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リネオ、組み込みシステムの開発者向けに“OS戦略説明会”を開催

2001年09月06日 14時39分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(株)リネオは5日、組み込みシステムを手がける開発者を対象に、同社の組み込み機器向けOS製品と今後の戦略を説明する“OS戦略説明会”を開催した。説明会では米リネオ社のOS製品最高責任者を務めるトム・バレット(Tom Barrett)氏がリネオの製品群について解説した。

米リネオDirector of Corporate Developmentの楢崎浩一氏
米リネオDirector of Corporate Developmentの楢崎浩一氏

冒頭、米リネオDirector of Corporate Developmentの楢崎浩一氏が挨拶し、リネオに対する企業からの問い合わせなどの状況について説明した。楢崎氏によるとリネオはもともと、組み込み系のLinuxの開発・販売を行なう目的で設立したが、組み込み関連顧客の幅広い要求に応えるため、8bit/16bitプロセッサー向けなど、LinuxでないRTOS(リアルタイムOS)も手がけているという。

すでに発表済みの受注案件では、シャープ(株)が海外向けの『Zaurus』において、リネオの組み込みLinuxである『Embedix(エンベディックス)』を採用し、秋から北米で販売を開始するという。また、まだ企業名は明かせないとしながらも、PDA関係で現在数社と話し合いを行なっており、うち1社は受注に至ったという。このほかデジタルセットトップボックス(デジタル放送用機器)でも引合いが多く、日本企業と話し合いを進めている状態だという。日本市場向けの案件は、リネオの長野県塩尻の事業所で一括で作業しており、日本企業からの要求に対して迅速に対応できるとした。

プロセッサーと用途ごとのマトリックスによるOSの位置づけ
プロセッサーと用途ごとのマトリックスによるOSの位置づけ

続いて、バレット氏がリネオの組み込み向けOSを1つ1つ特徴を解説した。組み込み向け市場には、“汎用”、“制御”、“DSP”の3つのカテゴリーが存在するが、最近では2つのカテゴリーにまたがるアプリケーション(ハードウェア)が登場しており、プロセッサーも、DSPとプロセッサーが合わさったものや複数のプロセッサーコアを持つものなどが次々と出てきており、OSもそれに対応したものが要求されているという。

米リネオ社のOS製品最高責任者トム・バレット氏
米リネオ社のOS製品最高責任者トム・バレット氏

開発者は、OSを含めたシステムのフットプリント(ソフトウェアが必要とするメモリー容量)をなるべく小さくしたい、コストを抑えるためこれまでの製品で開発したコードをなるべく再利用したいと考えている。また、現在の組み込みOSでは汎用、制御、DSPといったカテゴリーの違いや、プロセッサーの違いを乗り越えて1つのOSで開発できるような環境はないという問題もある。

リネオではこれらを挑戦すべき課題であると考え、これまで開発したコードを、プロセッサーやアプリケーションが変わっても再利用できるようにしたり、独自OS向けのプログラムを別の汎用OSに乗り換える際の橋渡しとなる手段を用意したりといった、対策を用意しているという。またAPIを最小化することでフットプリントを抑えているとしている。

リネオの組み込みOS関連製品のラインアップは以下の通り。

100% Pure Linux
オープンソース。MMU(メモリー管理ユニット)を持つ32/64bitプロセッサー(PowerPC、SHx、MIPS、ARM、x86)向け。シビアなリアルタイム性を要求するアプリケーションには向かない。フットプリントは1~3MB程度必要。
Embedded “MMU-full”Linux
リネオが開発したコンパクトなLinux。MMUを持つ32/64bitプロセッサー(PowerPC、SHx、MIPS、ARM、x86)向け。シビアなリアルタイム性を要求するアプリケーションには向かない。フットプリントは500KB~2MB程度必要。
Embedded “MMU-less”Linux
リネオが開発したコンパクトなLinux(MMU-fullのものより小さい)。MMUを持たない32bitプロセッサー(68000、DragonBall、ColdFire、ARM 7TDMIなど)向け。ある程度のリアルタイム性を要求するアプリケーション向け。フットプリントは500KB~2MB程度必要。
RTXC DSP & RTXC Quadros(クアドロス)
RTOS(Linuxではない)。8/16/32/64bitプロセッサーおよびDSP向け。マルチプロセッサー対応。シビアなリアルタイム性を要求するアプリケーションにも向く。フットプリントは数100KB以下。

これ以外に、RTXCにLinuxの環境を追加するための『RTAI』(Real-Time Application Interface)(32bitプロセッサー環境のみ)、米ウインドリバーシステムズ社のRTOSである『VxWorks』『pSOS』向けのコードをそのまま実行できる(APIレベル)『VxWorks API Execution Module』『pSOS API Execution Module』といったモジュールを用意している。

リネオのOS製品と、プロセッサー/DSPの対応図
リネオのOS製品と、プロセッサー/DSPの対応図

会場にはリネオのウェブサイトなどを通じて申し込んだ、およそ80名の開発者が集まった。バレット氏によるOSの説明は開発者向けの詳細なもので、説明会は3時間に渡るものだったが、途中で出入りする人も少なく、熱心にメモを取ったり、説明終了後も細部について質問する姿が多く見られ、リネオのOSに対する関心の高さがうかがわれた。PDA、セットトップボックス、通信関連機器、ネットワーク家電など、組み込み向けOSの需要は増加の一途である予想されており、日本企業の取り組みも多いという。国内に日本企業向け事業を行なう開発拠点があることは、採用を検討している企業にとって大きなメリットだろう。さまざまなプロセッサー、DSPやアプリケーションに対して、広範囲にサポートするリネオの存在はますます大きくなりそうだ。

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