VPNや電子署名の基盤ソフトなど、政府や企業向けのセキュリティーソフトを提供しているエントラストジャパン(株)は10日、都内で報道関係者を集め、同社の今後の製品・販売戦略に関する説明会を開催した。その中で同社は、製品の技術サポートやサービスを充実させるため、11日付けで東京に“製品技術開発センター”を開設すると発表した。
1月に同社代表取締役社長兼COOに就任したブラッド・オーモンド(Brad Almond)氏 |
説明会では、1月に代表取締役社長兼COOに就任したブラッド・オーモンド(Brad Almond)氏が説明を行なった。同氏はまず、「インターネットは、電子政府や電子商取引の基盤であり、インターネットの活用によって、コストの削減やビジネスの範囲を拡張することも可能だが、強固なセキュリティーが必要。インターネットは必ずしも安全ではない。セキュリティー意識の欠如は、財政上の損失や運用上の障害を招くだけでなく、企業の信頼とイメージを失うことにもつながる」と述べ、「日本はセキュリティーに関する意識や関心が高く、セキュリティー関連製品の市場も追い風にある。これを好機として、弊社は投資を行なった。具体的には、2001年10月に、米エントラストとセコム(株)を割当先とする第三者割り当てによって増資を行ない、総資本額を7億6200万円とした。また人材投資として、米エントラスト社から、私と3名の技術者が派遣されたほか、エントラストジャパンの従業員数を、22名から37名に増員した。そして、新たに製品技術開発センターを開設した」と述べた。
製品技術開発センターについて、同氏は「製品技術開発センターでは、日本における顧客の要望に応じたカスタマイズや製品開発を行ない、顧客サポート、特に技術サポートを強化する。また、同社製品を日本独自のプラットフォームに対応させていく。メンバーは、エントラストジャパンの技術者17名と、日本に派遣された米エントラストの技術者3名を合わせた計20名で構成される。カリフォルニア州サンタクララと、カナダのオタワ州にある製品技術開発センターと密接に連携し、活動していく」と述べた。
“ボーダーガード”を行なう一般的なセキュリティー製品と、“ボディーガード”を行なう同社製品の違い |
続いて、同社の製品戦略、および販売戦略についての説明が行なわれた。同氏は「市場にはファイアーウォールやアンチウイルスなど、インターネット接続の境界を監視する“ボーダーガード”となる製品が多いが、弊社では、企業や政府のデータやアプリケーションなどを保護する“ボディーガード”となる製品を提供している」と語り、日本におけるeビジネスや電子政府に必要なセキュリティーソフトの利用方法として、VPNやeフォーム(電子帳票)、電子署名やPKI(公開鍵基盤)、PMI(権限管理基盤)などを紹介した。また、今後の成長を見込んでいる分野として、PKIとPMIの連携による、セキュアーなウェブポータルについても紹介した。
VPN市場の拡大 |
VPNについて同氏は「VPNは、通信コストの安さなどから利用が拡大している。VPN関連製品の市場も、2002年現在の464億円市場から、2003年には800億円市場に、さらに2006年には2000億円市場に成長すると見込まれている。弊社は、現在企業で利用されているVPNを、さらに価値のあるものにする製品を提供していく」と述べた。eフォームについては「日本では、電子署名法が成立したことなどにより、eフォームの利用が拡大しつつある。弊社では今後、日本のeフォームプロバイダーとのパートナーシップにより、弊社の技術や製品を提供していく」と語った。また同氏は、eフォームの利便性についてのデモンストレーションを行ない、「紙ベースの帳票業務などを、eフォームによってデジタル化することで、業務効率の向上や、コストの削減を行なえる。私はお金がないので、経費などが迅速に振り込まれるのは大変良いことだと思っている。米エントラストでも、帳票業務などにかかる人権コストを、従来の6分の1まで削減できた」と述べた。
eフォームの利便性についてのデモンストレーション |
そしてPKIとPMIについて、同氏は「PKIはユーザーの認証と暗号化を行ない、PMIはユーザーのアクセス権限を管理する。これらを組み合わせることで、セキュアーなウェブポータルサイトを構築できる。これによって、さらに利用方法を拡大できる。弊社は開発センターを通じて、製品のカスタマイズなどを行ない、弊社PMI製品の収益を拡大していく」と述べた。
最後に同氏は、同社の経営戦略について「増資を最大限に活かし、日本市場に特化した技術の向上と、サポートの充実に努める。また我々は、リセラーやビジネスパートナーこそが日本での成功の最も重要な鍵であると見ており、今後もパートナーを通じて製品を提供していく。エントラストジャパンは、企業や政府がインターネットを最大限活用し、今後もそのポテンシャルを高めるお手伝いをしていきたい」と締めくくった。