Evo Workstation W6000(W6P/2.2/18K/512/Xr)

Evo Workstation W6000(W6P/2.2/18K/512/Xr)

CPUが30％速くなる
ハイパースレッディングとは

　さて注目のハイパースレッディング(以下HT)について見てみよう。よく「CPUが2つに見える」点ばかりが強調されるが、それは本質を外した本末転倒な議論だ。HTは「CPUが2つのプログラムを(従来のように交代にではなく)本当に同時に実行できる」点が最大のポイントだ。1つのプログラムだけでCPUの全機能が使われることはまれなので、2つのプログラムが互いに自分の使わないCPU機能を融通し合いながら動作すれば、CPU機能の効率的な利用ができ、交代で使うよりもトータルの処理時間をずっと短くできる。ただ、Windowsなど従来のOSは、1CPUに1プログラムしか割り当てられない。そこで、見かけ上2CPUに見せることで、2プログラムを割り当てさせるようにしている。つまり、2つに見えるというのは、現在のOS環境でHT機能を利用するための便宜上の手段でしかない。

　W6000はBIOSでHTのON/OFFが切り替えられる。2CPU状態でHT ONだと、Windows XP Professional上では4つのXeon 2.2GHzが見える。Windowsにパッチなどは当てていないと言う。

　注目のHTの効果を下のグラフに示す。今回はCPUそのものを1個、2個にするとともに、それぞれでHT ON/OFFを行い、計4通りの結果を得た(片方のCPUだけHT ONという設定はできない)。MPEGエンコーダソフト「TMPGEnc」では、シングルCPU、HTなし(これでPentium4-2.20GHzと同じ)に比べ、HTをONにするだけで、実に30％もの性能向上を得ることができた。CPUが2.86GHzになったようなものだ。メインストリームのPentium4にも組み込まれれば、熾烈を極めるAthlon XPとの性能競争に一気に決着が付く、画期的な性能向上機構である。

図1　TMPGEncによるエンコード時間(単位：秒)

　もっとも、本当に2つのCPUを搭載した場合(HTはOFF)の性能向上効果は82％にも及ぶ。HTは所詮、1つのPentium 4を2プログラムで共用するだけなので、両方が特定の機能ユニットを取り合うケースが出てくるため、本当に2CPUある場合ほどには性能が上がらないのは当然である。2CPU状態でHT ONにすることで、さらに10％の性能向上を得ることができた。

　HTは、複数のプログラムが動いている場合でないと何の効果もない。今回3DMark 2001も計測したが、これは全テストで結果が同じだった。典型的な複数プログラム同時実行環境とは、たくさんのユーザーからのアクセスを処理するWebサーバやファイルサーバのような用途だ。このような環境では昔からマルチプロセッサが推奨されてきたのだが、HTがプラスされることで、実際に本物のCPUを増設する場合ほどではないとはいえ、CPUの数を変えずに性能をさらに大きく向上させることができる。サーバの選択において、新Xeon搭載であることは今後重要なチェックポイントにになってきそうだ。

　なお、本機出荷時には、BIOSのHTの項目はOFFにセットされている。これは「現時点ではHT対応アプリがないため」だという。だからといってOFFにすることもなかろうと思うかもしれないが、Intelによれば、一部のマルチCPUシステムを前提に作られたアプリケーションでは、仮想マルチCPUであるHT環境下で性能低下が起きる場合があるという。現在Intelは、ソフトハウスに対して、HT環境でのプログラミングにおける注意事項をアナウンスし、HTの積極的・効果的な利用を働きかけているところである。アプリケーションのHT環境下での動作検証情報が揃い、問題点への取り組みが進むまでは、万一の性能低下を避けたい、ということだろう。

　ちなみに、Windows XP Professionalのライセンスには「2CPUまで」という制限があるが、これは「物理的に2つまで」という制限で、HTによって4CPUに見えても問題はないということだ。

Evo Workstation W6000の主なスペック
製品名	Evo Workstation W6000
CPU	Xeon-2.2GHz×2
メモリ	512MB
チップセット	i860
グラフィクス	Nvidia Quadro2 Pro
HDD	18GB(Ultra 160 SCSI)
CD-RW	R16倍速／RW10倍速／CD40倍速
通信	LAN
OS	Windows XP Professional／Windows 2000 Professional
オフィスアプリ	─