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【矢部直治のアキバB級グルメ探検隊(最終回)】アキバで30年!ホモ・サピエンスのハートを刺激する「ベンガル」

2001年12月21日 04時42分更新

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――「ベンガル」のカリー、めっちゃスパイシーですけれど、昔から味は変わらないんですか?

笹本さん:
「ええ、ええ、そうですよ。昭和48年(1973年)にお店を開けて以来、カリーソースの味はまったくおんなじ。とはいっても最初はね、「辛口」の「骨付きチキンカリー」だけしかやってなかったの。いまは甘口、中辛、辛口って味が選べるし、カリーにもいろんな種類があるでしょ。コレはね、常連さんたちのご要望に応えて、増やしていった結果なのよ。でも、やっぱりアタシは「骨付きチキンカリー」を食べてもらうのがイチバンだと思うわ。だって、そのために作った味なんですからね。あ、もちろん具がどんなものでもおいしく食べれるようにしてあるけど」

ベンガルのカリーの種類およびサイドデッシュはこんな感じ。なかでもおすすめしたいのは「マサラティー(600円)」。スパイシーかつやさしい味で、飲むとココロのどこかがホットする。ぜひ試して欲しい

――「北インド系」「南インド系」「パキスタン風」って感じで、カリーの味を分類すると、ドコ系のになるんですか?

「ちょっとなに言ってるの! ワタシが作った味なんだから、そんなの関係ないの!」

――す、すいませんっ(汗)。いや、そのう、あまりに本格的なスパイシーさなので、てっきり、その……

「そりゃあそうよ。ワタシ、昔はスパイス会社にいたんですからね。古い話だから割愛するけど、とにかく若い頃、スパイスについて猛烈に勉強したのよ。だから漢方についても知ってるし、スパイスの原産地へも行ったりしたの。ペナン島へナツメグを見に行ったでしょ、もちろんインドにも行ったし、とにかくいろんな国をまわりましたよ。ウチのカリー粉はね、そんなワタシがブレンドしたんですからね。香りと味には自信があるわ」

――笹本さんはいわば、国内外問わず活躍する国際派キャリアウーマンの「はしり」だったんスね。でも、そんなデキるお方が仕事を辞め、どうしてカリーショップを?

「スパイスについて勉強してるうちにね、自分の会社で販売してる香辛料がどんな使われ方をしてるのか、興味が沸いちゃったのよ。それでアタシ、いろんな料理教室に通いはじめたのね。料理教室ったって、今みたく花嫁修行のためにOLが通うようなもんじゃないわよ。プロの料理人のための講座だったり、男性しか入れないような厳しいところだったの。たとえばさ、私が西洋料理を習ったのは、もと日本大使館の料理長だった佐藤先生の教室なんだけど、当時は時代が時代だから教科書なんて英語の原書ですよ。ついてくのが精一杯でホント大変だった。そんな感じで、フランス料理、日本料理、中華料理――あ、ちなみに中華の先生は陳建民先生。中華の達人、陳健一さんのお父さんね――を修行したらさ、もう完全にスパイスの魅力にとりつかれちゃったのよね。たくさんのスパイスを使う料理っていえば……カレーでしょ。そういうこと」

「ウチのカリーの味はね、じつはオニオングラタンをヒントに生まれたの。いまはみんな知ってるけど、タマネギを炒めてソースに入れるとすごく美味しくなるでしょ。でも、むかしのカリーはね、CBのカリー粉で作ったソースに、小麦粉でトロミをつけるのが一般的だったわけ(注:今でいうと「蕎麦屋のカレー」が近い味)。そこでハタと気付いたワタシはCBのカリー粉で作ったカリーにタマネギを入れてみたのよ。そしたらグンと美味しくなった。じゃあ、次は自分でカリー粉を調合してみよう……って思い立ったんです。ほら、アタシ、スパイスの知識も料理の知識もあるでしょ。それで家の台所で調合してみたら、まあ、香りのいいこといいこと! 近所中に漂って評判になったくらいでしたよ。それがウチのカリーの最初ね」

――その笹本オリジナル「カリー粉」ですが、だいたい何種類ぐらいのスパイスを使ってるんですか?

「メインのカリーソースだと……ぜんぶで20種類以上かしら。あ、でもコレはあくまで合計ね。カリー粉にブレンドするドライガーリック・ドライジンジャーパウダーと、実際にソースを作るときに加える生のニンニク・ショウガは同じじゃないでしょ。そういう意味で20種類以上。そのままだと味に深みが出ないから3年くらい寝かせてます。逆にキーマカレー用は、6、7種類のスパイスを1週間ていど寝かせたものを使ってる」

――スパイスを寝かせる?

「カリー粉って、けっきょくはドライなスパイス・ミックスパウダーなのよ。だから作りたてブレンドしたては、香りはすごくいいんだけど、スパイスひとつひとつの味が馴染んでないわけ。しばらく寝かせないと味が落ち着かないのよね。でも、ここで難しいのは、寝かせすぎてしまうと風味と香りが飛んじゃうってこと。味に深みは出てもそれじゃ意味ないからね。すごくバランスが難しいのよ。で、いろいろ研究した結果、ワタシは3年近く寝かせた味がイチバン美味しいと思ったの。キーマは普通のカリーとは逆に、スパイスのフレッシュな香りが楽しめる味にしたかった。だから寝かせる期間は短いってわけ」



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