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オープンソースソフトウェアシンポジウム2001 レポート

2001年10月02日 11時17分更新

文● 宮原徹

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オープンソースはビジネスチャンス

関西でオープンソースを利用したビジネス展開を行なっている(株)グッデイの前田青也氏による講演。

前田氏
(株)グッデイ 前田青也氏

同社にはGNOME上で動作するメールソフト「Sylpheed」や、PostgreSQLを多重化する「Usogress」といったソフトを開発する開発者が在籍しており、また同社自身も「Good-day GNU/Linux」というDebianをベースにしたディストリビューションの開発を行っている。

同社の方向性は、「オープンソースエンジニアがオープンソースを作り、使うことにより何か大きなことができるのではないか? その可能性を追求していく」ということ。そこにはさまざまな可能性があり、何か新しいことを始めることができる、大きなビジネスチャンスだ、というのが同氏の考えです。

実際前田氏は、才能のあるオープンソース開発者を積極的にリクルーティングしているほか、自社のオフィスを関西近辺のオープンソースコミュニティに開放し、さまざまな形で利用してもらっているとのことです。

「開発者やエンジニアが、仕事でもどんどんオープンソースソフトウェアを使っていくべき」と言う同氏の意見には大いに賛成です。しかし、そのような人たちを今後どのように増やしていくべきなのか、そのあたりが大きな課題になっているような気がします。

NetBSD

日本NetBSDユーザーグループ・(株)創夢の、蛯原純氏の講演。

蛯原氏日本NetBSDユーザーグループ・(株)創夢 蛯原純氏

講演の中心は、現在44もの機種に移植されているNetBSDの現状についての解説でした。それらの機種のうち、3分の1ほどは日本人がパッケージの責任者として開発を行っているとのことです。実際、機種の中には日本固有のハードウェア(X68000など)が多数含まれており、各種移植作業で日本人が果たしている役割が大きいのも納得できます。このあたりの状況は、他のオープンソースのOSとは状況が大きく違っていることを感じました。

個人的に興味を引いたのが、やはり現在各種デバイスが出つつあるWindows CE機(NetBSD風に言うとhpc*。CPUはMIPS、StrongARM、SuperHなど)です。Windows CEでメモリを確保し、そのメモリ上にカーネルをロード。メモリの先頭にジャンプさせることにより制御をNetBSDに移しているとのこと。動作しているのは知っていましたが、仕組みまで含めて説明を受けたのは初めてであり、大変興味深かった。最近ではiPAQや、あるいはNTTドコモのsigmarion IIなど、低価格で高速に動作するデバイスが増えてきているので、それらでNetBSDを動かすのも良いかもしれません。

パネルディスカッション

シンポジウムの締めくくりとして、パネルディスカッションが行われました。

モデレーターはまたまた不詳私宮原であり、2部構成としてディスカッションを行いました。第1部は初日の基調講演でテーマとして上がったオープンソースライセンスに関して、再度風穴江氏に登壇いただき、GPLの目的や過去の事例などを紐解きながら、オープンソースライセンスの意義について議論しました。私の意見としては、「最近オープンソースライセンスを遵守することの必要性が特に声を大きくして言われているが、本来守るべきはソフトウェアの自由ではないだろうか。自由を守るためにこそライセンスは存在し、その解釈については弾力的に行っていくべきだ」と考えます。また、風穴氏からはLinux MLD miniのシェアウェア的なライセンス供与形態やデュアルライセンスといった、GPLが触れていない「使用」に関する部分で、さまざまな形でユーザーにソフトウェアを供給する例が出てきており、これらについて注目したいという意見が出ました。

第2部は参加者の中から主にユーザーコミュニティで中心的に活動している方が登壇し、コミュニティのあり方についてのディスカッションが行なわれました。議論において意見が大きく分かれたのが、コミュニティは開放的に拡大をはかっていくべきなのか、それともある程度固定的なメンバーで活動していくべきか、という点です。実際、今回のシンポジウムには関西、四国を中心に多くのユーザーグループから参加者が出ていますが、それぞれの活動方針というのはバラバラです。たとえば新しいメンバーを獲得するために行なわれる「インストール大会」というものも、コミュニティによっては「必要ない」と考えられる場合もあります。これは、インストールぐらい一人でできる人でないと、コミュニティとしてのスキルレベルは下がっていく、という考えから来るものであろうと推測されます。冷たいように見えますが、コミュニティのレベルの維持においては大変重要なポイントです。

実際、さまざまな意見が飛び交ったのですが、それぞれのコミュニティはコミュニティとして集まる「目的」が曖昧だったり、メンバーの中で食い違いが起きていることを感じ始めているようです。それが若干の活動の停滞を招いている面もあるのでしょう。

最終的な結論としては、各コミュニティの目的の再定義と、行動指針の確立が必要であろうということとなりました。私が挙げた行動指針は以下の通り。

  • 日本のオープンソース人口を調査する「オープンソース国勢調査」
  • 全体としてのゆるやかなコンセンサスを作り出す「オープンソースコミュニティ総決起集会」(笑)

これらを果たして実現できるかどうかは、今後の私の活動に期待していただければと思います。

最後に今回のシンポジウム開催に協力をいただいたスポンサー各社からの景品が当たるビンゴ大会で締めくくり。非常に良い景品がそろったため、一部の人間がお互いを牽制し合うという笑えない状況もありましたが、たいへんな盛り上がりの中、終了しました。2日間で150人の方が参加し、オープンソースのあり方を語り合った今回のシンポジウムの意義は大きいと思われます。すでに2回目の開催も計画されているようなので、次の機会には是非もっと多くのオープンソース関係者の参加を期待したいと思います。

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