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LinuxWorld EXPOレポート(その3)

2002年02月02日 23時30分更新

文● 塩田紳二

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LinuxWorldExpo3日目。今日が最終日である。だいたい、この手の米国のイベントでは、最初の2日間はある程度の来場者があり盛り上がるのだが、最終日には、展示会場はかなり閑散としてくる。コンファレンスもあるので、ある程度の来場者はあるのだろうが、さすがに2日もあれば、展示会場は見終わってしまう。国内だと、金曜日に直帰予定の来場者がある程度来るものなのだが、こちらではそういう感じではないようだ。

プレスルームも最終日はガラガラ。残っているのは、海外からの取材組で、米国内からの取材陣はほとんどいない。

今年は、最終日にもかかわらず、展示会場の来場者はそれほど少ないわけではない。不況なので暇な人が多いのか? それとも説明員が回っているだけか?

今年は、会場に「着ぐるみ」がほとんどいなかった。いままでLinuxといえば、ペンギンの格好をした人がけっこうあちこちのブースにいたのだが、今年は初日に一人(一匹?)見ただけである。そのほか、ブースで歌ったり、踊ったりするようなところもない。多少凝ったブースはあるが、基本的には、オーソドックスな展示スペースが多い。

着ぐるみやショー的な要素がなくなったのは、よりビジネス色が出たのか、あるいは、そういうものにかけるお金がないのかは不明だが、すくなくとも見た目は、ビジネス中心のトレードショー的である。もっとも、かつては、箱の中に風を吹き込んで、その中で紙幣のつかみ取りをするなんてブースもあったが、そういう「バブル」なブースはまったくない。

もともと、ニューヨークでのLinuxWorldは、夏のSan Jose(昨年からはSan Franciscoで開催)に比べると、ビジネス的であったが、Linuxコミュニティの開発プロジェクトのブースなどもあり、ある程度は、アメリカのLinuxオタクのイベント的な部分も残っていた。しかし、今回は、そういう雰囲気が完全に一掃され、ニューヨークのビジネスマンが見に来て、カルチャーショックを受けるようなものではなくなってしまった。

最終日は、ソフトウェアを中心に話をすることにしよう。LinuxWorld Expoには、多くのソフトウェアハウスが出展している。中には、2日目のスピーチを行なった米Computer Associatesのような大手ソフトハウスから、有志個人によるプロジェクトまで、多くのソフトが出展される。また、米IBMなどのように製品のベースとなった開発プロジェクトの成果をオープンソースにしているところもある。

基本的な区別は大きく2つ、オープンソースかそうでないかである。Linuxが普及するに従って、パッケージソフトを購入するユーザーが増えるのでは? という期待もあって、かつてはWindows用アプリケーションパッケージのメーカーがLinux版を出荷したことがあったが、いまのところ、パッケージのみの商売はちょっと難しいようである。いくつかのメーカーは、ディストリビューターと組み、バンドルという形でビジネスがある程度成り立っている。普通ディストリビューションは、インターネットなどで公開される無料のFTPバージョンと、パッケージバージョンがあるが、Linuxとしては両者に違いはなく、パッケージバージョンはこうした商用ソフトをバンドルするなどして差別化をはかっているからだ。

ただ、かつては、LinuxWorld Expoの展示会場で大きなスペースを持っていたディストリビューターも、かつてほどの勢いがない。展示スペースがあったのは、Red HatとMandrakeSoftぐらい。

その中で大きな展示スペースで目立ったソフトウェアハウスは、HancomLinuxとXimianである。HancomLinuxは、日本語版もあるオフィススウィート「Hancom Office」の開発元。また、Ximianは、Gnomeプロジェクトから派生したソフトウェアハウスである。

Hancom Officeは、もともとは、韓国のワープロであるHancomWordの、Wineを使った移植版からスタートしたが、最新の2.0では完全にネイティブコードに書き直されている。日本語版もデモが行なわれていたし、シャープのSL-5500(Linux PDA)へ移植されバンドルされるという。

SUNのStarOffice(日本ではStarSuite)は、今年5月に6.0が出荷予定で、ようやく2バイトコードを使うアジア系の言語サポートが可能になる。

ビジネスライクなイベントになった今年のLinuxWorldExpoだが、多分に不況の影響が感じられる。さて、次回は、8月にSan Franciscoでの開催。San Joseのコンベンションセンターが手狭になったためにSan Franciscoへ移ったのだが、New Yorkの状態を見るに、出展社が大きく増える雰囲気はなさそう。さてどうなることか。

ペンギンぬいぐるみ
初日には、ペンギンの着ぐるみが一匹(?)いたのだが、そのあとは、まったくみかけなくなった。絶滅の危機か?
CAのペンギンComputer Associatesにあった巨大ペンギン。今回のイベントでは、こういう無駄な展示そのものが珍しいぐらい。
Ximian
ジャングルの村をイメージしたXimianのブース。凝った作りのブースはここぐらいである。もっとも、Ximianのブースはいつもこのデザイン。使い回しか?
StarOffice
Sun Microsystemsが開発中のStarOffice 6.0(日本では、この名称をNECが商標としてもっているためにStarSuiteとなる)。5月にはリリース予定。
Eclipse
IBMが開発した「開発ツール環境」Eclipse(http://www.eclipse.org/)。プラグインを開発することで、さまざまな言語に対応できるIDE(統合開発環境)となる。
Hancom 2.0
HancomLinuxのHancom Office 2.0日本語版。今回はWineを使わず、完全にすべてのアプリケーションがネイティブコード化するという。
式神日本の(株)アックスが出展していた「式神」。PDAなどの小さな画面を持つLinuxマシン用のGUI環境である。
フライトシミュレータ
Flightgearプロジェクト(http://flightgear.org)で開発しているフライトシミュレータ。WindowsやLinux、BSDなどに対応している。

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