サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)のシステムベンダーであるマニュジスティックス・ジャパン(株)は5日、都内に報道関係者を集め、米マニュジスティックス社の2002年度(2001年3月~2002年2月)の業績および、2002年3月をスタートとする“中期経営計画(3ヵ年経営計画)”について発表した。併せて、同社の次期SCMソフトウェア製品『Manugistics 7』についても、その概要を発表した。
米マニュジスティックス社社長兼マニュジスティックス・ジャパン代表取締役社長のリチャード・F・バーグマン(Richard F. Bergmann)氏 |
発表会では、まず米マニュジスティックス社長兼マニュジスティックス・ジャパン代表取締役社長のリチャード・F・バーグマン(Richard F. Bergmann)氏が、米マニュジスティックスの2002年度の業績および、2003年度の事業計画について説明した。同氏は、「2002年度は、9月にニューヨークのテロ事件もあり、市場が全体的に冷え込んだ。しかし、第4四半期のソフトウェアライセンスの売り上げが、第3四半期の70%増の3800万ドル(約50億円)となり、結果として2002年度の総売上は、約3億1000万ドル(約407億円)で前年比16%増と、過去最高のものになった」と述べ、「この成功の要因は、多種多様な業種の企業に対して、弊社の提唱する企業利益の最大化を図る戦略“EPO(Enterprise Profit Optimization)”や、価格・収益最適化を図る戦略“PRO(Pricing and Revenue Optimization)”に基づくソフトウェアやサービスの提供を行なったことにある。ある顧客は、ターゲットプライシングによって市場に適した価格設定を行ない、ある顧客はSCMによって業務を効率化するといった具合に、それぞれの多様な要求に対応し、多くのお客様に受け入れていただいた」と語った。
2003年度の成長予測。緑色がソフトウェア事業、黄色がサービス事業、青がサポート事業による売り上げを表わしている |
また同氏は、マニュジスティックス・ジャパンの2003年度(2002年3月~2003年2月)の事業計画について「控えめに、前年比15%増の成長を見込んでいる。内訳は、ソフトウェアライセンスとコンサルティングサービス、およびカスタマーサポートの3つだが、3つとも成長すると見ている。競合他社との差別化を図り、財務目標や収益目標を達成していきたい」と述べ、「組織のグローバル化を図り、世界的に事業を拡大してゆく。すでにシンガポールにオフィスを開設しており、大阪にも4月1日付けでオフィスを開設した。また5月はマレーシア、6月には上海に開設する予定。アジア各地にオフィスを開設することによって、日本の多国籍企業に対して世界的なサポートを行なえるようになる。日本市場は弊社にとって極めて大切なもの。成長と拡大を図っていきたい」と語った。
マニュジスティックス・ジャパン代表取締役副社長の稲井秀次氏 |
続いて、マニュジスティックス・ジャパン代表取締役副社長の稲井秀次氏が、現在の市場の概況と、同社の取り組みについて説明した。同氏は「製造業の生産量が、この2月に最低を記録した。モノ作りでは多くの利益を得られず、製品のライフサイクルが短命になった今、いかに生産と調達、流通のスピードを上げて、素早く社会変化に対応していけるかが重要。その短いライフサイクルで、いかに利益を得るかがEPOの本質。弊社のEPOソリューションは、迅速な導入と確実な成果により、お客様からの高い評価をいただいている」
製造による利益創出は困難になり、サポートサービスや設計・開発に付加価値が推移している |
「次なる課題は、真にEnd to Endに対応すること。我々から見た顧客だけでなく、顧客が行なうアフターサービスや、取引先であるパートナーやサプライヤーも包括し、従来より複雑なSCMのニーズに対応していく。すでにこの取り組みは始まっている。重要なサービス・サポート・チェーン業務を支援する製品“サービス・パーツ・マネジメント(SPM) ソリューション”を提供している。日本市場特有のニーズに対応するためのコンフィギュレーション・センターも開設した」と語った。
3ヵ年経営計画における成長予想 |
また、3ヵ年経営計画についての具体的な目標と計画について発表した。同社は、3ヵ年計画において、以下のような目標を立てている。
- 日本におけるEPOの啓蒙、普及
- 全世界の総売上に対する貢献
- 毎年70%の売り上げ増の達成
- 3ヵ年で事業規模を5倍に成長
- 日本市場特有のニーズへの積極的な対応
- 顧客満足度No.1の達成
そして同社は、2003年度を3ヵ年経営計画の第1フェーズである“マニュジスティックス・ジャパン ブレイクアウト”と位置づけ、日本市場における積極的な活動を展開していくという。稲井氏はこれについて「3ヵ年経営計画のために、別に新しいことをするわけではない。リソースも限られている。キーワードは“選択と集中”。これまでしてきたことを、より深く確実に実行していく。具体的なトピックスは、大阪オフィスとコンフィギュレーション・センターの開設、“enVISION2002 TOKYO”の開催と、“Manugistics 7”のリリース」と述べた。
コンフィギュレーション・センターは、日本市場における同社ソフトウェア製品の導入時のコンサルティングや、業務テンプレートの構築、実行環境の整備などを行なう組織。当初は5名の社員を配備する。稲井氏は、同センターの開設の理由について「米国と日本とでは、ビジネスモデルやビジネススタイル、ソフトのルック&フィールもまるで違っている。それぞれの顧客によって、必要とするコンポーネントやアルゴリズムは異なっている。また、カンパニーアイデンティティーも含めて、製品をインテグレーションしたり、イレギュラーに対応する必要がある。これにより、顧客にとって最適なソリューションを、迅速に提供することを目指す」と述べた。
enVISION2002 TOKYOの概要 |
enVISION 2002 TOKYOは、1998年の第1回以来、5回目となるプライベートコンファレンス。6月11、12日の2日間、東京都千代田区の都市センターホテルで開催を予定している。今回のテーマは“新たな時代――企業利益最大化への挑戦~『確実に動く』、『短期間で使える』、『利益を上げる』ソリューション”。同社では、このほかにも積極的なプロモーションを行なっていくとしている。稲井氏は「日本企業が、世界レベルで戦えるようにEPOソリューションを提供し、グローバル社会で勝てるような支援を行なっていく」と述べた。
同社バイスプレジデントのディビット G.フレンツェル(David G.Frentzel)氏 |
Manugistics 7については、同社バイスプレジデントのディビット G.フレンツェル(David G.Frentzel)氏が説明を行なった。
Manugistics 7の構成図 |
Manugistics 7は、原材料の供給から製品の販売に至る過程において、意志決定の支援を行なうソフトウェア製品で、“Manugistics”シリーズの最新バージョン。今回発表したバージョンより、J2EEベースのウェブネイティブ・アーキテクチャーを採用している。これに伴い、同社が持つ20以上のSCM/PRO/SRM(※1)/SPM/EPO製品は、すべてウェブネイティブに統合され、共通のユーザーインターフェースとポータルサイトから、操作とアクセスが可能になるという。特徴的として、最適化エンジンを用いることで、利益を最大化するような価格を計算する機能を備えるという。また、同じ画面内で複数のアルゴリズムを用い、商品や流通の特性から、どのアルゴリズムを対応させれば効果があるかについても分析できるとしている。また、顧客のニーズに合わせた、コンポーネント群のセットも用意しているという。
※1 SRM (Supplier Relationship Management)委託工場や原材料提供側などサプライヤーとの協力によって、物資調達や開発などにかかるトータルコストの削減を図るビジネス戦略Manugistics 7のポータルサイト画面の一例(画像は開発中のもの) |
同じ画面内で、複数のアルゴリズムを用いて価格の計算などを行なえるとしている |
同製品について、稲井氏は「幅広いコンフィギュレーションと、高い拡張性を通じて、安いコストで高い価値を生み出せる。色々な機能を、顧客に提供したいと考えている」と述べた。Manugistics 7は9月ごろに米国で出荷を開始する予定。年内には、日本語版も提供するとしている。