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秋葉原がパブリックアートスペースに変貌――2年ぶりに“秋葉原TV3”開催

2002年03月12日 23時48分更新

文● 千葉英寿

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●秋葉原の街並みにアートがとけ込む

“秋葉原TV”が帰ってきた。

3月9日より秋葉原電気街全域で開催されている“秋葉原TV3”(正式名称:第3回国際共同美術展シティビデオインスタレーション)は、一言で言えば現代美術の展覧会だが、その舞台装置が他の展覧会とは大きく異なる。秋葉原電気街65店鋪にならぶ無数のテレビやパソコンのモニターに、世界10ヵ国26作家の手による最新ビデオアート作品が流されるという、他に類を見ない試みだ。開催期間は9日から24日まで。会場は秋葉原電気街電気店頭およびインフォメーションセンター/ビデオサロンを兼ねるコマンドN(街づくりハウス“アキバ”内)。

石丸電気本店のホームシアターコーナー迫力ある大画面で鑑賞することもできる。石丸電気本店のホームシアターコーナーでは、長編作品を上映している。作品は『Subscription』/マーク・ロバート・ルイス

ビデオに収められた26作家の作品は編集され、オーサリングして1枚のDVDとしてまとめてある。そして、そのDVDディスクを電気店店頭にあるテレビモニターがつながったDVDプレーヤーやパソコンに搭載されたDVDプレーヤーにセットし、これを使って作品映像を流す、という仕組みだ。結果、作品が表現される場所は、当然、さまざまなテレビ番組やデモ映像の映し出されるモニターやポスターやPOPなどで文字や色があふれかえる雑多な空間である電気店の店頭となっている。

Laoxザ・デジタル館電気店頭ならではの風景であるマルチ画面でも作品上映されている。Laoxザ・デジタル館。作品は『マーケット』/ニコラ・フロック

そうした秋葉原的日常の中、例えば、電気店外壁のプラズマビジョンに突如としてアートが出現したり、小さな液晶画面に忍び込むように現われたりするのが、秋葉原TVの驚きであり、狙いでもある。

プロントリナックスカフェ
無線LANのHotSpotでもあるプロントリナックスカフェの店頭でも作品上映されていた。作品は『smtpe/self 2002』/高嶺格

各作品の内容は多岐にわたるものではあるが、1作品約1分というわずかな時間ながら、作家の世界を作品内と作品を取り囲む空間をも巻き込む鮮烈な作品ばかりだ。作品の特徴として見られる傾向は、第1回より秋葉原の街や秋葉原的なものをモチーフとした作品が多く見かけられたが、今回もそうした作品が見受けられる。

臼井敬太郎氏(日本)の『AC/DC』は、ネオンサイン溢れる秋葉原の街並みと新幹線を素材により未来チックな秋葉原を描いた作品だ。コイケホタカ氏(日本)の長編作品『キポンヌ』でも秋葉原の街がモチーフとなっている。

●アートにも押し寄せるCG化の波

前回より増えてきている作品の傾向はCG=コンピューターグラフィックスによる作品の多さだろう。

本展覧会を主催するコマンドNの代表であり、世界的に著名な美術家でもある中村政人氏の出品作品『QSC+mV』もCGで制作されている。『QSC+mV』は中村氏(日本)の代表作にも使われたマクドナルド社のロゴ“ゴールデンアーチ”をモチーフとしたもので、高さ20m、直径150mの建造物をCGで描いたものだ。他にピーター・ヘネシー氏(オーストラリア)の『Autokonstructor』、ジム・オーヴェルメン氏(USA)の『沈むローラーコースター(鉄骨)』、コイケホタカ氏『ワイヤーワイヤー』などが出品されている。

『ワイヤーワイヤー』ラオックスの外壁に設置されているスーパーライザの大画面では、朝9時から夜9時までの間に5分間ずつ12回流れている。作品は『ワイヤーワイヤー』/コイケホタカ

また、第1回より登場し、秋葉原TVのマスコットキャラクター的存在となっているデジタル犬(ブタ?)の“ジャック”が登場する√R(日本)の『race』も出品されている。√Rは櫻井たかあき氏、鈴木真吾氏、戸澤徹氏の3人によるユニット。

『race』
大型のプラズマディスプレイは3面。作品は『race』/√R

デジタル表現ならではの作品として、エキソニモ(日本)の『Desktop Travel 2002』はスリーンセーバーを作品としたもの。エキソニモもまた千房けん輔氏、赤岩やえ氏によるネット・アート・ユニットだ。

『Desktop Travel 2002』
ユニークなスクリーンセーバー作品も。作品は『Desktop Travel 2002』/エキソニモ

ASCII 24では、1999年の1回目、そして2回目の2000年とスタートから秋葉原TVをリポートしてきたが、開催から2年ぶりに帰ってきた3回目を数える“秋葉原TV3”をもって一応の一区切りとなる。そして、今後の展開を思わせるかのように、今回はデジタル系アートの今後のスタイルを思わせるストリーミング配信による展示を行なっている。

過去2回の作品も上映されていた
過去2回の作品も上映されていた

春に向け暖かさの増す中、秋葉原でのパーツ探しの合間にちょっと気にとめてモニターを見るもよし、自宅の常時接続環境でじっくりアートにふれるもよし。気軽にアートに出会うには絶好の機会と言えるだろう。

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