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総務省とTAO、“第6回 情報通信ベンチャー交流勉強会”を開催

2002年02月28日 15時52分更新

文● 編集部 田口敏之

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総務省は27日、情報通信分野のベンチャー企業の育成と支援を目的とする、第6回“情報通信ベンチャー交流勉強会”を、同省の認可法人である通信・放送機構(TAO)との共催により開催した。

第6回“情報通信ベンチャー交流勉強会”
第6回“情報通信ベンチャー交流勉強会”

同勉強会は、1999年6月の第1回以来、年に約2回のペースで開催されており、今回で6回目となる。これまでは、“ストックオプション”や“ビジネスモデル特許”など、時勢に沿ったテーマでの講演会と、ベンチャー企業同士の交流会を行なうという内容となっていた。

今回よりTAOとの共催になり、同機構のベンチャー支援サイト“情報通信ベンチャー支援センター”と連携することになった。同サイトでベンチャー企業からの相談に答えている各分野の専門家が参加し、ベンチャー企業が直面する問題の解決についてゼミ形式で講義する“ケーススタディ”や、マンツーマンで質問や相談に答える“経営相談会”も、講演に続けて行なわれた。なお、同勉強会で行なわれた講演やゼミの模様は、3月上旬から“情報通信ベンチャー支援センター”上においてストリーミング配信する予定。

総務省情報通信政策局情報通信政策課統括補佐の粂井利久氏
総務省情報通信政策局情報通信政策課統括補佐の粂井利久氏

総務省情報通信政策局情報通信政策課、統括補佐の粂井利久氏は、今回の勉強会について「今回からTAOとの共催となり、講演会に加えて、ゼミ形式の“ケーススタディ”と、マンツーマンの相談所”経営相談会”を加え、より強力にベンチャー企業の支援を行なってゆく。回数の上では第6回だが、実質は第1回といえる。総務省とTAOとしては、勉強会や助成金の交付といった“リアルな場”と、ベンチャー支援サイトという“バーチャルな場”を好循環・好連携させていきたいと考えている」と語った。

(株)電通の電通総研研究部3部副主任研究員の美和晃氏
(株)電通の電通総研研究部3部副主任研究員の美和晃氏

今回の講演のテーマは“モバイルビジネスの展望”で、まず(株)電通の電通総研研究部3部副主任研究員の美和晃氏が、“生活者視点のユビキタスネットワークへのアプローチ”と題して講演を行なった。同氏によれば、サービスの基本理念は、時間と空間の制約から開放された活動領域を与えることであるという。たとえば出版流通や通信網、また鉄道や航空のサービスによって、ユーザーは常に活動領域を広げてきている。しかし、通信網の発達によって人と人との会合が減ったかと言えばそうではなく、コミュニケーションが効率化されたことによって新たな会合の機会が生まれているし、また移動手段は発達したが、その待ち時間という新たな制約も生まれている。ユビキタス時代の到来によって、いつでも、どこでも、ユーザーに対してコンテンツやサービスを提供できるようになる。その時、たとえば居酒屋やカフェなどといった会合の場に、どのような付加価値を付けていくか。また待ち時間に提供するコンテンツをいかに強化していくかが問題であるという。同氏は今後、ユーザーを取り巻く状況や生活を踏まえたうえで、ユーザーと周囲の環境との接点に着目したアプライアンスの開発が、企業の成功への鍵になると提言した。

(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのMM企画部長、新美英樹氏
(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのMM企画部長、新美英樹氏

続いて、“モバイルマルチメディアへの取り組みについて”と題して、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのMM企画部部長の新美英樹氏が、同社の今後の戦略や展望などについて説明した。同氏は、モバイルによるインターネットのニーズは非常に高いが、モバイルでインターネット接続が目新しかった時代は過去であり、モバイルインターネットで、高速なコンテンツをストレスなく利用できるようにならなければならないと語った。同社では、インターネット接続サービス“mopera”などによってプラットフォームはすでに構築済みで、今後さらに著作権の保護や、セキュリティーなどの強化が必要だという。また、次世代携帯電話サービスの開始によって、“人”対“人”のコミュニケーションだけでなく、GPSや音楽配信といった“機械”対“人”のコミュニケーション、また各種機器の遠隔操作や自動制御といった“機械”対“機械”のコミュニケーションの分野も視野に入れつつ、モバイルサービス事業に取り組むとしている。

(株)アクセスの取締役副社長兼CTO鎌田富久氏
(株)アクセス取締役副社長兼CTOの鎌田富久氏

そして、(株)アクセスの取締役副社長兼CTOの鎌田富久氏が、“ユビキタスネットが引き起こす情報革命――ACCESSのネット家電戦略――”と題して、現在起きているコミュニケーションの革命の実態と、今後の展望について語った。同氏は、活版印刷、電話、テレビと、これまでの情報通信における革命的なトピックスを挙げ、その都度、世界の産業は大きな変革を遂げていると説明した。そしてインターネットおよびユビキタスネットワークによる第4の革命によって、消費がネットを中心にスライドしていくことや、商品などがパーソナライズ化されること。また、ネットコミュニティーが拡大し、ネットは“便利なツール”から“必要不可欠な要素”となってゆくという。同社は、ユビキタス社会の到来を期して、家電をはじめ、あらゆる機器をネットに接続するためのプラットフォームや、次世代携帯ブラウザー『NetFront v.30 Wireless Profile』などを開発したしている。また同氏は、モバイルで地上波デジタル放送と高速無線インターネットを融合させる『MobileDTV』構想も紹介した。しかし、ネット家電はあくまでも単機能的なものであり、パソコンのように汎用的な進化をとげず、またサービスやコンテンツをバンドルできるため、ビジネスモデルを作りやすいという。そして今後は、精神的な豊かや心のゆとり、“いやし系”などの機能が求められることなどを語った。

“ケーススタディ”の1会場
“ケーススタディ”の1会場

休憩を挟んで行なわれた、ゼミ形式の“ケーススタディ”では、経営コンサルタントの経塚悟氏ほか2人による“独立開業のためのビジネスプラン作成戦略”、社会保険労務士の松崎潤氏による“労務管理と経営リスク”、弁理士の木村満氏ほか1人による“知的財産権の基礎”、(株)ジャフコ取締役の縣久二氏ほか1人による“ベンチャーキャピタルからの資金調達”という、4つの講義がそれぞれ行なわれた。

経営相談会
経営相談会

今回の勉強会には約300人が集まり、熱心に聴き入る姿が見受けられた。粂井氏は、今後の勉強会について「今後も勉強会を通じて、ベンチャー企業同士の出会いの場を提供し、好循環を生み出していきたい。これからの予定については未定だが、これまでのように年に2回だけでなく、年に3~4回は開催していきたい。また各地方都市でも、同様に勉強会を開催したい」と語った。

交流会
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