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「J-フォンは年内に1社体制に、3G投入は来年5月」と英ボーダフォンCEOが言明

2001年07月30日 22時33分更新

文● 編集部 佐々木千之

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英ボーダフォン・グループ社は30日、都内のホテルに報道関係者を集め、記者懇談会を開催した。この懇親会は、記者団からの質問に英ボーダフォンの経営陣が答えるという形式で行なわれ、サー・クリストファー・ジェント(Sir Christopher Gent)社長兼CEOは「J-フォンの地域会社は年内に1社体制にする。日本での3G携帯電話サービスの提供は2002年5月に開始する」などと発言した。

サー・クリストファー・ジェント社長兼CEO
サー・クリストファー・ジェント(Sir Christopher Gent)社長兼CEO。6月に移動体通信事業の発展の功績によりナイトの称号を受けた

英ボーダフォン・グループは'82年12月に設立、'85年に英国で初の商業携帯電話ネットワークを開始しした後、'90年代に世界中の企業に出資し、そのパートナー企業と携帯電話の事業者免許を取得するという手法で事業規模を大きくした。現在29ヵ国で移動体通信事業を展開しており、同社が出資する通信会社の加入者数の総計は約2億200万人(2001年3月末。各社への出資割合から換算した加入者数では約9300万人)で、世界最大規模の移動体通信事業者となった。

日本においては、'90年にエアタッチ社(現ボーダフォン)が日本テレコムと携帯電話サービス(現J-フォン)の事業協力協定を結んだことで、事業展開を開始し、現在はJ-フォングループの持ち株会社であるジェイフォン(株)の46%の株式、日本テレコムの45%の株式を保有する。また、J-フォンの地域会社3社(J-フォン東日本(株)、J-フォン東海(株)、J-フォン西日本(株))の株式も15~19%保有しているという。また、英ボーダフォンは2001年前半に日本に対して1兆1000億円の投資を行なっており、これは外国企業の投資額として過去最大規模であるとしている。

以下に懇親会で交わされた質疑応答の主な内容を列挙する。

[質問] 来日の目的は?
[ボーダフォン] 定期的なミーティングや、日本におけるボーダフォンのプレゼンスを強めるため。関係省庁の幹部とも意見交換をしたいという目的。
最高執行責任者のジュリアン・ホーン・スミス
最高執行責任者のジュリアン・ホーン・スミス(Julian Horn-Smith)氏
[質問] 日本テレコムに対してTOB(敵対的買収)を考えているのか?
[ボーダフォン] 考えていない。日本テレコムの競争力をもっと高めたいとは考えている。いろいろな案があり、日本テレコムとは非常に建設的な対話を行なっている。なお、日本テレコムの固定電話事業は我々の主眼ではない。
[質問] 日本テレコムにはスタッフを出向させるのか?
[ボーダフォン] 10年来、エアタッチのころを通じてJ-フォンに関わっており、J-フォン地域会社にも持ち株会社にもスタッフは入っている。そういう意味ではイエスだ。
[質問] どのようなサービスを考えているのか?
[ボーダフォン] いまはあまり詳しくはいいたくないが、1つの料金体系にしたい。また法人に魅力のある料金にしたい。法人向けにはボーダフォンが持っているサービスで、気に入ってもらえるものがあると考えている。

顧客にとってのサービスの質が高まることが重要だ。J-フォンとの協力が進めば、J-フォンが日本で展開しているサービスを海外の会社に広めていくことも考えている。


J-フォンが世界市場に先んじているのはJavaのサービスだ。NTTドコモのJavaサービスよりも優れたものだと聞いている。これを世界に広めたい。
南北アメリカ・アジア地域統括社長ウィリアム・キーバー氏
南北アメリカ・アジア地域統括社長ウィリアム・キーバー(William Keever)氏
[質問] 世界市場でどのような分野が有望か?
[ボーダフォン] 最も期待できる分野は音声通信以外の用途だ。日本のユーザーは非常に先進的な使い方をしており、世界より1年半進んでいる。そうした使い方を他の国にも広めていきたい。
[質問] NTTドコモについてどう思うか?
[ボーダフォン] PDC方式では、NTTドコモの独自仕様ということで好きなようにできたが、WCDMAは世界標準であり、1社で思い通りにはできない。PDCのようなビジネスのやり方は通用しないだろう。また、携帯電話のインターネット利用ということに関していえば、J-フォンのユーザーの方が、NTTドコモユーザーを上回る利用率を示している。これはJ-フォンのサービスが優れているためだ。また、国際的なローミングが必要な顧客に対しては、明らかにボーダフォンはNTTドコモよりも先んじている。
[質問] 3G携帯電話サービスはいつ開始するのか?
[ボーダフォン] ヨーロッパでは、2002年後半にサービスを開始すると発表している。最初から3Gと従来の2.5Gの両方のサービスが利用できる“デュアルモード”端末を投入し、どこでもサービスが利用できるようにすることを計画している。NTTドコモは5月に開始できず10月開始だといっているが、これは3Gだけのサービスだ。WCDMAとPDCのデュアルモードサービスは2002年末か2003年まで利用できないだろう。我々はNTTドコモよりは遅れるが、デュアルモードサービスを提供することが、ユーザーにとって一番良いソリューションだと考えている。なお、2.5Gサービスはヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドで、米モトローラ社の端末でサービスを開始した。ヨーロッパではもうじき他社製の端末も登場するだろう。
記者団からの質問に丁寧に答えるボーダフォンの幹部
記者団からの質問に丁寧に答えるボーダフォンの幹部。ほとんどの場合、クリストファー社長が答えていた
[質問] 日本においては、年内に地域会社を統一し、来年には単一料金を導入、そして来年末までに3G導入ということになるのか?
[ボーダフォン] J-フォン地域会社は年内に1社体制にする。(現在地域によって異なる)サービス料金の統一はなるべく早くやりたい。3G携帯電話サービスは2002年5月に開始する。ただし、デュアルモードサービスは、確実に動作するという確認が取れてから投入することになる。

また、日本ほどの多様なサービスを提供できる端末はヨーロッパにはまだない。日本の端末メーカーが、高機能端末をヨーロッパで展開する可能性が出てきたと考えている。


デュアルモード(GSM/WCDMA)対応携帯電話について付け加えると、3社のメーカーが2002年半ばにはできるのではないかといっている。我々が期待しているのはさらにPDCも含めた“マルチモード”端末だが、これはそれよりもかなり遅れると感が手いる。
[質問] 日本にはNTTドコモ以外にKDDI(au/ツーカー)もサービスを行なっているが?
[ボーダフォン] J-フォンは、NTTドコモのJava端末の回収騒ぎなどもあり、6、7月には大きなシェアを取ることができた。しかし、この状況を継続することが重要だ。サービスや料金も優れたものにし、ユーザーにメリットを継続して提供できる会社にし、2位の座を確実にしたい。au、ツーカーなどコンペティターは常に尊敬している。ただし、脅威だとは思っていない。
[質問] サービスの名称を“J-フォン”から“ボーダフォン”に変更するのか?
[ボーダフォン] J-フォンブランドを発展させ、強化するためのコーディネーションが重要だと考えている。ブランド名を変更する考えはない。

NTTドコモを抜いてJ-フォンを日本でトップブランドにする、といった発言が聞かれるかとも思ったが、そういった発言はなかった。これは、3G携帯電話サービスの本格的展開はデュアルモードおよびマルチモード端末が出てから、ということと、J-フォンはボーダフォンにとって、世界市場の中の1社にすぎない、ということがあるからだろう。ジェント社長は、2002年末~2003年にデュアルモード/マルチモード端末が登場し、ボーダフォンがサービスを提供するすべての国々で、1台の携帯電話でサービスが受けられるようになったときがNTTドコモとの本当の勝負、その勝負には勝つ自信がある、と言っているようだった。

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