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ギャルゲー初回特典の謎

2001年09月30日 17時56分更新

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購入特典
※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 携帯ストラップ、トレーディングカード、ステッカー、マグカップなどなど、最近のゲームにはあらゆる「特典」がついている。特にギャルゲーに至っては「7大特典!」や「12大特典!!」など、トンデモないうたい文句を掲げている店もあったりする。一体なぜそんなに膨大な特典が付いているのか? 答えは簡単、「付いてるだけで売れるから」である。7大特典ともなれば、本来そのソフトの持つ販売力に対して、なんと20倍!(経験から算出)程度は売れてしまう事もある…ような気がする。

 それではこの「7大特典」、どのようにして生まれるのか? ひと口に特典といっても、実はその製作工程はさまざまなのだ。その道のりは決して平坦なものではなく、誕生の陰には我ら営業部員たちの激しい戦いがある。

 それでは、僕の知っている、怒涛の「ギャルゲー7大特典」製作秘話をはじめよう。

 まず、最も一般的といえる特典は、「メーカー特典」。これは各ギャルゲーメーカー(販売元)が費用を負担することにより作られる特典で、主に全国的なキャンペーンなどに使用されるものだ。最近はパッケージに同梱するタイプも少なくない。初回出荷分限定として雑誌などで発表されたりするものがこれにあたる。このようなものは、最近のギャルゲーには付いてて当たり前なので、これがなかった時点ですでにギャルゲーではない(断言!)。ギャルゲーには、ポスター2種類・トレカ・下敷きなど、通常で4種類くらいはついてくるので、ここですでに「4大特典」ゲットである。しかし、これだけではまだまだ貪欲なヘビーユーザーの食指を動かすには不十分だ。



特典の山
実際に特典を作ったショップでは、入荷担当者の手元にできあがった特典が毎日集まってくる。※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 次に「ショップ・メーカー共同特典」。ありがちなパターンとしては、メーカーがショップ(主に大規模チェーン店や秋葉原などの主要店舗)に対して“描き下ろし”のキャラクター素材を提供する。その上でショップが、店側の負担でその素材を使ってオリジナルテレカやトレカなどを作成するパターンだ。「○○(ショップ名)限定テレカ」とか「○○(ショップ名)オリジナルポストカード」なんていうのがこれ。通常、アキバのギャルゲー主要店+全国でも有数のギャルゲーショップ数店で作られる。
 この特典は一見、店側の負担が大きそうだが、実はそんなことはない。テレカの製作原価は500~600円/1枚程度。4色カラーの上に箔押しをしたところで、せいぜい800円するかしないかだ。普段であれば、10%引き、20%引きで新作ソフトを売っているショップは、テレカを特典としてつける代わりに定価販売か、定価に極めて近い価格で販売することもあるからほとんど損しない。それどころか、テレカ分ちょっと利益率があがる場合もあるし、なによりオリジナルテレカをつければ売上枚数は数倍から、ときには10倍に跳ね上がることもある。さらに店の宣伝にもなるわけだから、ショップ側に断る理由なんてなく、まず間違いなく喜んで協力してくれる。

 しかしこの販促展開においては「素材の確保」が最も重要であり、困難である。仮に社内のデザイナーがキャラクターデザインをしていたとしても、販促品確保の交渉をする我ら営業部員とデザイナーの間には大きな壁があるものだ。会社の組織的な壁はもちろん、「俺、ギャルゲーなんてやったことないんだよねー」なんて公言している営業マンと、まさにそのギャルゲーを作っている開発者が仲の良いはずもないのだ。しかも通常ゲームソフトは、発売の2カ月程度前にはマスターアップするため、営業を開始する時期にはすでに開発陣はお気楽ムード、もしくは長期休暇に入っていることもしばしば。その中で貴重な描き下ろしキャラクター素材を入手するのは非常に困難なのである。会社の利益になるんだから、それぐらい協力してもらえるだろう、と思われがちだが……甘い! 営業の言うことを真剣に聞いてくれる開発サイドの人間はかなり高確率で存在しなかったりする。
 これが、社外の有名デザイナーのキャラクターを使用していたりすると、話はもっと複雑だ。場合によっては新規に絵を1枚描いてもらうだけで、ウン十万円も請求されることがあるからだ。それでも、これらの難関をくぐりぬければ、販促に最も効果のあるショップオリジナルテレホンカードがが完成する。これで「5大特典」到達! ここまでくるとマニアもちょっと無視はできない一品、という感じになってくる。しかし彼らに商品を買ってもらうためには、これに加えてダメ押しの上乗せ特典が必要だ!



5大特典
「5大特典」が完成すると、ショップの予約受付コーナーにはこのような告知が躍ることになる。※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

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