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松下電器、映画/CM撮影向け720p対応デジタルビデオカメラを発表

2001年11月06日 21時06分更新

文● 編集部 佐々木千之

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松下電器産業(株)は5日、都内で記者説明会を開催し、撮影コマ数可変機能や、映画フィルム並みの階調再現域(ラチチュード)をビデオで可能にする“シネガンマ”機能を備えた業務用デジタルビデオカメラ『“Varicam(バリカム)” AJ-HDC27F』を発表した。価格は740万円(本体のみ)で、2002年2月1日発売予定。同社はこの製品によって、映画やCM撮影など、デジタルシネマ事業に本格的に取り組むとしている。

『“Varicam(バリカム)” AJ-HDC27F』
『“Varicam(バリカム)” AJ-HDC27F』。14日に開幕する国際放送機器展“InterBEE2001”に出展する予定

Varicam AJ-HDC27Fは、放送用HDデジタルVTR『DVCPRO HD』シリーズ(※1)の新製品で、1秒に4~60コマの間で撮影コマ数を設定する“バリアブルフレームレート”機能、映画フィルムに近い階調表現をビデオで可能にする“シネガンマ”機能、映画カメラ用の“35mm ウルトラプライムレンズ”(※2)に対応したことが特徴。特にバリアブルフレームレート機能とウルトラプライムレンズ対応については、ビデオカメラとして世界初だとしている。

カメラの撮像素子は3分の2インチの100万画素CCDを3枚使用し、映像S/N比54dB、水平解像度は700本、感度はF12(2000lux)。画像の設定を数値で管理し、SDカードにデータを保存できる。

※1 DVCPRO HDは、4分の1インチ幅の小型テープに、HDデジタル映像信号(有効走査線1080本のインターレース(1080i)、有効走査線720本のプログレッシブ(720p))と、16bitの8chデジタル音声を記録する、放送用デジタルVTR規格。カセットテープにSPモードで46分、LPモードで92分の記録が可能。記録データレートは毎秒100Mbit。

※2 映画撮影機材メーカーであるドイツのArnold & Richter(ARRI)グループと、レンズメーカーであるドイツのカール ツァイス社が共同開発した映画カメラ用レンズ。ウルトラプライムレンズはツァイスの商標。AJ-HDC27Fに装着する際にはフランスのAngenieux(アンジェニュー)社とツァイスが共同開発したAngenieux製のアダプターを使用する。

松下電器の説明によると、秒間の撮影コマ数を変更できることによって、映画カメラマンがフィルムでの映画撮影で使ってきた技法が利用できる。通常の映画は秒24コマで撮影/再生するため、2.5分の1倍速~6倍速の撮影が可能となる。松下電器はAJ-HDC27Fに先だって、バリアブルフレームレート機能のみでシネガンマ機能を持たない製品を、米国ハリウッドの映像関連制作会社におよそ100台を納めているが、この機能について非常に高い評価を得ているという。

シネガンマ機能の開発では、阪本善尚撮影監督、東映化学工業(株)、富士写真フイルム(株)、(株)ナックイメージテクノロジーの協力を得たという
シネガンマ機能の開発では、阪本善尚撮影監督、東映化学工業(株)、富士写真フイルム(株)、(株)ナックイメージテクノロジーの協力を得たという

またシネガンマは、フィルムが持っているラチチュード(階調再現域)の広さを、CCDビデオカメラで得るためのガンマカーブ(※3)の設定で、ビデオ用と比較して約5倍の階調表現域になるとしている。

※3 デジタル映像においては、輝度レベルをデータに非線形に割り当てる。この変換のための非線形のカーブをガンマカーブと呼ぶ。

シネガンマ機能による、階調表現域の違い。窓の外の橋の見え方がはっきり異なる。また、この画像では分かりにくいが、暗部になっている手前の人物についても、きちんと表現していた
シネガンマ機能による、階調表現域の違い。窓の外の橋の見え方がはっきり異なる。また、この画像では分かりにくいが、暗部になっている手前の人物についても、きちんと表現していた
(左から)システムAVビジネスユニット長田中誠一氏、AVC社の山本克彦副社長、AVC社技監小林正明氏
(左から)システムAVビジネスユニット長田中誠一氏、AVC社の山本克彦副社長、AVC社技監小林正明氏

松下電器産業AVC社の山本克彦副社長によると、720pのデジタルビデオカメラは、ソニー(株)が映画産業向けに投入している1080pのデジタルビデオカメラ(※4)に比較して、撮影のトータルコストで6割程度と安く済むことから、比較的制作費用が抑えられた映画や、CM、高画質なドラマといった大きな市場があるという。同社では720pデジタルビデオカメラを核として、米国に技術開発部門とテレシネ・DVDオーサリング会社、日本に研究開発部門、デジタルビデオカメラ/DLPプロジェクター商品開発部門、制作会社、ポストプロダクション会社を発足させるており、デジタルシネマ関連部門として、大きな事業に育てていく方針。「撮影から再生までをトータルに提供できる」(山本副社長)としている。なお、今回発表したAJ-HDC27Fは、2002年の夏公開を目指して11月中旬に撮影を開始する東映(株)の『突入せよ!! あさま山荘事件』の撮影機材としての採用が決まっている。

※4 映画『スターウォーズ エピソードII』“Attack of the Clones”で、ソニー製の1080pのデジタルビデオカメラが撮影に使用されることになっている。

松下電器産業のデジタルシネマ関連部門
松下電器産業のデジタルシネマ関連部門

一般的なテレビ放送機材では480pが主流となっており、松下電器では、それより上のクオリティー撮影が要求される、一部のドラマやCM、映画の標準撮影フォーマットとして720pを推進し、同社の撮影機材のデファクトスタンダード化を狙う構えだ。

8月に発表した、映画上映向けのDLP方式プロジェクター『TH-D9610J』
8月に発表した、映画上映向けのDLP方式プロジェクター『TH-D9610J』

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