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IIJ、オラクル、シスコなど8社、ブロードバンドコンテンツ配信システムを稼働

2001年11月14日 22時49分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)、日本オラクル(株)、シスコシステムズ(株)、イーエムシー ジャパン(株)(EMC)、伊藤忠テクノサイエンス(株)(CTC)、サン・マイクロシステムズ(株)、ソニーコミュニケーションネットワーク(株)(So-net)、日本ヒューレット・パッカード(株)(日本HP)の8社による共同プロジェクト推進組織“CDN JAPAN(シーディーエヌ ジャパン)”は13日、都内で記者発表会を開き、同日午後1時にブロードバンドコンテンツ配信システム“CDN-Jプラットフォーム”が正式に稼働を開始したと発表した。

(左から)IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏、日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏、シスコシステムズ代表取締役社長の黒澤保樹氏が出席した(3社はCDN JAPAN幹事会社)
(左から)IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏、日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏、シスコシステムズ代表取締役社長の黒澤保樹氏が出席した(3社はCDN JAPAN幹事会社)

今回のシステムの稼働は、CDN-Jプラットフォームの完成と、多くのコンテンツプロバイダーの参加(※1)を得たことによる、有料コンテンツ配信の事業化に向けた実証実験という位置づけ。IIJのCATV向けネットワークインフラを利用するCATV14局のユーザーと、ISP“So-net”および“IIJ4U”のADSL/光ファイバー回線ユーザーの、約25万人を対象として、“Real Media”または“Windows Media”形式によるストリーミング動画(300kbpsおよび1Mbps)を100~150コンテンツ常時提供する。コンテンツはエンターテイメント中心で、約30のコンテンツは毎月更新する予定。当初は無償コンテンツのみだが、2002年1月からは有償コンテンツの配信も行なう。実験期間は2002年3月末日まで。

※1 実証実験によるビジネス検証/コンテンツ配信参加企業は、飛鳥映像(株)、(株)イマジカ、(株)インターネットテレビジョン、エム・ティー・ヴィー・ジャパン(株)、ジェイ・スカイ・スポーツ(株)、(株)小学館プロダクション、(株)昭文社、(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、(株)ステップ映像、ソニーコミュニケーションネットワーク(株)、(株)第一興商、(株)宝島ワンダーネット、(株)つくばテレビ、D's garage(全国朝日放送(株))、(株)テレサーチ、凸版印刷(株)、日活(株)、ぴあデジタルコミュニケーションズ(株)、(株)読売新聞社、リアルネットワークス(株)。

CDN JAPANは、ブロードバンドネットワーク時代におけるデジタルコンテンツ配信システムと、それを使ったビジネスモデルの検証を目的として、3月に設立した非営利の任意団体。設立以来、コンテンツ配信システムの検証を行なってきたが、認証、課金、決済、不正利用の防止などのデジタルコンテンツ管理機能を備えたCDN-Jプラットフォームが完成し、また、多くのコンテンツプロバイダーの参加を得たことから、有料コンテンツ配信の事業化に向けた実証実験を行なうことにしたとしている。

IIJ取締役、マーケティング本部副本部長の保条英司氏
IIJ取締役、マーケティング本部副本部長の保条英司氏

発表会でCDN-Jプラットフォームの概要について説明した、IIJ取締役でマーケティング本部副本部長の保条英司氏によると「これまでにもブロードバンドコンテンツ配信システムというものはあったが、CDN-Jプラットフォームのようにコンテンツ管理システム(ソフト、ハード、サービス)と、キャッシュシステムを備えた配信ネットワークを統合したものはこれが初めて。さらにCDN JAPANでは実証実験のためにコンテンツ配信サイトまでも構築した」という。そうして「これを使って配送網、サーバーおよびプラットフォーム自身の評価、ブロードバンドビジネスの検証を行なう。さらにブロードバンド市場の啓蒙になればと考えている」としている。

CDN-Jプラットフォームのネットワーク概要
CDN-Jプラットフォームのネットワーク概要

CDN-Jプラットフォームのシステム開発にあたっては、コンテンツホルダー各社から出された、コンテンツの不正利用、配信品質、ネットワークの可用性、コンテンツ管理システムなどに関して疑問や懸念を解決したという。特にコンテンツホルダーが最も気にするというコンテンツの不正利用に関しては、コンテンツIDフォーラム(※2)の“コンテンツID(cID)”と、最新のDRM(Digital Rights Management)技術を利用する。CDN-Jプラットフォームで配信するコンテンツはすべて暗号化されており、視聴するためには、IIJのiDC(Internet Data Center)においた認証サーバーによる個人認証を受けて、ライセンス(暗号解除コード)を受け取る仕組みになっている。認証サーバーはユーザーの性別、年齢層、職業、居住地域、加入ネットワークといったプロファイルデータベースを持っており“東京に住むユーザーだけに、2回に限って視聴してよい”といったポリシーに従った配信が可能という。

※2 コンテンツIDフォーラム(cIDf):市場で流通するデジタルコンテンツ(静止画/動画/音楽データなど)に対し、独自のIDコード“コンテンツID”を電子透かしなどで埋め込み、それによって著作権管理と流通のフレームワーク策定を目指す団体。日本の産学協同プロジェクトにより設立。

CDN-Jプラットフォームの管理システム
CDN-Jプラットフォームの管理システム

また、コンテンツをユーザーのパソコンまでスムーズに配信するためには、単にネットワークが太いだけではだめだとし、各CATV局やISPにコンテンツのキャッシュサーバーを設置し、コンテンツはそのサーバーに事前配信しておくシステムを採用したという。

コンテンツを視聴しようとすると、まずログインウインドウ(左上)からログインする必要がある
コンテンツを視聴しようとすると、まずログインウインドウ(左上)からログインする必要がある

ユーザー情報やコンテンツの許諾条件情報、ライセンス発行ログ、コンテンツ管理データなどはオラクルの『Oracle 9i』を使ったシステムで管理しており、コンテンツプロバイダーがコンテンツの利用状況をさまざまな角度から細かく分析できるとしている。これまでの、放送に対する視聴率調査などでは不可能だった詳細な追跡も可能であり、新たなマーケティングビジネスの可能性もあるとしている。

コンテンツの利用状況表示画面。どの種類のコンテンツが何時くらいにどれだけ見られているかといった分析が可能
コンテンツの利用状況表示画面。どの種類のコンテンツが何時くらいにどれだけ見られているかといった分析が可能

CDN JAPANでは、CDN-Jプラットフォームの実証実験によって、システムの問題点の洗い出しと改良、コンテンツ配信ビジネスモデルの検証を行ない、2002年4月以降にコンテンツ配信ビジネスの本格的開始を期待するとしている。

CATVインターネット局やISPに設置される、シスコ製のコンテンツキャッシュシステム
CATVインターネット局やISPに設置される、シスコ製のコンテンツキャッシュシステム

ADSLや光ファイバーによるブロードバンドサービスの価格低下により、家庭でブロードバンドコンテンツを視聴する下地はできてきたと言える。しかし、高画質の画像コンテンツをインターネットでスムーズに配信することはまだ難しく、また、不正な視聴を確実に防ぐシステムが出てこなければ、良質なコンテンツは提供されないという見方がある。今回、IIJやシスコ、サン、オラクルなどIT各分野のトップ企業が協力してこのようなシステムの運用を開始したことは、ブロードバンドコンテンツサービス普及への大きな一歩と言える。CDN JAPAN以外にも、ブロードバンドコンテンツの実験を行なっている企業はいくつもあり、それらも2002年春をめどにしているものが多い。2002年春、日本に本格的なブロードバンドコンテンツ時代がやってくるかもしれない。

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