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三菱電機、携帯電話用2D/3Dグラフィックスアクセラレーターを発表

2001年12月04日 19時38分更新

文● 編集部 佐々木千之

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三菱電機(株)は4日、東京・丸の内の本社で記者発表会を開催し、カラーディスプレー搭載携帯電話に向けた、2D/3Dグラフィックスアクセラレーターコア『Z3D(ゼットスリーディ) グラフィックスエンジン』を発表した。携帯電話向けグラフィックスエンジンで3Dアクセラレーション機能を搭載したものは国内で初めてとしている。

三菱電機 情報技術総合研究所、表示システム技術部長の亀山正俊氏
三菱電機 情報技術総合研究所、表示システム技術部長の亀山正俊氏

Z3D グラフィックスエンジン(以下Z3D)は、携帯電話のディスプレー機能において、パソコン同様のカラー化、マルチメディア化が進んでいることから、高画質リアルタイム3Dグラフィックス表示とさまざまな3Dアプリケーションへの対応を狙いとして開発したという。3Dグラフィックス処理能力は最大毎秒23万頂点、毎秒520万ピクセル。光源や物体からの光の反射の計算、陰影処理、テクスチャーマッピング(バイリニア補間、エラー補正機能付き)、アンチエイリアシング処理、半透明処理といった処理がハードウェアで行ない、高画質な3Dイメージを毎秒8~15コマ程度で表示可能としている。また、2Dグラフィックス処理機能として、矩形の塗りつぶし、BITBLT(矩形転送)、文字の描画をハードウェアで行なえる。

Z3D グラフィックスエンジンの3Dグラフィックスパイプラインの概要
Z3D グラフィックスエンジンの3Dグラフィックスパイプラインの概要

Z3Dの回路は30万ゲートのロジック部と2.3MbitのSRAMで構成され、0.18μmプロセス技術で製造した場合のチップ面積は約30mm2。3D機能を利用して描画している際の消費電力は約54mWとなっている。なお、Z3Dは携帯電話用LSIの機能ブロックとして提供するもので、単体のチップとして提供する予定はないとしている。

Z3Dのグラフィックス機能は、“3Dグラフィックスパイプライン”と“2Dグラフィックスエンジン”からなる。

3Dグラフィックスパイプラインはさらに、ジオメトリエンジン、レンダリングエンジン、ピクセルエンジンで構成している。Z3Dのジオメトリエンジンは浮動小数点演算器×2、整数演算器×1を搭載した専用プロセッサーで、3Dポリゴンを構成する三角形の頂点の座標変換、光強度計算、画面内に表示されない三角形を削除するクリップ処理を受け持つ。レンダリングエンジンはジオメトリエンジンが計算した三角形の頂点座標や色データをもとに三角形を塗りつぶす描画処理を行なう。また、テクスチャーマッピング処理、アンチエイリアス処理も行なう。ピクセルエンジンは、レンダリングエンジンが生成するピクセルデータと、画像イメージデータを保持しているフレームバッファー内のピクセルデータ間で演算し、隠面処理や半透明処理などを行なう。

発表会で披露されたデモンストレーション画像。ポリゴンで作られたキャラクター3人が踊っている。顔の下の陰影などが非常になめらかに表示されている発表会で披露されたデモンストレーション画像。ポリゴンで作られたキャラクター3人が踊っている。顔の下の陰影などが非常になめらかに表示されている(画面下部の虹状のノイズは撮影時のフラッシュによるもの。以下同)

これまでにも3D表示を売り物とした携帯電話があるが、それらは3Dグラフィックス処理をソフトウェアで行なっており、今回のZ3Dを利用すると、はるかに高画質の3Dグラフィックスによるアプリケーションが可能になるという。3DグラフィックスAPI(“Z3D-lib”)では、パソコンで一般的に利用されている3DグラフィックスAPIに近い汎用的な仕様となっており、パソコンで3Dアプリケーションの開発を手がけた経験のある技術者であれば、比較的容易に開発できるとしている。

デモその2。ビルが建ち並ぶ街の様子を表示している。夜の画面では街路灯の明かりも表現していたデモその2。ビルが建ち並ぶ街の様子を表示している。夜の画面では街路灯の明かりも表現していた(この画像ではアンチエイリアス処理は行なっていない)

三菱電機では、このZ3Dを搭載した携帯電話を2002年春ないし夏に発売する予定のほか、他社にも供給していきたいとしている。今後はさらなる高画質化、高性能化を図るとともに、ビデオ/カメラ画像関連の機能も加えたいという。

デモその3。アンチエイリアス処理をしたもの(上)と未処理のもの(下)の画像比較。左側の立方体にはテクスチャーが貼られている。実際にはこれらのグラフィックスは動いており、処理をしたものはジャギーはほとんど目立たなくなっていたデモその3。アンチエイリアス処理をしたもの(上)と未処理のもの(下)の画像比較。左側の立方体にはテクスチャーが貼られている。実際にはこれらのグラフィックスは動いており、処理をしたものはジャギーはほとんど目立たなくなっていた

発表会ではZ3Dを組み込んだテスト装置で、携帯電話用カラー液晶ディスプレーを使った表示デモンストレーションが行なわれたが、確かにこれまでの携帯電話ではできないような高画質の3D画像を高速で表示していた。三菱電機は(株)NTTドコモやJ-フォングループに携帯電話機を供給しており、2002年春以降にこれらの携帯電話キャリアーで3Dグラフィックスを使った新サービスやコンテンツの登場も予想される。

デモその4。中央の立方体が回転し、さらにその周りを赤、青、緑の光源が移動するというもの。床面に立方体の画像が映り込み、光源の移動とともに壁や床の色が変化していたデモその4。中央の立方体が回転し、さらにその周りを赤、青、緑の光源が移動するというもの。床面に立方体の画像が映り込み、光源の移動とともに壁や床の色が変化していた

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