日本でも定着してきた感のあるマルチメディア百科事典「Microsoft Encarta」(エンカルタ)が、毎年恒例のバージョンアップを行った。2月22日から発売される「Encarta 2002」では、従来の特徴を強化するいくつかの新機能を搭載している。
学校向けに重心を移しつつ
マルチメディア/ネット機能を強化
米国では1993年以来すでに10年近く版が重ねられ、すでにマルチメディア百科事典のスタンダード的な地位を築いているEncartaだが、1997年から発売されるようになった日本語版は、ユーザーから評価は得ているものの、学校や一般家庭にまで十分浸透したとは言えないのが現状だ。
その理由のひとつは、Encartaはその内容を各国独自に編集しているため、英語圏ほど市場規模も大きくない日本では制作費のコストパフォーマンスが悪く、価格が高くなってしまうこと。もうひとつは、伝統を誇るライバルの存在だ。米国では(同様のライバルだったBritanicaに対して)有効だった販売戦略も、条件の違う日本ではなかなか効果が出せないようだ。
単純な文字情報では、かつて日本で圧倒的シェアを占めていた「世界大百科事典」の集積情報に対抗するのは時間もコストもかかり過ぎる。それだけに、Encartaの方針は当初から項目数で勝負せず、マルチメディア的機能を重視してきた経緯がある。
図1 3Dバーチャルツアー。よくあるVRだが、Web用に比べモデルは緻密なようで、HDD上から読み込む場合でも10~30秒かかる。埋め込まれたホットスポットから、百科事典の項目本文などを呼び出せる。 |
図2 「オンラインメディア」経由でアクセスしたwindowsmedia.comのページ。各都市の項目にも、MSNBCのその時点での気象情報や関連ラジオへのリンクが表示される。オンラインメディアを積極的に取り込もうという姿勢は評価できる。 |
図3 資料BOX。項目本文や写真・図版類をボタン一発で取り込みできる。さらに、必要な箇所を抜粋したり、注釈を書き加えるなど編集を行い、資料やレポートも作成できる。 |
なお、Encarta 2002のラインナップでは、地図ソフトだけ単体で提供していた「百科地球儀」を廃止し、ベーシックな「百科事典」(CD-ROM版)と、百科事典+百科地球儀のセット「総合大百科」(CD-ROM版とDVD-ROM版)の2系統とすっきりした形になった。総合大百科には「Microsoft Bookshelf 3.0」も同梱される。
ここ2年ほど、児童、生徒の学習支援ツールとしての方向性を打ち出してきたEncartaだが、それでも一番安い「百科事典」が1万5800円という実売価格で(「アカデミックオープンライセンス」などの割引制度は存在する)、学校への導入拡大もなかなか一筋縄ではいかないだろう。今回のEncarta 2002では、全国の教育用ソフトウェアライブラリセンターへ1本無償で寄贈するプログラムを実施するというが、個々の子供たちが自在に使える環境が構築できないと、この種のツールの利用価値は上がらない。
対象製品 | Microsoft Encarta 総合大百科 2002/2002 DVD-ROM | Microsoft Encarta 百科事典 2002 |
---|---|---|
対象者 |
|
|
キャッシュバック額 | 5000円 | 3000円 |
製品名 | Microsoft Encarta 総合大百科 2002/2002 DVD-ROM アカデミックパック |
---|---|
購入可能対象 |
|
推定小売価格 | 1万7800円 |
その一方で、「2万円もする事典を毎年買い換えることなんてできない」と、筆者のように古い年度版のEncartaを使い続けている一般ユーザーも多数存在するハズ(そのため、Microsoft Officeプリインストールのメーカー製PCに含まれる「Bookshelf Basic」のユーザーも対象となるキャッシュバックキャンペーンや、学校関係者向けのアカデミックパックが用意されている、表参照)。Encartaが日本でも電子百科事典の“顔”となるための鍵は、やはり全国の学校を結ぶオンライン環境への接続サービスをどう展開していくか? または筆者のように予算に限りがあるが百科事典的情報を求めるユーザーに、どのような継続的情報サービスを提供するか? という点での新しい戦略ではないだろうか。
Microsoft Encarta 総合大百科 2002の主なスペック | |
対応OS | Windows 98/Me/2000/XP |
---|---|
CPU | Pentium-233MHz以上(Pentium II-300MHz以上を推奨) |
HDD | 470MB以上(辞典データをHDDにコピーするには1.37GB以上必要) |