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再生計画、中国企業と現地で合弁――「IT業界のユニクロを目指す!! 」

2001年09月08日 12時20分更新

文● 編集部 中西祥智

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新ビジネスの企画やベンチャー企業への出資を行なう再生計画(株)、および子会社のソフトウェアベンダー(株)アブロードシステムズは7日、中国企業と現地で合弁企業を設立し、中国で日本向けのソフトウェアの制作を行なうと発表した。

基本合意書へ署名
基本合意書へ署名する3社長。左から東宇信息技術有限公司の好先臣(ハオ・シェンチェン)総経理(社長)、(株)アブロードシステムズの大坂訓教代表取締役、再生計画(株)の荒川敬代表取締役

再生計画は荒川氏らが企業の海外への進出を支援するために設立したベンチャーインキュベーター。再生計画の支援する第1号が、今回のアブロードシステムズだという。

両社は、中国遼寧省瀋陽市のSIやソフト開発などを行なう企業である東宇信息技術有限公司と、瀋陽市に合弁企業を設立する。社名は“中国瀋陽東宇国際軟件工程株式会社”で、資本金は1000万人民元(約1500万円)、出資比率は東宇信息が70%で日本側2社が合わせて30%となっている。同社社長には、東宇信息の好先臣(ハオ・シェンチェン)総経理(社長)が就任する予定。ただし、同日行なったのは基本合意のみで、設立時期は未定。

中国側の出席者2人
左が李夢玲瀋陽市科学技術委員会主任、右が東宇信息の好先臣総経理

記者会見に出席した瀋陽市の李夢玲科学技術委員会主任は、東宇信息技術有限公司が“東宇集団”という企業グループのIT部門にあたること、東宇集団が瀋陽市で最も需要な企業であることを説明した。また、東宇信息の好先臣総経理は中国の人的資源を日本のソフトウェア市場で活用することの意義を説き、「日本の市場だけでなく、世界市場を」視野に入れた事業を行いたいとの抱負を語った。

会見では、アブロードシステムズの大坂訓教代表取締役が今回の中国進出の経緯について説明した。合弁企業を設立するに至った最も大きな要因は、日本国内の価格競争だという。中国の安くて優秀な労働力を活用することで、価格競争に勝ち抜くためだ。以前より同社は東宇信息とソフトウェアの共同開発をしており、それによって「営業に行けば仕事がとれる」くらい価格競争力を持つことができたという。

アブロードシステムズの大坂訓教代表取締役アブロードシステムズの大坂訓教代表取締役

しかし、大坂氏は中国に現地法人を作って、日本企業が中国企業に発注するのではなく、「中国から中国にしたい」と考えるようになった。中国では観光ビザが取得しにくいため、中国側の技術者を日本に招くのにビザが必要になっても、なかなか発給されないという。しかし、中国企業の支社が日本にあれば、社内の転勤ということで容易にビザがとれる。

また、中国のソフトベンダーは下請けなどを活用せず、自社のみで内製しようとする傾向が強く、大規模なソフト開発が難しいという。そこで、中国に現地法人を設立して、そこを核にほかのベンダーに仕事を発注して、大規模なソフトの開発を行なうことを狙う。また、通常海外から製品を輸入するには関税などがかかるが、ソフトウェアを、つまり情報を輸入するのであればタイムラグもなく、また税務上も有利だという。

コンピューターソフトの開発
コンピューターソフトの開発。作業の大半は中国で行なうことになる

現在検討している新会社の業務内容は、以下の3種類。

データ入力業務のアウトソーシング
データの入力業務を日本で受注する。受注した書類などをスキャンして、画像データとして中国に送る。中国では大学の日本語学科の学生などが、その画像をテキストとして入力する。入力は2人で同時に行ない、入力ミスを減らす。完成したテキストは、翌日には納品される。国内では1件につき40円から60円かかるのが、この方式だと1件20円で行なえるという。
コンピューターソフトの開発
日本で基本設計を半分程度行ない、残りの基本設計と詳細設計、およびプログラムの作成を中国で行なう。納品後のサポートは、日本側が担当する。新規のソフト開発にかかるコストは、約2分の1程度になるという。
DTPアウトソーシング
書籍やマニュアル、パンフレット、カタログなどの印刷を日本で受注し、中国で印刷する。それを日本へ航空便で発送しても、国内よりは安価に行なえるという。
ソフトの開発例
ソフトの開発例。品質的にも遜色ないという

大坂氏によると「ソフトは人件費の固まり」であり、中国で開発を行なうことで確実なコストダウンが可能。現在、東宇信息では400人体制でソフトの開発を行なっているが、新会社では2000人規模に拡充するとしている。

新会社の初年度の売り上げ見込みは、1~2億円。大坂氏は、「IT業界のユニクロを目指したい」と語った。

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