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フィリップス、車載半導体に関するプレスセミナーを開催

2002年02月10日 16時59分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本フィリップス(株)半導体事業部は8日、都内の本社に報道関係者を集め、自動車向け半導体市場の動向や、同社の関連研究を紹介するセミナーを開催した。プラスチックフィルムの上に形成したしなやかに曲げることができるディスプレーパネルや、ガラスやプラスチックの上に半導体回路を形成する技術などを紹介した。

米ガートナーグループ社データクエスト部門のマイク・ウィリアムズ氏
米ガートナーグループ社データクエスト部門のマイク・ウィリアムズ氏

米ガートナーグループ社データクエスト部門のマイク・ウィリアムズ(Mike Williams)氏は、自動車向け半導体(Automotive Semiconductor)市場の現状と予測について語った。ウィリアムズ氏によると、同市場は、それ以外の半導体市場と比べて市場の変動が少なく安定しているため、半導体産業界から注目されている市場なのだという。半導体は一般に変動が激しい市場で、ここ5年を見てもマイナス成長を3度記録している。特に2001年はマイナス30数%という激しい落ち込みとなった。しかし、自動車向け半導体は2001年でも4~5%成長するなど着実に伸びている。

半導体産業と、自動車向け半導体市場の成長率のグラフ
半導体産業と、自動車向け半導体市場の成長率のグラフ。青い自動車向け半導体市場の成長率は前年を下回ったことがない
1台の自動車に搭載されるプロセッサーの数の推移
1台の自動車に搭載されるプロセッサーの数の推移

現在の自動車に搭載される機能のおよそ90%は半導体製品によってもたらされる機能であり、1台あたりおよそ40個のプロセッサーが搭載されているという。これらのプロセッサーは、電子制御エンジン、エアバッグ、ABS(アンチロックブレーキシステム)などに使われている。こうした搭乗者の安全に関わる機能を搭載した自動車は、保険料が安くなるために、消費者もそうした機能を持った自動車を購入する傾向が強いという。さらに、マッサージ機能付きのイスといった特別なオプションを求める消費者もおり、そうした自動車ではさらに多くのプロセッサーが搭載されることになる。

自動車向け半導体のメーカートップ15社のうち、6社が日本メーカー。ただし、トップの米モトローラ社は2位の日本電気(株)を大きくリードしている
自動車向け半導体のメーカートップ15社のうち、6社が日本メーカー。ただし、トップの米モトローラ社は2位の日本電気(株)を大きくリードしている
自動車向けテレマティクス機能の概要
自動車向けテレマティクス機能の概要
テレマティクスの成長を促すアプリケーション。2010~2020年頃には自動車同士が通信することによる自動操縦機能が実現するという
テレマティクスの成長を促すアプリケーション。2010~2020年頃には自動車同士が通信することによる自動操縦機能が実現するという

また、自動車が車外と通信して各種の情報をやりとりする“テレマティクス機能”は、2010年頃には新車のほとんどが備えると予測している。その結果として自動車全体のコストに占める半導体コストの割合は、現在12%程度だが、2010年には30%にまで上昇するという予測を示し、自動車に搭載される半導体は今後も安定した成長が見込まれているとしている。

日本フィリップスの半導体事業部、リージョナル オートモーティブ マーケット セグメントマネージャ/アジアのドゥルー・フリーマン氏
日本フィリップスの半導体事業部、リージョナル オートモーティブ マーケット セグメントマネージャ/アジアのドゥルー・フリーマン氏

日本フィリップスの半導体事業部、リージョナル オートモーティブ マーケット セグメントマネージャ/アジアのドゥルー・フリーマン(Drue Freeman)氏によると、同社の自動車向け半導体のうち、カーラジオのICについて30%以上、イモビライザー(盗難防止装置)システムについて50%以上、車内ネットワーク(IVN:In-Vehicle-Network)用トランシーバーICについては60%以上と、シェア1位だという。

カーラジオがCar Information Centerへと進化するという
カーラジオがCar Information Centerへと進化するという

将来、カーラジオを中心にデジタル放送受信機やテレマティクス装置、カーナビなどが統合され、“Car Information Center”になると予測されるが、フィリップスでは、再利用可能なハードウェアIP(Intellectual Property)とソフトウェアモジュールを組み合わせることにより、システムの開発機関が短縮できるよう研究を進めているとしている。

同社がオランダのMobilEye社と研究している自律型運転装置のイメージ
同社がオランダのMobilEye社と研究している自律型運転装置のイメージ

セミナーの最後では、中国のフィリップス リサーチ 東アジア社のスピーチプロセッシング事業部長ワイ・シー・チュ(Y.C.Chu)博士が、同社で研究開発中の技術を紹介した。

セミナーの最後では、中国のフィリップス リサーチ 東アジア社のスピーチプロセッシング事業部長ワイ・シー・チュ博士
セミナーの最後では、中国のフィリップス リサーチ 東アジア社のスピーチプロセッシング事業部長ワイ・シー・チュ博士

最初は音声による音楽再生のユーザーインターフェースのデモ。実験者がシステムに話しかけることによって、システムはその声から話者が誰であるかを認識し、好みの音楽を絞り込む。そして、音楽のタイトルを言わなくても、口ずさんだメロディーから、そのフレーズを含む音楽を検索して再生するというもの。

しなやかで丸めることのできるディスプレー
しなやかで丸めることのできるディスプレー。丸めた状態で表示しているのが分かる

次に紹介したのは、プラスチックフィルム上に形成したディスプレーパネル。液晶ディスプレーには従来のガラス基板以外に、プラスチック基板をつかうものも実用化されているが、あくまで平面に限られている。このフィリップスのディスプレーは、円筒状に丸めることもできるほど薄くしなやかなもので、表示している状態で丸めたり広げたりできるようだ。ただし、画像表示方式がなんなのかは示されなかった。

ガラスのウエハー上に作られたチップ回路
ガラスのウエハー上に作られたチップ回路

最後は、通常はシリコンウエハー上に作る半導体回路をガラスやプラスチックなどさまざまな素材の上に作れるという技術を見せた。ディスプレーと同様に、堅い平面の上だけでなく、ぺらぺらとした薄いフィルムの上にも乗せることができるという。半導体回路そのものは向こうが透けて見えるほどなので、自動車の窓ガラスに各種のセンサーを直接作り込むこともできそうだ。

チュ博士が紹介したこれらの技術は、フィリップス リサーチのビジョンである“Ambient Intelligence”(ユーザーの要求にさまざまな形で応えてくれる知的空間)に基づく研究成果の一部だということだ。話者を認識して音楽を流してくれるというデモは、運転者の好みに合わせた車内温度の調整やイスの高さ、エンジン特性などにも応用できる技術であり、まさに自動車に適したものであると感じられた。

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