茶色いパッケージに衣を変えたAthlon XP |
Palominoコアを搭載したデスクトップPC向けの「Athlon XP」がアキバに出現して早くも8週間が過ぎようとしているが、こちらのレポートでは今月初旬にAthlon XPシリーズ最高性能品となるAthlon XP 1900+がPCショップの店頭に並んだことをお伝えしている。この新風は、指をくわえて成り行きを静観していた当オーバークロック研究室にも届けられた。その姿は従来のセラミックパッケージからプラスチックパッケージに変更され、一見するだけでXPだとわかる色合いの違いやパッケージ表面に実装されていたチップパーツが、その場所をピンサイドに移してスッキリしたところが印象的だ。また、これまでの動作周波数表記を“モデルナンバー”による処理性能表記に改めたようで、実クロックに慣れ親しんでいる筆者としてはなんとも複雑な心境(複雑と言うか原稿を執筆する上で実クロック併記となると繁雑になる)だが、倍率変更の重要なカギになるL1ブリッジは継承されているようでコラム記事のページ追加が安泰であるとともに、ある意味、楽しめるプロセッサと言うことに変わりはないようだ。そこで今回は、このAthlon XPは倍率変更が可能なのか、そして可能ならどこまでオーバークロックできるかを中心に調査&チャレンジしたレポートをお届けしよう。なお、本文に入る前に上述の“モデルナンバー”を整理しておいたので文中のクロック表記の参考にしてほしい。
モデルナンバー表記 | 実クロック | FSBクロック | 倍率 |
---|---|---|---|
Athlon XP 1500+ | 1.33GHz | 133.3MHz | 10 |
Athlon XP 1600+ | 1.4GHz | 133.3MHz | 10.5 |
Athlon XP 1700+ | 1.47GHz | 133.3MHz | 11 |
Athlon XP 1800+ | 1.53GHz | 133.3MHz | 11.5 |
Athlon XP 1900+ | 1.6GHz | 133.3MHz | 12 |
Athlon XP 2000+(仮定) | 1.67GHz | 133.3MHz | 12.5 |
“モデルナンバー”についてはこちらの記事を参照のこと。
CPUの価格についてはこちらを参照。
●Athlon XPのL1ブリッジについて
倍率操作の重要なカギとなるL1ブリッジはAthlon XPでも健在だ!だ、だが… |
従来、4極であったAthlonのL1ブリッジは、先行リリースされたAthlon MPと同じくAthlon XPになってひとつ増えている。おそらく13倍速以上のパラメータ設定に対応するための処置と推察できるのだが、手にしたAthlon XP 1500+(実クロック1.33GHz)のL1ブリッジを観察してみると、ご丁寧に5本とも切断されているようだ。他のブリッジも含めてルーペで拡大して見るとL3やL4の一部のジャンパで見られるように、もともとパッケージの積層内部で全て接続されていて倍率やコア電圧など仕様に応じたパラメータ通りに表面から焼き切られたものと推察できる(ちなみに従来のAthlonではパッケージ表面上にプリントされていてカットされた部分をつなぐテクニックが色々とあみ出されただけでなく、サード・ベンダーからジャンパ・シールなるものが配布されるなど、L1ブリッジにまつわる話題は記憶に新しい)。
Athlon XP 1500+のブリッジ間接続図。積層内部では図のように結線されている。とにかく倍率操作は、切断されているL1ブリッジを何らかの方法で接続しなければ実現できない |
こんな緻密な作業はプロセッサを作り出せるメーカーにしてみればオチャノコサイサイといったところだろうか?と感心している場合ではない。切断されたブリッジを接続するための鉛筆HB作戦や導電ペイント攻撃もこれでは全く歯が立たない。というのも従来ならパッケージ表面上で切断されたラインのごく小さな溝を鉛粉などの導電物質でつなぐだけで良かったワケだが、今回はそのラインが残っていないだけでなくブリッジが切断されたパッケージ表面の該当部分は凹みのある谷となっている。改めてルーペで見るとその凹みは、まるで絶壁に挟まれた渓谷のように見えた。さらにその谷底はどうやらシールドらしき銅箔が焼け残っており、周辺にある切断されたジャンパ部分の谷底と電気的につながっている疑いが濃い。したがってこの谷間を導電ペイントで埋めてしてしまうと倍率操作どころの話ではなくなる可能性を強く感じた。ただ、唯一の救いはパッケージ表面に残るブリッジの両端の小さなドットで、テスターを使った導通チェックだと他のブリッジにしっかりと接続されていたことだ。