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【オーバークロック研究室】PowerLeap製PL-iP3/Tを使ってCeleron-1AGHzを動作させてみる

2002年01月23日 22時22分更新

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 ここでPentiumIII-S-1.13GHzとCeleron-1AGHzの規定コア電圧を表に照らし合わせてみると、前者の規定コア電圧は1.450VなのでVIDコードはVID25mV、VID3、VID2、VID1、VID0の順に[01100]となり、1.475Vと規定された後者の場合は[11100]となる。両者のVIDコードを比較するとVID25mVのパラメータに違いがあることがわかる。一方、コア電圧を生成する側(ここではPL-iP3/TのL6911Eチップ)ではユーザーが装着したCPUのVIDコードを読みとることでそのCPUの規定コア電圧を判断し、適正なコア電圧を供給する回路になっている(回路図参照)。

 
PL-iP3/TにおけるVIDライン接続図
PL-iP3/TにおけるVIDライン接続図

例えるとCPUが持っているVIDパラメータはある種のスイッチで、パラメータが"0"であればCPUのVSSピンに対してクローズであり、"1"ならオープンと解釈すればよい(ただしパラメータはCPU内部で固定されているため自在に操作できない)。なお、クローズされたCPUのVIDピンは理屈上VSSピンを経てGNDへ接続されている。すなわち実動中のVIDピン対GND電圧を測定すればVIDコード[01100]に応じて電圧が[ない、ある、ある、ない、ない]と反応することとなる。さて、実際のPL-iP3/TではPentiumIII-S-1.13GHzを実装した場合、コア電圧が実測値1.312Vであった。改めてL6911Eが正しくVIDコードを認識しているのか確かめたところVID25mV(8ピン)を除いてVID0~VID3ピンで電圧が[ある]と判明した(ただし、L6911Eの8ピンはPL-iP3/T上でR52(1Kオーム)を経てGNDに接続されており、CPU側のVID25mVパラメータの如何に問わず"0"となる)。つまり、L6911Eは、PentiumIII-S-1.13GHzのVIDコードを[01111]と認識している事になる。また、CPUをCeleron-1AGHzに交換して試したテストでも全く同じ結果となった(ちなみにPL-iP3/TのVID25mVラインは"0"固定なのでCeleron-1AGHzのVIDコード[11100]を接続し正しく認識したとしても1.475Vとならず1.450Vに規制される)。これを上表に照らし合わせると出力コア電圧は1.300Vが導き出され上述の実測値1.312Vは認識したVIDコードに対してほぼ妥当なコア電圧だと言う結果に行きついた。



PL-iP3/TにおけるVIDライン接続図
CPUのVIDコードを読みとって規定コア電圧を判断するST製L6911E

 では、なぜ正しいVIDコードを認識しないのだろうか。PL-iP3/TのVIDラインを導通チェックしても断線はなくCPUソケットの該当ピンと通じている。ところがCPU(PentiumIII-S-1.13GHzとCeleron-1AGHzの両方)のVID0ピンとVSSピン間の導通状況をチェックをしてみると見事にオープンとなっていた。VID1やVID25mVもVID0同様にVSSピンと導通はない。試しにCoppermineコア版PentiumIII-700と533EBのVIDピンとVSSピン間の導通チェックを実施したところ、規定コア電圧に対応したVIDコードの通りに導通の「ある・なし」が確認できた。当然、PL-iP3/Tに装着してコア電圧を測定したところ正しい規定コア電圧を出力している。

 この状況をふまえてCeleron-1AGHzのデーターシートをみてみるとどうやらTualatin版プロセッサからVIDピンの仕様が変更されているようだ。端的に言うとTualatin版プロセッサのVIDコードはCPUに通電しないと判断できない。したがって非通電時に導通チェックを実施しても無意味ということである。ただ、筆者の勝手な想像であるが、上述の通り動作時のVIDピン電圧を測定した結果からも明らかに規定コア電圧のVIDコードにはなっていない。

 現状で考えられることは、Tualatinコア版CPUのVIDピンに異変が発生しているのではないだろうか。あるいは、Tualatinコア版CPUのVIDピンがこの状態で正常ならL6911Eは、Tualatinコア版CPUのVIDコードを読み取れないと言うことになる。

 しかし、筆者の知人が所有するPL-iP3/TとPentiumIII-S 1.26GHzの組み合わせては非改造で正しいコア電圧を得ていると言う。したがってTualatinコア版CPUの全てに当てはまる異変でもなさそうだ。また、PL-iP3/Tではなくて他の電源回路(Tualatin対応マザーボード等)ではこのCPUのVIDコードをどのように認識するのか試してみないと一方的に決めつける訳にもいかない。前編ではコア電圧1.312VでPentiumIII-S 1.13GHzが無難に動作したとは言うものの実用時にCPUの負担が増加すればトラブルを抱える可能性も懸念される。何れにせよユーザー側で対処できる範囲を超えた問題なので早急に何らかの対策を施してほしいものだ(逆に改造派にしてみればVIDコードが全て“1”であることを利用する手もあるが)。

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