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高校生にも、情報モラルと著作権の尊重を――ACCS、“出張授業”を開催

2001年11月19日 20時29分更新

文● 編集部 田口敏之

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(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS:アックス)内の委員会“学校教育における情報モラル推進委員会”は15日、東京都北区にある総合高校・都立桐ヶ丘高校の1年生19名を(株)ジャストシステムの東京支社に招き、“出張授業”を開催した。同委員会が出張授業を行なうのは、今回で4回目となる。

桐ヶ丘高校は、生徒が自らカリキュラムを選択して単位を取得するという、定時制の総合高校(※1)。学年という概念がなく、必要な単位を取得して4年間で卒業することになっているが、1年次の必修科目として、社会の仕組みなどについて会社見学などを通して学ぶ授業“産業社会と人間”がある。今回の出張授業はこの授業の一環として行なわれたもの。なお、同授業で訪れる会社や工場などは、生徒自身の興味や関心によって選択できるようになっており、今回ジャストシステムを訪れた19名も、それぞれコンピューターやIT、情報産業などに興味がある生徒たちという。

※1 現時点(2001年10月)で、総合高校は全国に163校、東京都内に4校あるのみとなっている。都立桐ヶ丘高校は、昨年開校した。

内容は、ジャストシステムの会社案内と設立経緯についての説明、社内見学、ジャストシステム文教担当者による講義、そしてACCSの担当者による著作権に関する講義というもので、途中休憩を挟んで、合計約2時間半の授業となった。

見学中の様子
見学中の様子。ここは開発室。「プログラマーの人たちは想像していた通りだった」という声もあった

ジャストシステムの会社案内や社内見学の時間において、同社広報IR室課長の澤崎氏が生徒たちに「ジャストシステムで作っているものを知っている?」と尋ねたところ、即座に「ATOK」や「一太郎」という答えが返ってきた。しかし、同社の本社が徳島にあることや、代表取締役社長の浮川和宣氏と代表取締役専務の浮川初子氏の夫婦2人で創業し、今も浮川初子氏がソフトウェア開発の長であることなどを話すと、生徒の間からは「そうだったんだ」「知らなかった」という感心の声も上がった。澤崎氏は「ソフトウェアの開発は知恵が勝負。男女の別は関係なく、積極的にチャレンジして努力した人が成功する。けれども、不正コピーなどがあったりすると、いくら一生懸命やっても、その成果はゼロになってしまう」と語った。

講義を行なう村岡明氏
講義を行なう、ジャストシステムビジネス企画室の村岡明氏。「聞く、聴く、訊くが大切だ」

また同社ビジネス企画室の村岡明氏は、“企画というお仕事”と題して、会社活動の目的と遂行のために何が必要なのか、どのような考え方が必要なのかについて講義した。氏は「企画という仕事はピンとこないかも知れないけど、学校の中にも企画はある。たとえば修学旅行の企画・計画は何のために立てる? 良い旅行にするためだ。商品企画は、作るものを良い商品にするために立てる。会社は世の中の役に立つものを作って、お金を貰わなければならないから、“WinWin”でいかなくてはならない」と述べ、そのためには人の話をよく聞いて、それをうのみにしないことや、思いは伝わらないということを前提に人にものを伝えるようにすること、また今まで考えてきたことを全部否定することなどが必要であると語った。また、氏は「会社においては、“がんばった”だけでは駄目。かならず結果を求められるし、その結果を出すための努力が必要。常に周囲に対する意識と思考を持ってほしい」と述べて講義を締めくくった。

本物と偽物の見比べ方について、実際にディズニーのキャラクターを盗用したTシャツを使って学ぶ
本物と偽物の見比べ方について、実際にディズニーのキャラクターを盗用したTシャツを使って学んだ

最後に、“著作権とは?”と題してACCS事業部次長の三橋信司氏の講義が行なわれ、著作権についてのビデオを鑑賞し、知的所有権の歴史から、なぜそれが守られなければならないのかについてを学んだ。氏は「たとえば“一太郎”はソフトウェアであり、皆が今日見てきたように、多くの人が関わり合って作っている。しかし不正コピーや海賊版などという事態が起こると、ソフトウェアに関わった人々は正当な対価を得ることができない。もしかしたら、それが原因で会社が潰れてしまうかも知れない。それで損をするのが誰かというと、結局不正コピーをしていた人も含めて、世の中全体が損をすることになる」と語り、安いからとかタダだから良いということでは決してなく、著作権があろうとなかろうと、作り手を尊重しなければならないということを訴えた。さらに偽物や海賊版に手を出さないために、本物を見極める方法について実例を交えて説明した。

授業が終わった後、生徒に話を聞いてみたところ、「普段使っているソフトにも、その向こう側には作っている人たちがいるということが実感できた。1つのものに、いろいろな人が関わり合っているというのは重みのあることだと思った」という声や、「これからコピーをするとかそういう話が出たら、それはいけない事だと止めようと思う」という声が聞かれた。また「確かに人々の意識に訴えることも必要だとは思うが、コピープロテクトの技術も必要。そういう話をもっと聞いてみたかった」という声もあった。

ACCS“学校教育における情報モラル推進委員会”は、このような出張授業を、今後も行なっていく予定。小学校・中学校・高校と、若年層の著作権保護意識を中心とした、情報モラルに対する意識向上を目的として活動してゆくという。また同委員会が運営する、教育現場への広報・情報提供を行なうウェブサイト“まなびば”において、出張授業の開催校を募集している。

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