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なるほど! Do Linux!(その2)

2001年12月06日 01時36分更新

文● 編集部

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Do Linux!ロゴ

日刊アスキー Linuxでは、Linux技術者の育成から就業までを一括してサポートするプロジェクト『Do Linux!』に関するレポートを継続的に行なってきた。
Do Linux!の流れは、参加のための試験に始まり、RHCE(Red Hat Certificate Engneer)講習と資格試験を受け、実践コースで現場感覚を養ったうえで、パソナテック(株)の斡旋により就業という形になる。前回は、Do Linux!の新しい実践コース“dolinux.jp”の概要をお届けした。後編である今回は、より詳しいdolinux.jpの内容と、実際のカリキュラム部分をご紹介する。ちなみに、dolinux.jpは、12月中旬にオープン予定である。



10階より
実践コースに使われるサーバルームからの眺め。たいへん見晴らしがよい

それではまず、ざっと前回のおさらいをしよう。パソナテックではこのたび、Do Linux!の課程、就業する直前段階にあたる“実践コース”の内容を変更した。新しい実践コースは、Do Linux!卒業生の技術情報共有を目的とするWebサイト“dolinux.jp”の構築/運用を行なうというものだ。
dolinux.jpでは、Do Linux!卒業生同士(約80名で、クラスタリング関連、セキュリティ関連、サポート、研究など多岐にわたる)の技術共有をもとに、一般向けの技術データベースや、製品情報提供などを行なう。また、RHCEのバージョンアップ情報なども、レッドハットの協力のもと、提供していく。

現役Do Linux!受講生は、先輩用の情報交換サイトを作ることで、仮のネットワーク環境ではなく実際にインターネットに接続されたサーバを運用/管理し、さらに現在は80名もいるLinux業界人とも触れ合えるのがメリットだといえよう。

Do Linux!実践コースを教える高久博也氏は、dolinux.jpを、「エンドユーザーでも開発者でもなく、運営者のグループにしたい」と述べている。

実践コースの具体的な内容

実践コースで使われるdolinux.jpは、

  • Filewall
  • DNS
  • メール
  • Web
  • データベース
  • バックアップ

の、6つのサーバで構成される。そしてのこの6つのリプレイス用に6台が用意されているので、合計で12台のサーバが稼働していることになる。

サーバ正面写真
サーバ正面

具体的な実践コースの内容だが、Do Linux!のRHCE過程が終わると、研修生はパソナテック本社が入る渋谷区内のビル10階のサーバルームに集まり、最初にシステム概要の説明が行なわれる。dolinux.jpの6台のサーバがどのようなサービスを提供しており、どのようなネットワーク構成を採っているのかが説明されるわけだ。



サーバ背面写真
サーバ背面

次に、各々のクライアント環境をLinuxで構築する。サーバルームには、12台のサーバとは別に各人用のクライアントマシンが設置されているので、その環境を整えるわけだ。サーバ設定に必要なアプリケーションのインストールや、日本語環境の構築などである。Do Linux!実践コースでは、“基本的にドキュメントを残しましょう”という形になっている。dolinux.jpでは、当然資料となるテキストは用意されているが、「自分が作ったモノに価値がある」(高久氏)ということで、研修生ひとりひとりが、ドキュメントを完成させるという作業があるのだそうだ。作業の都度、メモもきちんと取る。そして、こうしたドキュメントが整理され、場合によっては一般用に公開されて技術資料となっていく。取材時は、カーネル2.4に含まれるFilewall機能を使ったセキュリティの構築が行なわれていた。



クライアントマシン
クライアントマシン

こうした、「自分の行なった作業についてメモを取る習慣」というのは、Do Linux!を受講するような技術者ばかりではなく、コンピュータを使うすべてのユーザーに対して有効と思われる。やはり時間が経つと物事を忘れてしまうものだし、こうした「自分だけの技術データベース」を作っていくのは学習のうえでも有効だろう。さらに、dolinux.jpのように、他人に技術情報を伝えたい場合は、あとで思い出してドキュメントを作るのと、ポイントだけでもメモをしておくのでは、かなり違うだろう。

高久氏によると、実践コースの中では、ドキュメント作成だけでも2日間の日程をとっているという。RHCEのコースを含め、自分のやってきたことをドキュメントとしてまとめることで、消化して身につけていくという過程なのだそうだ。

このほか実践コースの開始直後には、スケジュール作成も行なわれる。実践コースは2週間しかないから、各自の担当の振り分けが行なわれ、計画が立てられる。ちなみに、1人1ないし2台のサーバを担当する。基本的には本人の希望を考慮して担当が決められる。

こうして準備が整うと、サーバのリプレイスが行なわれる。前述したように、dolinux.jpのサーバは稼働している6台+リプレイス用の6台だ。現在稼働している6台から、新たにリプレイス用の6台にシステムを移し替えるのだ。リプレイスといっても、単なるコピーでは当然ない。システムを完全に移動するのである。

リプレイスするには、現在のシステムを把握していなければいけない。現場では前任者が構築したシステムをリプレイスすることも大いにありうる。こうした場合の擬似的な体験を、実践コースでは行なうわけだ。ドキュメント作成も、後任者のためを思えば重要な作業として位置づけられるだろう。

こうした作業を行なってから現場に入るのと、単にサーバの組み立てを行なってから現場に入るのとでは違うのだろうか? 「違うと思いますね。この実践コースは現場そのものだと思います。ただ、わからないところで立ち止まって手助けされたり、説明を付け加えられたりというところが違うだけで、その部分だけが“研修”といえる部分だと思います。実際時間もかなりハードです。朝9時半から夕方5時までが規定されている時間なのですが、いつも7時から8時頃まで作業が続きますね」(高久氏)。

しかし、ドキュメントがどんどん溜まっていけば、それだけノウハウも充実してくるわけで、あとの研修生ほど楽にならないのだろうか? 「新しい機能を追加してもらったり、そうしてどんどん複雑になっていくシステムをリプレイスしてもらうわけですから、楽になるのか辛くなるのかは分からないところですね(笑)」(高久氏)。

Linux業界はどんなところ?

ここで、少し余談ではあったが、SIとしての経験も積まれている高久氏に、現在のLinux業界やLinuxのおもしろさについて語っていただいた。

[日刊アスキー] IT不況の中で、技術者ももろに波をかぶっているんですか?
[高久氏] まったく受けていないことはないです。しかしそれはLinuxだからとか、Microsoft技術者だからでは(高久氏はWindows系技術者でもある)ありません。Linuxに関しては、IT業界全体という枠の中で“これから”という捉え方では追い風だと思います。実際にスキルを身につけていれば、Linuxは強いと思います。
[日刊アスキー] Linux技術者って、“技術者”として見ると面白い仕事なのですか?
[高久氏] 面白いですね。自分でいろいろ調べて柔軟な設定というか、利用方法を思いつけるというところが。ほかのプラットフォームですと、目的によって組み合わせる製品や使い方が決まってしまっていたり、まあそれでもさらにいろいろやろうと思えばできるのですが、それはとてもつまらない作業になってしまうのです。
[日刊アスキー] それは、たとえば何かしらのデータベースを構築しようとして、Linuxであればメーカー製のRDBMSを使う選択肢もあればフリーのものを使う選択肢もあり、さらにはRDBMSそのものを使うかどうか? といった無限の選択肢の中から自分なりに答えを出していけるということですか?
[高久氏] そうですね。そういえると思います。それから、LinuxというかUNIX系のプラットフォームでは、ドキュメントが充実している。このあたりもLinuxの大きな魅力ではないでしょうか?

就業の直前段階であるDo Linux!実践コースは、運営するサーバは現場そのものである。唯一現場と違うのは、わからない点を振り返る事ができるといった点だろう。最後に、講師の高久氏からのメッセージで、前後編でお届けした本記事を閉じさせていただく。

「“必要に応じてしらべなきゃいけないよ”という話だと思います。“実践”という意味が、実践的な内容を教えて、というイメージだと難しいですね。“実践的なものを自分でやる”という方向で捉えてもらえば、自分が何をやりたいかという理由付けになるし、そうなれば(就業しても)そのままの流れでやっていくということになると思います」。

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