米デルコンピュータ社のケビン・ロリンズ(Kevin Rollins)社長兼COOが29日、来日して記者会見を行なった。今回の来日は、第3四半期の業績について日本法人と話し合うことと、第3回日経フォーラム“世界経営者会議”(日本経済新聞社主催)に出席することが目的。
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中央がケビン・ロリンズ社長兼COO、右が浜田宏デルコンピュータ(株)代表取締役社長 |
ロリンズ氏はまず、現在のパソコン業界の動向と、デルの業績について説明した。現在の米国の景気は厳しく、9月11日の米国の同時多発テロ事件、そして米国のアフガニスタンへの軍事作戦が、それに追い討ちをかけている。GDPのうちIT関連部門の支出は、常に上昇を続けて来たが、現在はこちらも冷え込んでいるという。
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米国のGDP中の、IT関連部門の支出 |
しかし、ロリンズ氏は「2002年の春か夏ごろには上向く」と予測している。その根拠として同氏は、3年ごとの買い替え時期にあたること、特に2000年問題の前の、駆け込み需要の買い替えが集中すること、そしてWindows XPを挙げた。
だが、そのWindows XPについて、ロリンズ氏は「爆発的な需要はない」と考えている。ユーザーインターフェースが大きく変わったという点ではWindows 95の発売時に似ており、コンシューマーは導入するだろう。しかし、すでにWindows 2000を導入している企業ユーザーは急いで導入することはなく、評価テストをしたあと、ハードの買い替えに合わせて導入することになる。
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ケビン・ロリンズ社長兼COO |
しかし、デルの業績は、パソコン業界全体の動向に関わらず、「成長期でも下降期でも関係なく」上昇するという。ロリンズ氏の示した米IDCの市場調査によると、2001年第1四半期に、デルは米コンパックコンピュータ社を抜いて、パソコンの世界市場シェアのトップに立った。企業向け市場でも堅調で、40%のシェアを得ている。日本市場でも、第2四半期には市場シェア第3位になった。また、売り上げ全体に占めるDTC(デル・テクノロジー・コンサルティング)などのサービス事業の割合は14%になり、しかもハードの売り上げの倍のペースで伸びているという。
また、ロリンズ氏は、23日に発表した米EMC社とのストレージ分野における提携についても説明した。デルとEMCは、EMCのストレージ“CLARiiON(日本ではClarix)”を共同のブランドとし、両社が共同で製品開発を行なう。この提携は、今後5年間で数十億ドルの規模になるという。また、日本でも12月をめどに、準備が整い次第共同での製品の販売を開始するという。
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世界市場シェア推移。2000年第1四半期に、コンパックを抜いてトップに立った |
以下、報道陣との1問1答。
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米国の法人市場のシェア推移。1999年第1四半期に、コンパックを抜いてトップに |
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淡々と、しかし驚くほど強気な発言をするロリンズ氏 |
会見でのロリンズ氏の口調は穏やかで、決して力説することなく、淡々と説明し、質問に答えた。だが、語っている内容は、この不況下にあって驚くほど強気だ。パソコン業界全体が不況にあえいでも、デルだけは成長を続けるということを宣言している。
これが実績のない新興ベンチャー企業の経営者の発言なら、何の重みもなく、胡散臭くすら聞こえるかもしれない。だが、現実に市場シェアNo.1を独走している企業のトップの言葉だけに、「そうなのか」と素直に信じてしまいそうな説得力があった。その説得力のせいではないが、デルの独走は当分続くという印象を強く持った。
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“デル・モデル”は、不況であっても好況でも、等しく効果を発揮するという |
