日本ルーセント・テクノロジー(株)は4日、DSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer)(※1)製品『Stinger FS+』を発表した。
※1 xDSLサービスを提供する通信事業者が局側に設置する装置。加入者の回線の集線とISPへの接続を行なう。『Stinger FS+』 |
米ルーセント・テクノロジー(Lucent Technologies)社DSLプロダクトマネージメントのバイスプレジデントであるDennis Klein氏は5日、日本ルーセント本社内においてASCII24編集部のインタビューに応じ、Stinger FS+の特徴について「コストパフォーマンスに優れていること(価格はオープンプライス)、キャリアークラスの信頼性、保守作業が容易なこと」などを挙げている。
Stinger FS+は、前面のカードスロットに72ポートのADSLラインインターフェースモジュールを、最大14枚搭載可能。これによって、1008ポートのADSL回線を収容できる。Annex CおよびAnnex Aの双方の規格をサポートしており、Annex CではG.dmt(フルレート)およびG.lite(ハーフレート)両方に対応している。
ルーセントのStingerシリーズは、世界では1万8000台以上、ポート数にして300万ポート以上販売しているという。しかし、日本では日本電気(株)や住友電気工業(株)のDSLAMが先行しており、同社は「後発」だという。同社は、日本での市場シェアは発表していない。
米ルーセント・テクノロジー社DSLプロダクトマネージメント バイスプレジデントのDennis Klein氏 |
Klein氏は、StingerFS+は日本で導入されているADSLモデムとの互換性の検証をすでに行なっており、またインストールまで同社がサポートするため、インストールベースでのコストパフォーマンスが他社と比べて優れていることを強調した。また、高密度実装によって、設置する床面積に比べてポート数が多く、1ポートあたりコストも安いとしている(シャーシのサイズは幅439.4×奥行き419.1×高さ622.3mm)。従来の『Stinger』は、12ポートのADSLもしくは48ポートのSDSLモジュールを搭載していた。Stinger FS+はADSLについては、従来の6倍の回線を収容することができる。
信頼性については、各モジュールが冗長化されており、モジュールやポートに障害が発生すると自動的にバックアップモジュールに切り替わり、問題の発生したモジュールは本体が稼動したまま交換することができる。Klein氏は「72ポートの内の1ポートに障害が発生したとき、(冗長性がなく)72ポートすべてを停止することになれば、ユーザーはダウンロードを途中で中断させられることになり、キャリアーの信頼性がダメージを受ける」と語る。ATM(Asynchronous Transfer Mode)網への接続に際しては“ATM Forum”のトラフィック管理仕様(バージョン4.0)に準拠したQoS(Quality of Service)を提供するという。
また、保守の容易さについてのKlein氏の説明によると、回線に障害が発生した場合、通常はDSLAMを設置している局舎まで、実際に行って回線試験を行なわなければならない。しかし、Stinger FS+では回線の障害をオペレーションセンターから把握できる。Stiger FS+にはCLT(Copper Loop Test)モジュールを搭載でき、CLTモジュールを遠隔操作して信号の反射などを調べることで、回線上の障害を検出できるという。
Stinger FS+は、Klein氏は通信事業者の「投資を守る」ためとしているが、モジュールを交換することで将来の技術革新にも対応する。また、近いうちに将来に備えてのアップグレードも行なわれる予定だという。
「必要とされるものはADSLで十分提供できる」 |
ADSLはいつまで?
Klein氏は「ADSLはいつまで主流か」との質問に対して、「5~7年以上」と答えた。そして、「FTTHは素晴らしく、成功するだろうが、必要とされるものはADSLで十分提供できる」「ADSLは既存のワイヤーを活用できる。新しいものを引くのは高くつく」とし、FTTHが浸透しても、ADSLは競争力を維持できると考えている。
「FTTHが普及するよりも先にADSLが普及すれば、ユーザーはあえて変える必要はない」。そして「それ以前に、多くのユーザーは、まだ56kbps(のダイヤルアップ接続)だ」と、FTTHを考える前に、まずダイヤルアップ接続から早急にADSLに切り替えるべきだと主張した。
市場調査会社の米デルオロ・グループ(Dell'Oro Group)の調査では、アルカテルのDSLAMの世界での市場シェアは、60%を超えている。また、日本市場では既述のように、NECと住友電工が先行している。
自ら「後発」であることを認めているルーセントが、どこまで市場に食い込めるか、注目したい。