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【PDC 2001レポート Vol.2】ロサンゼルスで“HailStorm”発生中?

2001年10月26日 08時32分更新

文● 塩田紳二

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PDC 2001の話題の1つは、“HailStorm(ヘイルストーム)”の仕様である。HailStormは正式な名称として“.NET My Services”となった。HailStormは雹(ひょう)が大降りすることである。雹は積乱雲から振ってくる氷塊のことで、大きなものは鶏卵ぐらいになるという。

実際、ゴルフボール大の雹が降り、車のフロントグラスが割れ、天井もボコボコになったという話もある。単なる“雹が降る”ではなくStorm=嵐になっているので、かなり激しく降るというイメージなのだろう。このコードネームから、業界では“なにか恐ろしいもの”というイメージが定着しているようだ(確かになんか痛そうなイメージのコードネームである)。しかし、その正式名称が“My Services”となんだか、“マイ”ブームの延長にあるような名前。これで少しは、怖いイメージがなくなるのかも。

マイクロソフトによれば、.NET My Servicesとは,ユーザーの使うさまざまな機器をウェブサービスで結びつけるときに利用されるものであるという
マイクロソフトによれば、.NET My Servicesとは,ユーザーの使うさまざまな機器をウェブサービスで結びつけるときに利用されるものであるという

さて、この.NET My Servicesだが、簡単にいうと.NETによるウェブサービスを利用する場合の、ユーザー認証やシングルサインオン、各種ユーザー情報の管理などを行なうもの。

さまざまな商用ウェブサービスでは、誰がアクセスしているのかを管理するために、ユーザー認証が行なわれるのが一般的。これをマイクロソフトが運営する“.NET Passport”を使って認証を行なわせ、商用サービス側は、認証を行なわずに済ませられるようにするというのが1つの機能。認証のための情報を集中管理することで、1回どこかのウェブサービスにログインしたら、一定期間内はほかのサイトに移っても、そのたびにログイン/サインオンをする必要がなくなる“シングルサインオン”という機能も実現できる。

サードパーティーのサイトをアクセスするとき、マイクロソフトのPassportサービスを使ってユーザー認証が行なえる。逆に、サードパーティーが個人情報を管理している場合でも、同様の仕組みを使って、Passportサービスで認証を受けることで,個人情報を利用できるようになる
サードパーティーのサイトをアクセスするとき、マイクロソフトのPassportサービスを使ってユーザー認証が行なえる。逆に、サードパーティーが個人情報を管理している場合でも、同様の仕組みを使って、Passportサービスで認証を受けることで,個人情報を利用できるようになる

もう1つは、ユーザー個人個人の情報を管理し、認証が行なわれたら、必要に応じてそれらの情報を参照するという機能。例えば、いまではどのオンラインショップも、ユーザーに会員登録させ、そのときにクレジットカード番号なども合わせて登録させている。こうした情報も.NET My Servicesが一括管理し、ユーザーがオンラインショップを使っているときに、サイト側は.NET My Servicesを通して、クレジットカード番号などの課金情報を受け取るようにするというのである。これはかつては“Microsoft Wallet”などと呼ばれていた機能だが、.NET My Servicesに統合されたわけである。このほか、住所や予定表、コンタクトリストなどの情報をXMLで記述することで、.NET My Servicesはいろいろな情報提供サービスを行なえる、というわけだ。

Windows XP+IE6を使った場合の.NET Passportによる認証。最初にユーザーがローカルマシンにログインした時点でPassportによる認証が行なわれ(図の0。以下同様)、サイトにアクセスする(1)と、Challengeと呼ばれるデータが送られてくる(2)。これを使ってPassportからサイトアクセスのためのチケットをもらい(3)、それをcookieで相手サイトに送る(4)ことでユーザー認証が行なわれ
Windows XP+IE6を使った場合の.NET Passportによる認証。最初にユーザーがローカルマシンにログインした時点でPassportによる認証が行なわれ(図の0。以下同様)、サイトにアクセスする(1)と、Challengeと呼ばれるデータが送られてくる(2)。これを使ってPassportからサイトアクセスのためのチケットをもらい(3)、それをcookieで相手サイトに送る(4)ことでユーザー認証が行なわれる

この手のコンファレンスは、レジストレーションの際にいろいろな資料の入ったカバンをくれるのだが、今回は、カバンの中に分厚い(500ページ以上ある)『.NET My Services Specification』という本が入っていた(もちろんMicrosoft Pressの本である)。行なわれるセッションも、このMy Services関係が多いのだが、まだその名前よりもHailStormのほうが有名なのか、いちいち“.NET My Services(formerly codenamed HailStorm)”と注が書いてある。

23日は、ビル・ゲイツ(Bill Gates)会長のキーノートスピーチに続いて、General Sessionとしてこの.NET My Servicesの話があった。それによるとMy Servicesとは、ユーザーの利用するパソコンやPDA、携帯電話などのさまざまな機器をウェブサービスでうまくつなげて利用するためのものであるという。つまり、My Servicesが提供する情報管理機能を使うことで、どこかの機器で入力したり受け取った情報を、ほかの機器でも利用できるようになるということだ。例えば、スケジュールを.NET My Calendarで管理すれば、デスクトップでもPDAでも、携帯電話(もちろんウェブサービスを利用できるものである必要があるが)でもスケジュールを参照できるようになるし、また、飛行機のチケットを買えば、そのフライトが自動的にスケジュールに登録されるなんてこともできるわけだ。

マイクロソフトが開発中のStingerの試作品。ちゃんと動作するもの。ケースが透明なことから、匡体デザインや基板の配置を確認するためのもので、かなりのレベルまで、できあがっているようである
マイクロソフトが開発中のStingerの試作品。ちゃんと動作するもの。ケースが透明なことから、匡体デザインや基板の配置を確認するためのもので、かなりのレベルまで、できあがっているようである

それから今回、My Servicesに含まれる機能として“.NET Alarts”というサービスのSDKのプレビューも行なわれる。これは、さまざまな通知メッセージを表示させるもので、ユーザーが指定した場合のみに通知が行なわれるもの。例えば、株価が指定した値になったとか、参加しているオークションの金額が想定金額を超えたとか、落札した、なんてときに通知させるもの。

HailStormは、マイクロソフトがユーザー情報を一括で管理することが問題視されていたのだが、今回のPDCでは、HailStormのユーザー向けサービス機能を前面に打ち出し、ユーザー認証などについては、それを実現するための技術と、後ろに持ってきた表現をしている。名前の変更といい、やはり世論には気をつかっているようである。

さて、パソコン以外の機器で使うには.NET Frameworkはちと仕様が大きすぎるのと、PDAや携帯電話は画面サイズが小さいという問題がある。これらに対応するのが“Compact Framework”である。また、こうした機器向けのソフトウェア開発に使うのが“Smart Device Extensions for Visual Studio .NET”である。こちらは“Visual Studio .NET”の拡張という形になっていて、Pocket PCなどについてはパソコン上のエミュレーターで動作を確認できるようになっている。24日のジェネラルセッションでは、Pocket PCでのデモに加え、マイクロソフトが開発中のスマート携帯電話“Stinger”のデモも行なわれた。

非PC関連のOSと開発ツールのスケジュール。今年12月にはWindows CEを採用した自動車が登場し、組み込み版のXP(Windows XP Embedded)と.NET対応のWindows CEが登場する。開発ツールは,携帯電話向けの“MMIT(Microsoft Mobile Internet Kit)”と.NET Compact Frameworkプレビュー版などが登場する
非PC関連のOSと開発ツールのスケジュール。今年12月にはWindows CEを採用した自動車が登場し、組み込み版のXP(Windows XP Embedded)と.NET対応のWindows CEが登場する。開発ツールは,携帯電話向けの“MMIK(Microsoft Mobile Internet Kit)”と.NET Compact Frameworkプレビュー版などが登場する

.NET My Servicesの仕様が公開され、各種のSDKのプレビューが行なわれ始めたため、いよいよ(マイクロソフトの)ウェブサービスも構築が始められる状態になった。いまのところ、ちょっとウェブサービスを試すにもVisual Studio .NETをインストールする必要がある(ランタイムが単独で配布されていないため)こともあって、エンドユーザーが気軽に試してみるというレベルにはないが、開発者レベルでは、すでにウェブサービスを構築してMy Servicesを動かしてみることが可能になっている。

PDC 2001会場の雰囲気を見る限り、ウェブサービスは、今後の主流になりそうな感じである。ただ、どこが今後、主導権を握り、どこが大きなシェアを獲得するのかを予言するのは困難だが、少なくともマイクロソフトは先頭を走っているようである。

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