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ロボフェスタ神奈川2001で、中学生がロボコンを実演――ロボット作りは人も作る

2001年11月26日 03時25分更新

文● 編集部 中西祥智

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16日から横浜市・パシフィコ横浜で開催されている“ロボフェスタ神奈川2001”(ロボット創造国際競技大会中央委員会などが主催)において、中学生によるロボットコンテスト(ロボコン)の実演が24日に行なわれた。実演を行なったのは、青森県八戸市立第三中学校(八戸三中)の生徒8人。

中学生によるロボコンの実演
中学生によるロボコンの実演

手作りのロボットでさまざまな競技を行なうロボットコンテストを、“校内ロボコン”として八戸三中が全国の中学校で初めて実施したのは10年前の1991年。当時八戸三中に赴任した下山大(ゆたか)教諭が、技術・家庭科の授業の一環として導入した。それ以来、全国各地で同様の取り組みが行なわれ、現在では約2000の中学校が授業で校内ロボコンを開催している。中でも八戸三中のロボコン“三中ロボコン”は有名で、毎年教育関係者やロボット研究者が多数訪れ、「八戸名物」「中学生ロボコンのメッカ」と言われているという。

右がロボット創造国際競技大会中央委員会の森政弘会長、左が八戸市立大館中学校の下山大教諭
右がロボット創造国際競技大会中央委員会の森政弘会長、左が八戸市立大館中学校の下山大教諭

冒頭、挨拶に立ったロボット創造国際競技大会中央委員会の森政弘会長(東京工業大学名誉教授)は、「ロボットを製作する苦しくも楽しいプロセスで、生徒たちはチームワークの大切さを学び、成長する」と述べ、子供たちの教育にも役立つことを強調した。

3台のロボットが風船に殺到
3台のロボットが風船に殺到

続いて、下山教諭(現在は八戸市立大館中学校に勤務)がこれまでの取り組みについて説明した。今でこそ八戸名物と呼ばれるようになった八戸三中のロボコンも、10年前に始めた時は「剣道場で細々と開催し、観客も5人しかいなかった」という。

八戸三中のロボコンは、毎年2月に行なわれる。参加するのは、3年生と技術・家庭科を選択した2年生。製作期間は選択したカリキュラムによって違うが、2月までの約半年間でロボットを製作する。下山教諭によると、「1年生で技術・家庭科を選択した場合は、図面の引き方を習うその時からロボットの製作は始まっている」という。1チームは4人で、チーム分けはくじ引きで行なう。4人それぞれが“監督”、“マシンデザイナー”、“メカニック”、“マネージャー”の役割を担う。

受け止めた風船を、半円型の籠の中で半周させて前面に押し出すロボット
受け止めた風船を、半円型の籠の中で半周させて前面に押し出すロボット。デザインは秀逸

ロボットは、モーターやギアボックス以外は、すべて廃材などを利用した手作り。生徒が有線のリモコンで操作する。最大で5自由度の制御が可能。前年に製作したロボットも再利用し、ギアボックスもロボットの移動用に使用するもの以外は、前年のロボットのギアボックスを使うという。

競技種目は毎回異なり、2001年2月の三中ロボコンでは、ヘリウムを少量注入して落下速度を遅くした風船を使ったバレーボールを行なった。2台のロボットで1つのチームを組み、相手のコートに風船が落ちれば得点となる。競技は、前後半2分ずつの合わせて4分間。

下山教諭の説明と並行して、競技の実演が行なわれた。

『リンゴロマンスミレニアム』が、吹き出す空気の風圧で風船をチームメイトのロボットにトスする
左のロボット『リンゴロマンスミレニアム』は、回転するファンで風船を引き付け、今度はファンを逆回転して吹き出す空気の風圧で風船をチームメイトのロボットにトスする。なかなか成功しなかったが、成功した時には大きな拍手が起こった
『リンゴロマンスミレニアム』の空気吸引・噴射口
『リンゴロマンスミレニアム』の空気吸引・噴射口。ガムテープの芯のダクトに、発泡スチロールから削り出したファンを内蔵する。ダクトは前方に傾けることが可能

実演で使用したロボットは、全部で6台。生徒たちの作ったバレーロボットは、風船を大きなかごで受け止めてうちわでたたき出すものや、回転するローラーで押し出すもの、エレベーターのような構造で床近くで風船を受け止め、持ち上げてネット越しに落とすものなど、さまざまな方法で風船を相手コートに押し込んだ。

中には、回転するファンで風船を吸引して引き付け、逆回転するファンの風圧で吹き上げるトス専用ロボットや、同じく風圧で吹き上げた風船を手の平型の器具でアタックするロボットもあった。ヘリウム入りの風船の滞空時間は長く、床に落ちるまでに下に入ってすくい取りやすい反面、一端受け止めても、ロボットの移動について来られずに落ちてしまうことも多かった。

手の平のような器具でアタックするロボット
下の籠で受け止めた風船を回転するファンの風圧で吹き上げ、手の平のような器具でアタックするロボット。なかなかうまく当たらないが、非常にユニーク

下山教諭によると、三中ロボコンを始めた当初は、勝ち負けを優先してロボットの個性や面白さが、あまりなかったという。そこで、競技内容などを工夫して、各チームの個性が発揮できるようにした。三中ロボコンには優勝のほかに、アイデア賞やアイデア倒れ賞もある。

そのようなアイデアをチーム全員で出し合い、共同してロボットを作る中で、もの作りと共に人も作られるということを、森会長は何度も強調した。三中ロボコンに参加した生徒の感想文には、観客に「ロボコンは、ロボットだけではなく、自分たちの心を作ったのではないですか?」と言われて納得した、という一文があるという。

受け止めた風船を網状の板で前方に弾き飛ばすロボット『マシンガンの雨あられ』受け止めた風船を網状の板で前方に弾き飛ばすロボット『マシンガンの雨あられ』。風船は真っ直ぐには飛んでくれない

なお、そういった生徒たちの感想文を森会長がまとめた“こころの名言集”が、ロボット創造国際競技大会中央委員会のウェブサイトに掲載されている。

実演を行なった八戸三中の生徒の皆さん
実演を行なった八戸三中の生徒の皆さん。受験勉強中にロボット作りは大変ではないかと思うのだが、「息抜きになってちょうどいい」のだそうだ

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