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グレープシティ株式会社社長ダニエル・ファンガー氏に聞く、2002年の.NET戦略

2002年01月08日 09時40分更新

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[MSDN Mag] .NETに関係してお聞きしたいのですが、やはり頭を悩ます部分として、まずどのようなサービスを開発するか。そして、課金をどうするかといった問題があると思います。これまでサイト構築に関するノウハウを蓄積してこられた。そのなかで、ユーザー管理やデータベース管理など、いろいろなノウハウをお持ちだと思います。そこで今後.NETでは、いわゆるXML Web Serviceを提供するためのサイトを作る仕事があると思います。その時、サービスに対する考え方や方向性については、どのようにお考えなのでしょうか。
[ファンガー氏] やはりWebサービスに関しても開発を進めていますが、いろいろなやり方があって、はっきりしたことがまだ見えていないところがあります。そこでまず、とにかくいくつかのサービス、コンポーネント、サーバサイドのコンポーネントのサービスを出して、やってみないことには先に進まないという気持ちで、最初は赤字でもお金にならなくても、まずユーザーに使っていただいて、我々はそこで経験を積んで、より本格的に対応できるようにしようと計画しています。

そこで2002年中に、開発者向けのWebサイト構築で使っていただけるような、いくつかのWebサービス的なものをリリースして、またコンシューマ向けWebサービスも随時出していく計画です。

我社は、私立学校向けの管理ソフトでソフトウェア開発事業をスタートしました。歴史的に長く、全国1500校以上の私立学校に導入されています。このソフトを.NETプラットフォームで、しかもいろいろなWebサービスを使って1つの大きなシステムを構築するというモデルを進めています。学校向けの会計や給料計算ソフトも、ASPモデルでの提供も考えているのですが、今回は全部.NETで、いろいろなWebサービスとして切り離すことができるようにします。開発は順調に進んでいて、コンポーネントやWebサービスといったビジネスを進めるのに役立っています。

このような開発モデルを利用して、ほかの管理ソフトやビジネスアプリケーションの開発も同時に行なっているので、非常に事業部同士でいいバランスが取れていると思います。開発は1年で終わらせて、2003年にはサービスをASP、もしくはWebサービスモデルで提供していこうと計画しています。

ツールの新製品としては、メインストリームの売れ筋製品として一番売れているのは「TrueDB Grid」と「SPREAD」ですから、これまで蓄積してきたノウハウをフルに使って、自社開発を進めていきます。「InputMan」も本数で言えば2番目に売れている商品ですけどね。我社は、これまでは海外のベンダーのソフトウェアを持ってきてローカライズする比重が高かったのですが、今後は自社開発製品を増やしていこうとしています。

中国では、さらにその先を研究しているチームがあります。完全なダウンロードなしのコンポーネント、見た目はほかのUIコンポーネントと同じですが、100%HTML、DHTML、XMLなどをベースにしたUIを構築可能なツールや、XMLベースのツールなどを研究しています。これも2002年中に順次リリースできるのではないかと考えています。
[MSDN Mag] .NETの時代になって、今後.NETのサービスで開発者が困るのは、いわゆる作る人や設計する人が、ビジネスモデルを考えなければならない部分にあると思います。その他に課金の方法にも問題があります。私は、Microsoftはインターネットでドコモになろうとしていると思います。そこにはコンポーネントメーカーのライバルとして、数多くのライバルがいるのではないでしょうか。開発者がビジネスモデルを考えなければならないという部分が、.NETのWebサービスの勝敗の分かれ目なのではないかと思うのですが。
[ファンガー氏] 我々がビジネスとしているLAN上のネットワークシステムやイントラネットなどでは、一番数的に多く出る製品は、UIコンポーネントです。そういうビジネスは、今後もビジネスモデルとして続いていくだろう思います。おっしゃるように、Webサービスになった場合、難しいのはビジネスを知らなければならないということ、そして課金システムですね。確かに一番早いのは、どこかの課金システムを持つ大きなところに乗ることです。大きいところがどうしても有利です。それと合わせて、Webサービスを、ビジネスアプリケーションの構築、あるいはWebサイトの構築に使うといった場合には、やはり技術的なノウハウやビジネスに関する知識が、非常に大事になってきます。

我々が提供していこうと考えているのは、引き続き、開発者向けのコンポーネント、システム構築のためのコンポーネント、そして、たとえば株価を表示するようなWebサービス的な部分です。エンドユーザー向けのWebサービスの提供となると、やはりその業界やビジネスの知識が必要です。ビジネスアプリケーションやパッケージを作るのと同様、熟練した知識やノウハウが必要になってきますからね。
[MSDN Mag] 先ほどの話にも出ましたが、Javaと.NETの対決は、今後どのように進むのでしょうか。また、経営者としては、2002年はよくなるとお考えですか。
[ファンガー氏] 難しい質問です。私から見ると、.NETとJavaは共存していくだろうと考えています。どちらが割合的にどうなるのかは見えていません、マルチプラットフォームの環境では、Javaになるだろうと思っていますし、Windowsベースでシステムを統一しているところは、やはりJavaよりは.NETだろうと思います。

ビジネスアプリケーションで言えば、特にそのメインストリームのコンシューマ向け製品は、今後ますます寡占化されていくでしょう。しかし、我々のような小さなベンダーは、とにかくニッチなマーケットを狙っていきます。本当に自分の得意とする分野を持っている会社は、まだまだ伸びるのではないかと思います。日本の経済全体は、現在あまりよろしくない状態ですが、ソフトウェア産業だけで見ると、ジャンルにもよるのでしょうが、ほかの業界ほどは落ち込んではいないと思います。今後さらに落ち込むことになっても、ITの投資が激減するとはちょっと考えられない。逆にそのような投資は、ある程度は引き続き必要になるわけで、少なくとも現在と同じ水準は保っていくのではないかと考えています。

ドットコムの崩壊は、今になって振り返ると当たり前だったと思います。はっきり見えますね。やはりあれもバブルだったんでしょう。そして、成功するビジネスはそう簡単ではないということです。商売がみんなうまくいくんでしたら、苦労することもないんでしょうけど、やはり最終的にいいビジネスを作り上げていくというのは、すごい努力と苦労が必要だと思います。とにかく経費削減よりも、もっと考えるべきなのは、どうやったらビジネスを伸ばせるか、便利にスムーズにできるかということです。さまざまな取り引きをスムーズに行なえるようにするのは、インターネットを使ったシステムのあるべき姿だと思います。それを考えると、Visual Studio.NETや.NETプラットフォームは、そういったことを目的とするシステム構築には、今まで以上に威力を発揮すると思います。
[MSDN Mag] .NETのマルチプラットフォーム、そのなかでも、PDAや携帯電話などの携帯端末に対する今後のグレープシティの取り組みや戦略をお聞かせください。
[ファンガー氏] 我社では、携帯端末のサポートも進めていかなければならないと考えています。ここ10年以上はPCの時代でした。PCは引き続き大事なプラットフォームであるというのは間違いないですが、それ以上にPDAやゲームコンソール、そしてセットトップボックスなどのシステムも、さまざまな場所で使われるようになるでしょう。そういう意味では、.NETのツールキットは、非常に大事な役目を果たすと思います。

現在我社がインドで開発中のパッケージソフトは、ユーザーインターフェイスもデータアクセスの部分にも、すべてXMLを取り入れています。そうすることによって、いろいろな携帯端末やシステムもサポートしやすくなります。そういう意味でも、.NETプラットフォームは非常に強い武器になると思います。これから先の5年間が楽しみです。想像できないくらい、変わってしまうことでしょう。この先5年で。

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