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米IBM、試験管内で量子コンピューター実験に成功

2001年12月20日 21時00分更新

文● 編集部

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日本アイ・ビー・エム(株)の20日付けの発表によると、米IBM社は現地時間の20日、同社のアルマデン研究所が、7キュービットの量子コンピューターによる計算に成功したと発表した。

量子コンピューターは、量子論的性質を利用することで、原子や原子核を“量子ビット(キュービット:qubit)”として動作させ、コンピューターのプロセッサーやメモリーとしての機能を実現させるもの。外部環境の影響を受けない状態で、キュービット間を相互作用させると、因数分解など特定の種類の計算速度が従来型コンピューターより指数関数的に速くなる。1994年に米AT&T社の科学者であるピーター・ショア(Peter Shor)氏が開発した因数分解用のアルゴリズム“ショアのアルゴリズム”により、多くの公開鍵暗号システムのセキュリティーを打ち破るほど高速に動作する可能性があるが、実用化には多くの年月が必要であるという。

このショアのアルゴリズムで意義があるとされる15の因数を求めるためには、7キュービットの量子コンピューターが必要である。IBMでは、5つのフッ素原子と2つの炭素原子から、7つの核スピンを持つ新しい分子を合成し、高周波パルスにより10の18乗(100京)個の分子を試験管内で制御し、ショアのアルゴリズムを実行して、整数15の因子が3と5であることを確認した。このキュービットの内容は一般の核磁気共鳴(NMR)機器と類似した機器で検出できる。

同研究のチームリーダーでマサチューセッツ工科大学の助教授であるアイザック・ツァン(Isaac Chuang)氏は「この計算を、何千というキュービット数で行なえれば、暗号化の方法に根本的な変更が必要になるだろう。今回の実験で重要だったのは、意図されない量子状態の変化によって発生する信号出力の低下“デコヒーレンス”を予測する方法で、それによるエラーを最小限に抑えられた」と述べた。

しかし、NMRベースの量子コンピュータにおいて、7キュービットを超える分子を開発して合成するのは非常に困難であるとし、今後の課題はキュービット数を容易に拡張できる新しい物理システムの開発であるという。

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