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米AMDのヘクター・ルイズ社長兼COOが来日記者会見──「革新こそが勝利の鍵」

2002年02月13日 23時50分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本AMD(株)は13日、都内のホテルで米AMD社ヘクター・ルイズ(Hector de J.Ruiz)社長兼最高執行責任者(COO)の来日記者会見を開催した。ルイズ社長は“革新(Innovation)”をキーワードに、6日に発表した米アルケミーセミコンダクター社の買収や1日に発表した台湾UMCとの提携などについて語った。

米AMD社のヘクター・ルイズ社長兼COO
米AMD社のヘクター・ルイズ社長兼COO

ルイズ社長は2000年1月に米AMDに入社し、それまで空席だった社長職についた。米テキサス・インスツルメンツ社、米モトローラ社と半導体畑を歩んできた人物で、AMD入社直前までは米モトローラの半導体製品部門の社長を務めていた。今年4月にジェリー・サンダース(Jerry Sanders)会長兼CEOから、CEO職を譲り受けることになっている。記者会見は2001年6月の『Athlon MP』発表会以来のことになる。

ルイズ社長は「AMDの基本戦略となる3つの柱は、コンピューティング技術、ストレージ技術、コネクティビティー技術」とし、そのうちコンピューティング分野とコネクティビティーについて説明した。

「AMDは30年間に渡ってマーケットリーダーシップを目指して来たわけだが、それはある程度の成功を収めることができた。リーダーシップを取るためには革新が必要だが、特に最近成し遂げたさまざまな革新についてはたいへん誇りを持っている。IT経済の中では、革新こそがこれからのポイントとなる」

「また、カスタマーフォーカスということを心がけてきたが、こここそがAMDが競合他社と差別化できる部分だ。革新のための革新は意味はない。真の意味で顧客のニーズにあった革新を遂げていくことが必要で“お客様の成功が我々にとっても成功だ”ということを信じてやってきた。将来のリーダーシップを勝ち取っていくためにもこのことが重要だと考えている」

ここでルイズ社長は過去25年間の半導体産業全体の売り上げ金額の平均成長率が平均13.8%に対して、AMDは21.2%と上回っていることや、パソコン用プロセッサーにおけるシェアが1996年以降伸びていることなど、同社の戦略がうまく進んでいることを示した。また、プロセッサーのダイサイズにおけるAMDの革新技術による優位性をアピールした

1975年から2001年までの半導体産業とAMDの売り上げ推移グラフ
1975年から2001年までの半導体産業とAMDの売り上げ推移グラフ
パソコン用プロセッサー市場における、AMDのシェア
パソコン用プロセッサー市場における、AMDのシェア

「2001年、AMDはこのパソコン用プロセッサー市場シェアを4ポイント以上伸ばして20%強としたが、これは世界のパソコン市場が前年比で6%もダウンするという厳しい状況のなかで達成したことがポイントだ」

「これまでの成功は革新を行なってきたことが理由ではないかと考えている。我々は競合他社に対して、生産や投資を増やすだけでは競争に勝つことはできない。そういう意味で革新が大きなポイントとなる。1つの事例としてはコスト効率の高いシリコンの利用ということで、これはCPUのダイサイズとして現れてきている」

ルイズ社長が“革新の1つの指標”として挙げた、米インテルと米AMDの米国特許取得数グラフ。Athlonを投入した1999年にAMDが取得数で初めて上回り、2001年まで続いている
ルイズ社長が“革新の1つの指標”として挙げた、米インテルと米AMDの米国特許取得数グラフ。Athlonを投入した1999年にAMDが取得数で初めて上回り、2001年まで続いている

「Willamette(最初のPentium 4)とPalomino(Athlon XP)を比較した場合、同じ0.18μmプロセスでありながらPalominoはWillametteの60%のダイサイズしかない。0.13μmプロセスとなるNorthwood(Pentium 4)とThoroughbred(次期Athlon)になると、アドバンテージは広がり、ThoroughbredはNorthwoodの55%のサイズとなる。Thoroughbredはこの四半期に出荷を開始する。0.13μmプロセスへの移行は今年中に終了する予定で、2003年にはさらに次世代の0.09μmプロセスに移行するが、そのときにもまたアドバンテージが広がると考えている」

AMDとインテルのデスクトップ向けプロセッサーのダイサイズ比較
AMDとインテルのデスクトップ向けプロセッサーのダイサイズ比較。同じ製造プロセスであれば、AMDのほうが小さなダイとなっているとの主張だ
200mmウエハーから取れるプロセッサーチップ数の比較
200mmウエハーから取れるプロセッサーチップ数の比較

ルイズ社長は2002年の事業目標として、“パソコン用プロセッサーにおける性能リーダーシップの維持”“ノート向けプロセッサーの拡充”“サーバー/ワークステーション向けプロセッサーの拡充”“パーソナル・コネクティビティーに向けた新しい計画”を挙げた。特にAMDがAthlonの成功を引き継ぐものとして期待するHammerプロセッサーファミリーについて説明した。

「次世代プロセッサーHammerはAMDにとってブレイクスルーとなる製品だ。性能に妥協することなく、32bitから64bitへの移行が可能になる。Hammerファミリーによって、デスクトップにおける性能リーダーシップを維持し続けることができると確信する」

「HammerにはAMDのアーキテクチャー上の革新が集約されている。パイプラインによってアグレッシブなクロック周波数のスケーリングがサポートされる。また、Hammerでは設計・製造技術面の革新によって、省電力性が向上する。モバイル向けのHammerがノート市場に浸透していくことで、ハイパフォーマンス市場を創出できる。」

AMDプロセッサーにおける性能改善グラフ。最初のAthlon-1GHzを1としたもの。Athlonは21ヵ月で性能が倍増しているが、Hammerの投入によって、これからはもっとアグレッシブな性能向上を目指すとしている
AMDプロセッサーにおける性能改善グラフ。最初のAthlon-1GHzを1としたもの。Athlonは21ヵ月で性能が倍増しているが、Hammerの投入によって、これからはもっとアグレッシブな性能向上を目指すとしている

ここで1月31日(米国時間)に発表した、台湾の半導体ファウンダリーUMCとの包括的提携について説明した。この提携の内容は、両社は合弁会社AU Pte社をシンガポールに設立して300mmウエハー対応の半導体工場(Fab)を建設し、2005年半ばに0.065μm(65nm)プロセスによる商業生産を開始するというもの。また、共同でロジック製品用のプロセス技術の開発を行なう。さらに、UMCがAMDのパソコン向けプロセッサーの生産を代行するという契約も結んでいる。なお、AMDは米モトローラ社と0.13μmプロセス技術開発に関して提携しているが、これは次世代の0.09μm(90nm)プロセスまで継続し、65nmプロセスでUMCに移行するとしている。

「この両社の提携は、AMDが目指す革新の1つで、300mmウエハーへの対応のために考えたものだ。半導体市場で成功していくためには柔軟性とタイミングが重要で、それに対応するためにこのような策を取った。300mmウエハーのFabによって、いまの200mmウエハーのFabよりも30%コストセーブが可能ということが分かっているが、この達成のためには稼働率の向上が必要だ。UMCとの協業によって、業界トップクラスの稼働率を達成し、協業他社に対する優位性を発揮でき、300mmウエハー対応をタイムリーに行なえる。UMCがすでに持っている300mmウエハー工場を技術開発のためにすぐ利用できるというメリットもある」

ルイズ社長はスピーチの最後に、5日(米国時間)に発表した米アルケミーセミコンダクター社の買収について説明した。米アルケミーセミコンダクターは、PDAやウェブタブレット、無線/有線のインターネットアクセスデバイス、インターネットゲートウェイ向けに、MIPSベースの組み込みプロセッサーの設計、開発、販売を手がける企業。買収は第1四半期中に終了するとアナウンスしている。

米アルケミーセミコンダクター買収のポイント
米アルケミーセミコンダクター買収のポイント

「アルケミーセミコンダクターの買収によって、AMDの持つフラッシュメモリーなどのプロダクトラインが補完される形になる。アルケミーには、(米ディジタル・イクイップメント社において)AlphaプロセッサーやStrongARMプロセッサーの設計に携わった優秀な人材もいる。ウェブタブレットやインターネットアクセス製品、ゲートウェイ製品に向けた高性能で低消費電力のプロセッサーを提供できることに自信を持っている。また、日本はそうしたパーソナル・コネクティビティーが進んでいる市場であり、そこで我々の製品が受け入れられることにたいへん期待している」

米アルケミーセミコンダクターの買収によって得るパーソナル・コネクティビティー分野向けプロセッサーは、まさに日本市場に向けたものだという
米アルケミーセミコンダクターの買収によって得るパーソナル・コネクティビティー分野向けプロセッサーは、まさに日本市場に向けたものだという。具体的な企業名は出なかったが、すでに数社の日本企業向けにプロセッサーデザインが進んでいるという

なお、質疑応答の際には、シリコンバレーの地元新聞であるSan Jose Mercury Newsが1月24日付で報じた「米インテルがAMDのHammerアーキテクチャーであるx86-64のように、IA-32に64bit機能を拡張する“Yamhill(ヤムヒル)”と呼ぶ技術を開発している」というニュースについて質問が出た。

これに対しルイズ社長は「私もその記事は読んだが、インテルからは何の反応もなく憶測の域を出ない。ただ、もしもインテルがx86-64と同じような方法をとってきたとするなら、我々のやり方を支持するということになるのではないか。そうだとすれば、我々には1年以上のアドバンテージがある」とコメントした。

説明のそこここに“革新(innovative)”がキーワードとして登場したのが印象に残った。“体重800ポンドのゴリラと戦うためにはバーチャルゴリラになるしかない”(※1)というサンダース会長からCEO職を受け継ぐものとして、AMDをバーチャルゴリラにするための方法は、すべてにおいて革新を進めていくことだ、というルイズ社長のメッセージが強く伝わってきたスピーチだった。

※1 体重800ポンド(約360kg)のゴリラとは、米AMDのサンダース会長が、インテルを指すためによく使う言葉。

ルイズ社長を紹介した、日本AMDの堺社長が示した、AMDにおける最近の“革新”の数々
ルイズ社長を紹介した、日本AMDの堺社長が示した、AMDにおける最近の“革新”の数々(緑のマーク)。青いマークはインテルの技術発表などを示している

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