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「Windows XPは爆発的には売れないだろう」――ケビン・ロリンズ米デルコンピュータ社長兼COO来日

2001年10月30日 03時46分更新

文● 編集部 中西祥智

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米デルコンピュータ社のケビン・ロリンズ(Kevin Rollins)社長兼COOが29日、来日して記者会見を行なった。今回の来日は、第3四半期の業績について日本法人と話し合うことと、第3回日経フォーラム“世界経営者会議”(日本経済新聞社主催)に出席することが目的。

中央がケビン・ロリンズ社長兼COO
中央がケビン・ロリンズ社長兼COO、右が浜田宏デルコンピュータ(株)代表取締役社長

ロリンズ氏はまず、現在のパソコン業界の動向と、デルの業績について説明した。現在の米国の景気は厳しく、9月11日の米国の同時多発テロ事件、そして米国のアフガニスタンへの軍事作戦が、それに追い討ちをかけている。GDPのうちIT関連部門の支出は、常に上昇を続けて来たが、現在はこちらも冷え込んでいるという。

IT関連部門の支出
米国のGDP中の、IT関連部門の支出

しかし、ロリンズ氏は「2002年の春か夏ごろには上向く」と予測している。その根拠として同氏は、3年ごとの買い替え時期にあたること、特に2000年問題の前の、駆け込み需要の買い替えが集中すること、そしてWindows XPを挙げた。

だが、そのWindows XPについて、ロリンズ氏は「爆発的な需要はない」と考えている。ユーザーインターフェースが大きく変わったという点ではWindows 95の発売時に似ており、コンシューマーは導入するだろう。しかし、すでにWindows 2000を導入している企業ユーザーは急いで導入することはなく、評価テストをしたあと、ハードの買い替えに合わせて導入することになる。

ケビン・ロリンズ社長兼COO
ケビン・ロリンズ社長兼COO

しかし、デルの業績は、パソコン業界全体の動向に関わらず、「成長期でも下降期でも関係なく」上昇するという。ロリンズ氏の示した米IDCの市場調査によると、2001年第1四半期に、デルは米コンパックコンピュータ社を抜いて、パソコンの世界市場シェアのトップに立った。企業向け市場でも堅調で、40%のシェアを得ている。日本市場でも、第2四半期には市場シェア第3位になった。また、売り上げ全体に占めるDTC(デル・テクノロジー・コンサルティング)などのサービス事業の割合は14%になり、しかもハードの売り上げの倍のペースで伸びているという。

また、ロリンズ氏は、23日に発表した米EMC社とのストレージ分野における提携についても説明した。デルとEMCは、EMCのストレージ“CLARiiON(日本ではClarix)”を共同のブランドとし、両社が共同で製品開発を行なう。この提携は、今後5年間で数十億ドルの規模になるという。また、日本でも12月をめどに、準備が整い次第共同での製品の販売を開始するという。

世界市場シェア推移
世界市場シェア推移。2000年第1四半期に、コンパックを抜いてトップに立った

以下、報道陣との1問1答。

[報道陣] ニューヨークでのテロへの対応は?
[ロリンズ氏] 9月11日の事件の後、すぐに専属のチームを立ち上げ、被害を受けた顧客にこちらから対応した。ダイレクトモデルによって、影響がすぐに分かるため、迅速に緊急対応プランを実行できた。顧客を効率よく支援でき、大変なときに頼れる、本当のパートナーになれたと思う。
[報道陣] 今後の状況によっては、部品が納入されなくなる危険性もある。短期的に在庫を積み増すことは考えていないのか?
[ロリンズ氏] 現在の在庫は4日間。アメリカの工場の場合、9月11日でもそうで、週末までの分だった。しかし、翌週月曜日に空路が再開したので、部品を空輸でき、継続して製造が行なえた。ヨーロッパ、中国、マレーシアには、まったく影響はなかった。(もしアメリカでの製造が困難になっても)製造を一部、海外に移行して完成品を空輸することで、納品に影響は出ない。世界の複数の地域に拠点を置いているため、どこかの地域に短期的に影響が出ても、供給体制を維持できる。
米国の法人市場のシェア推移
米国の法人市場のシェア推移。1999年第1四半期に、コンパックを抜いてトップに
[報道陣] 販売管理費が10%を切っているが、どのようなノウハウが?
[ロリンズ氏] インターネットの利用が大きい。まず、大企業からコンシューマーまでをサポートする販売サイト。特にコンシューマーでは、70%がインターネットで購入している。次に、社内業務での活用。給与関係や考査、財務、、需要予測など、さまざまなレポートの配布や管理を、すべてインターネットを介して行なっている。最後に、サプライヤーとの関係。“dell.com”のバリューチェーンによって、サプライヤーはオーダー前に準備したり、売れ筋を理解したりできる。デルの製造プロセスとサプライヤーのそれとをうまく合理化することで、在庫を4日間にできる。
[報道陣] 米ゲートウェイ社は日本から撤退したが? またそれはデルにとってプラスになるか?
[ロリンズ氏] 我々はゲートウェイとは正反対だ。ゲートウェイは米国以外から撤退したが、我々は日本や中国、南米、ヨーロッパなど、アメリカ以外で急速に成長している。日本のように製品やサービスへの要求が厳しい市場では、一部の競合が撤退しても、それほど大きなプラスにはならない。
淡々と、しかし驚くほど強気な発言をするロリンズ氏
淡々と、しかし驚くほど強気な発言をするロリンズ氏

会見でのロリンズ氏の口調は穏やかで、決して力説することなく、淡々と説明し、質問に答えた。だが、語っている内容は、この不況下にあって驚くほど強気だ。パソコン業界全体が不況にあえいでも、デルだけは成長を続けるということを宣言している。

これが実績のない新興ベンチャー企業の経営者の発言なら、何の重みもなく、胡散臭くすら聞こえるかもしれない。だが、現実に市場シェアNo.1を独走している企業のトップの言葉だけに、「そうなのか」と素直に信じてしまいそうな説得力があった。その説得力のせいではないが、デルの独走は当分続くという印象を強く持った。

“デル・モデル”は、不況であっても好況でも、等しく効果を発揮する
“デル・モデル”は、不況であっても好況でも、等しく効果を発揮するという

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