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グレープシティ株式会社社長ダニエル・ファンガー氏に聞く、2002年の.NET戦略

2002年01月08日 09時40分更新

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[MSDN Mag] 今お話に出ました日本以外の拠点では、どういった事業が行なわれているのでしょうか。そして今後の事業展開はどうなるのでしょうか?
[ファンガー氏] 中国上海にある会社は、「上海オリエントテクノロジー」(SO!Tech)という名前です。そこには、日本の自社製品の開発やテストを行なう部門があります。日本で販売している私立学校向け管理ソフト「レーザーシリーズ」の開発やツール関係です。また、中国国内の市場向けに、企業や中小企業向けの会計ソフト、生産管理システムなどの開発をしています。このような日本の自社製品の開発を行なう部署のほかに、米国のソフトウェアを中国に持ってきて販売代理店をしたり、特注の開発などを行なっている部署もあります。

最近の例では、中国の「ソニースタイルドットコム」(www.SonyStyle.com.cn)を受注しました。今でもずっと継続していますが、このプロジェクトは、Microsoftのアジアパシフィック地区での「最優秀Eコマース・ソリューション」を受賞しました。この例のように、主に中国国内に事業を展開している外資系企業向けのシステムの構築も行なっています。

「E-Commerce Solution of the Year」受賞トロフィー「E-Commerce Solution of the Year」受賞トロフィー

インドの「文化オリエント・インディア」(BOI)では、米国や日本から、開発の仕事を持っていって行なっています。特に、これから力を入れて大きくしようと思っているのは「テクニカルサポート」です。これは米国の支店でソフトウェアベンダーやハードウェアベンダーからサポートの仕事をアウトソーシングしてもらおうと営業展開を推し進め、電子メールやチャットで、インドにいる部隊にテクニカルサポートをやらせようというものです。すでに契約も済んで始まっている会社もあります。インドの技術者は、みんな英語を使いますので、それをうまく利用しようというわけです。

電子メールのサポートでは、米国の会社は、とにかく24時間以内のレスポンスを目指しているので、インドでやっていることがうまくいっています。米国では、夕方までに入った問い合わせを、次の日の夕方までに回答しなければならないわけですが、その時インドは朝ですからね。それに、米国では、よいテクニカルサポート、よい顧客サービスが少ないと思います。

たとえば開発ツールのサポートなどでは、技術力の高い担当者が必要とされます。しかし、そういった人材は、開発がしたいわけでサポートをやりたがらない。つまり人材を確保するのがたいへんなわけです。インドでは、とにかくソフトウェア産業やIT産業で働きたいと考える、高い技術力を持った人材が豊富です。そういう人材を採用して、トレーニングをしてサポート担当にするということも比較的簡単にできるわけです。

実際には、米国での経済状態の低迷もあって、開発の仕事は減少傾向にあります。しかし、このサポートの分野だけは伸びています。これからますます伸びるのではないかと言われている分野ですが、我々はこの部分に重点を置いてやろうとしています。

中国に進出してからすでに10年以上になりますが、技術者のレベルアップは目を見張るものがあります。最初から開発能力は高かったのですが、品質に関する意識は、日本に来させて研修を受けさせたり、日本から現地に人を送ったりして叩き込みました。また我社は、ローカライズする製品に徹底したテストを行ないます。このテスト作業も、今は大部分を中国で行なっています。日本の会社は、中国の開発部隊なしではやっていけないという段階になっています。

長期的な展望としては、中国はやはり非常に魅力的な市場です。現在、中国国内では、黒字の部門とそうでない部門があるのですが、長期的に見ると中国の市場はこれから伸びるだろうと考えています。特にWTOの加盟と、2008年に北京で開催されるオリンピックに向けて、IT方面への投資が今後ものすごく増えていくと思います。それに、日本企業の進出が目立つと、同じ日系企業のソフトウェア会社にお世話になりたいといった傾向もありますからね。どちらかというと最初は、ソフトウェアの開発を行なう技術者だけの会社だったのですが、4年ぐらい前から、マーケティングやセールスの専門の人間を入れて、体制作りをしてきました。ですから、今後ますます中国国内の仕事も、いい方向に展開していくのではないかと期待しています。

中国でのIT企業に対しての政策は、インドと較べると非常に遅れていました。インドでは、国内のソフトウェアの、違法コピーの取り締まりを、6~7年ぐらい前から始めました。一時期インドでは、違法コピーの占める割合が、約90%以上だったものが、約60%にまで低下させることができたわけです。中国は、今だに98%などと言われていますが、以前よりは半分本気でやり出しているという感じはします。しかし中国政府もITに力を入れ始めてから、インドを見習おうということになりました。インドには、ワールドワイドで見て「CMM」という品質管理の、最高のレベル5を取っている企業の約半分があります。元々、中国とインドはあまり仲がよくなかったのですが、最近はインドから高い技術力とノウハウを持った専門家を呼んで、どうやってIT産業を発展させたのかを吸収しようとしているわけです。中国では、大きいプロジェクトを動かしたり、システムインテグレーションといった受託開発ならばいいのですが、パッケージソフトは、なかなか儲からない状態です、しかし、現在もの凄い勢いで変わろうとしています。
[MSDN Mag] お話をお聞きすると、多国籍企業というより「多国籍文化」を持つ企業イメージが浮かびます。それが「葡萄の房のように繋がっている」というのが、新しい社名のイメージとお聞きしました。しかし国によって、文化、風習、通貨、考え方も当然違うし、技術者のレベルも違う。そこには言語の問題もあります。各拠点を、バランスよく動かすには、どのように目を配っているのでしょうか。これは、人件費の安い国で作ればいいとか、そんな単純な問題ではないですね。
[ファンガー氏] 私自身、90~92年にかけて、中国の西安に行っていました。まだインターネットの接続もなく、国際電話でもほとんど掛からなかった。今振り返って見ると、うまくいったなあという感じはありますが、やはり最初の努力が結果的によかったのだと思います。現地で、習慣ややり方を覚えたということ。そして、やはり社内に中国語、英語、日本語に堪能な人間が多かった。そういう人達が、諦めないで長年現地で努力してくれたことが大きかったのだと思います。今になって、その結果が出てきたというわけです。

私も、中国やインドは、現地のスタッフとも自由に会話ができますが、モンゴルへ行くとビジネスが難しくなる。現地には英語が分かる人もいますが、通訳を介してとなると途端にコミュニケーションが難しくなるんですね。

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