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生活と中古ソフト問題

2002年02月17日 20時15分更新

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※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 ゲーム業界、特にその中でも流通・販売に携わるものにとって、避けては通れない問題がある。そう、言わずと知れた「中古ゲームソフト問題」である。もちろん、ゲーム会社の営業であった僕も、この問題には非常に関心がある…かも。

 ここで念のため、この“問題”について簡単に説明しておくことにしよう。「中古ゲームソフト問題」とは、ゲーム販売店側とゲームメーカー側の、以下のような意見の対立により生じている問題であると言える。

【ゲーム販売店店長(48歳 妻子あり)】
「ここんとこ、新品ソフトは仕入値が高いねぇ。これじゃなかなか儲からんよ…おろろ? それに較べて中古ソフトは随分安く買い取れるもんだねぇ!! 買い取って売って、買い取って売って、買って買って、売って売って…ほーこりゃたまらん!!」

【ゲームメーカー営業(32歳 バツイチ)】
「どこもかしこも中古ソフト、中古ソフト…こいつの店なんてわしの会社のソフト、新品は1本も置いてないやないかぁ!! 中古ソフトはいくら売れようが、わしん所には一銭も入ってこんのじゃ! やめいやめい! 中古ソフト販売はやめい! もしくは金払わんかい、ボケぇ!!」

 大体こんな感じです(?)。本当はもっと複雑で、全ての販売店が一様に中古肯定派で、メーカーがみんな中古否定派というわけではないんだけど…。

 そして、かくいう僕も、別に中古ソフト反対派ではなかったりする。それに僕のいた会社自体、中古ソフト禁止を掲げている「CE○A」という団体に加盟してはいたものの、実態としてはそれほど中古ソフトを嫌がってはいたわけではなかった。なぜなら、ユーザーさん達はこんな行動をとることもあるからだ。

【一般ゲームユーザー(11歳 童貞)】
「僕の誕生日にじいちゃんが買ってくれたこのソフトも、お年玉を貯めてやっと買ったあのソフトも、みんな飽きちゃったよ! だから新しいソフトが欲しいなぁ。でもお金無いし…あ、そうだ! このソフト全部売って、そのお金で新品のゲームソフトを買えば良いんだ! 僕って天才かも?」

 そう、このようにして古いソフトが売られ、新品のソフトが買われていくことも事実であり、「中古を売って、新品を買う」という、ある種の無限連鎖状態ともいうべき現象が、メーカーに利益をもたらしている可能性も捨てきれないのだ。このため、ユーザーの立場に立って考えた場合、各メーカーも頭ごなしに「中古ソフトはダメ!」とは言いにくかったりする。



中古ソフトにはたいてい、それが中古ソフトだと示すシールが貼られているが、だからといってゲーム内容が劣化しているわけではない。※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 とはいえ、ゲームはどんなに古くても劣化することのないデジタル著作物。古本と同じようにはいかない(最近は古本屋も問題になってるらしいけど)。「中古ソフトのせいで商品が売れず経営を圧迫されて、果てには潰れてしまった!」なんていう主張をするゲーム会社経営者もいそうだし。

 おそらくこの問題の妥協点としては、販売店が中古販売を行う際に、メーカーに対して一定の料金を支払う、という所なのかもしれない。実際、そういった提案もこれまでにされているのは、僕がここで説明しなくてもみなさん知っているだろう。しかしここでまた、新たな問題が生じてくる。まずは、メーカーの主張する“取り分”が高すぎること。「俺達が寝ないで作ったゲームで儲けるんだったら、こんぐらい払えや!」って感じだ。そしてもう1つ、中古ソフトは基本的にユーザーから買いとってユーザーに売るシステムのため、間にメーカーが絡まず、販売数の管理・把握が非常に難しいこと。POSシステム(商品在庫をデータベースで一元管理しちゃうすごい(?)システム)を導入しているような大手ゲームショップチェーンとかならまだしも、50過ぎのおじさんが1人でやっているような個人経営店では、どうやってもメーカーごとの買取・販売本数の管理なんて無理そうだ。第一、いくらでもごまかしがききそうだし…。

 そんなこんなで、ここ数年、何度も裁判が開かれているけれど、未だに完全決着がついていないのがこの「中古ゲームソフト問題」なのだ。僕としては1日も早い決着と、ゲーム業界のより一層の繁栄を、願ってやまない今日この頃です。できれば当事者ではないカタチで。

 とまあ、今回はちょっとマジメなことを書いてきたけど、僕が中古ソフトを否定しないのにはほかにもわけがある。それは僕自身、中古ソフトを売ったことがある、いや、売らなければならなかったことがあるからだ。なぜなら僕にはお金がなかったから…。お金がなかった理由については聞かないでほしい。

 しかしここで注意しなくてはいけないことがある。僕の場合は先ほどの11歳の少年の例とは根本的に違う部分があるのだ。そう、僕が古いソフトを売って得るお金は、新しいゲームソフトに変わるのではなく、生活費に変わる。僕はソフト3本を売って、米とカップラーメンを買うのである。この場合、先の例で述べた「中古を売って、新品を買う」連鎖状態はいっさい発生しない。つまりメーカーには何の利益ももたらさないわけで、ゲームメーカーの営業マンとしては最も慎むべき行為と言えるだろう。

 確かあれは、僕がサラリーマンになって最初の冬を迎えた頃…(回想モードへ)



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