだ。対するシャープは、アクオス用の液晶パネルの外販に踏み切っている。
三洋電機の液晶テレビ向け40インチワイドカラー液晶パネル |
東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示していた、テレビ向けの14インチ低温ポリシリコン液晶パネル(640×480ドット)。上下左右160度で色変化の少ない広視野角と、16msという高速な応答性、500cdという高輝度が特徴。20インチのものも展示していた |
日本電気が参考出品した21.3インチで2048×1536ドットという高解像度のTFTカラー液晶パネル。コントラストは300:1で、輝度は1平方メートルあたり200cd。同じ大きさ、解像度で、コントラストが700:1、輝度が700cdというモノクロTFT液晶パネルも展示していた |
さて、今回の展示の中で、最も人を集めていたのは東芝松下ディスプレイテクノロジーが出品した、17インチの有機ELワイドディスプレー(1280×768ピクセル)(※2)。報道陣はもちろん、出展各社や技術者がひっきりなしに訪れていた。17インチというサイズは昨年ソニー(株)がCEATECなどに出品した13インチ(800×600ピクセル)を上回り、これまでイベントなどで展示された有機ELディスプレーとしては最大クラス。輝度は100~300cd/m2でコントラストは200:1以上で、2、3年後に製品化したいとしている。動画表示性能は高く、さすがは有機ELディスプレーといったところだが、色は色温度の低い、かなり黄色っぽいもので、発色の良さでは同時に展示していた2.2インチ(176×220ピクセル)のものがはるかに優れていると感じた。
※2 カラー液晶ディスプレーでは1ドットが1ピクセルに対応するが、有機ELやPDPではRGBの3つのドット(蛍光体/発光セル)で1ピクセルを構成する。本稿では液晶パネルの解像度としてはドット、有機ELパネルの解像度としてピクセル表記とした。東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示して注目を集めた17インチのカラー有機ELワイドディスプレー。1280×768ピクセルと解像度も高い |
同じく東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示した2.2インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。他社の有機ELディスプレーと比較しても鮮やかな発色が印象的 |
東北パイオニアが参考出品した1.8インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELディスプレーパネル。2003年に製品化の予定 |
セイコーエプソンが参考出品した2.1インチのカラー有機ELディスプレーパネル。高分子有機EL素材を使用し、130ppiという高解像度を得たという |
有機ELディスプレー開発では最も進んでいるメーカーの1つである三洋電機(株)は、5.5インチや2.2インチサイズを展示していたが、これは昨年のCEATECなどで展示していたのと同じものということだった。ただ、2.2インチのものは秋以降の年内に製品化すると明言した。また、カーオーディオ向けのモノクロ有機ELパネルの商品化で先行している東北パイオニア(株)も1.8インチ(176×220ピクセル)のカラー有機ELパネルを展示し、2003年に製品化の予定としていた。
東北パイオニアが参考出品した有機ELパネルを使ったMDプレーヤー。実際にこうした商品が間もなく登場の見込みという |
ESS2002 デジタルカメラや携帯電話向けプロセッサーが展示
ESS2002では、各種のプロセッサーコアに周辺回路を加え、さらにメモリーやシステム(ROM)までを1チップにしたいわゆる“System on Chip(SoC)”製品の展示が比較的多く、一層の高密度化が進む傾向にあるが、一方でコストについてもシビアな要求があるため、一気になんでも高集積化、1チップ化となるわけではないという。
ESS2002の展示の中で目をひいたのは、富士通(株)が展示していたデジタルカメラ用チップセット“Millennia2”と日立製作所の携帯電話向けアプリケーションプロセッサー『SH-Mobile』。
Millennia2(MB9118x)の評価用ボード。右にCCDとレンズ部分、左にモニター用液晶パネルが見える。Millennia2は0.18μmプロセスで製造する。CPUコアは66MHzで動作し、500万画素クラスの画像を毎秒3コマ処理できるという |
Millennia2はデジタルカメラ用のほぼすべてのシステムをハードウェアで持っているため起動が高速で「電源オフからでもすぐに立ち上がり、CCDが暖まれば即撮影できる」(富士通)という。Millennia2を搭載して“起動の速さ”を売りにするデジタルカメラは間もなく発売されるとしている。Millennia2はCF、スマートメディア、SDカード、メモリースティック、USBといったインターフェースをすべて持っているため、デジタルカメラ用以外にカードリーダー向けの引き合いもあるという。
日立製作所が展示していた、SH-Mobileを使用した動画メール対応携帯電話システム |
SH-Mobileのロードマップ |
三菱電機が展示していた、Bluetooth搭載PDAのデモ。同社のプロセッサー『M32R』とBluetoothチップセットを使用しており、3台のPDAをマルチポイント接続して、画像(非同期データ)と音声(同期データ)を同時に転送するというデモを行なっていた |
またSH-Mobileは日立のSHシリーズとして初の携帯電話向け製品で、パートナー各社との提携によって、MPEG-2、MP3、Javaといった各種のミドルウェアもあわせて提供できるという。現在のように「1つのプロセッサーで、通信からアプリケーションまですべて動かすのはそろそろ限界」(日立)としており、このSH-Mobileを搭載した携帯電話が間もなく登場するという。携帯電話におけるコミュニケーションプロセッサーとアプリケーションプロセッサーの2プロセッサー構成への動きが本格化しそうだ。