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炭素材料学会が先端科学技術講習会を開催

2001年07月30日 20時01分更新

文● 編集部 佐々木千之

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30日、炭素材料学会(※1)が主催する有料のセミナー“先端科学技術講習会2001”が、東京・千代田区の化学会館で開催された。このセミナーは、炭素材料に関連した最新のトピックを取り上げて、主に企業から講師を招いて行なっている。

※1 炭素材料学会は、炭素材料全般における基礎科学と応用について、研究成果の普及と関連技術の発展を目的としている。

今回は“-ITとエネルギーのキーマテリアル:炭素材料-”をテーマに、ITとエネルギーのキー素材として、炭素材料が使われる2次電池や電子材料について、5つの講演が行なわれた。先端科学技術講習会は主に学会員向けだが、会員以外も参加できる。参加費は正会員2万1000円、学生1万円、非会員3万7000円など。毎年7月に開催している。

午前中は、筑波大学の木島正志氏と、(財)電力中央研究所の竹井勝仁氏が講演した。

筑波大学の木島正志氏
筑波大学の木島正志氏

筑波大学の木島氏は、先にノーベル化学賞を受賞した筑波大学白川英樹名誉教授との研究を振り返りながら、炭素材料の今後の発展について講演した。導電性高分子物質(もちろん炭素を含んでいる)や炭素材料はすでに、コンデンサーやトランジスター、コイン型電池、2次電池、高分子LEDなど多種多様な形で利用されており、実績を上げている。しかし、炭素材料にはまだまだ研究中の分野が多くあり、例えば、絶縁体であるダイヤモンド系材料や、導体であるグラファイト系材料以外に、半導体的な性質を持つ新炭素材料といったような、まったく新しい材料の開発の可能性を秘めていると述べた。

白川博士が作り出した導電性高分子物質“ポリアセチレンフィルム
白川博士が作り出した導電性高分子物質“ポリアセチレンフィルム”
導電性高分子と炭素材料の開発と製品応用の歴史
導電性高分子と炭素材料の開発と製品応用の歴史

続いて電力中央研究所の竹井氏が、平成4年度('92年度)に10ヵ年計画として始まった“分散型電池電力貯蔵技術開発”プロジェクトの1つである、大容量リチウム2次電池の開発状況を紹介した。このプロジェクトは、高性能リチウム2次電池を大型化・組電池化し、電気自動車への応用や、家庭での夜間電力貯蔵による電力負荷の平準化を目指した、通商産業省(現経済産業省)による開発計画。リチウム2次電池の負極には炭素が利用されていることから今回の講演依頼を受けたということだったが、炭素材料の直接の改良や関わりということについての説明はなく、10ヵ年計画の最終段階を迎えているプロジェクトの成果について報告が行なわれた。

電力中央研究所の竹井勝仁氏
電力中央研究所の竹井勝仁氏

竹井氏によるとプロジェクトは、家庭で利用する定置型と、電気自動車用の移動型それぞれで、ニッケル・コバルト系電池とマンガン系電池の研究が行なわれ、電池の電力容量(移動型の目標3kWh)や出力密度(移動型の目標400W/kg)、エネルギー変換効率(移動型の目標85%)といった項目の多くで、目標値を達成したという。ただ、サイクル寿命(充放電寿命)に関しては、まだ目標(移動型で1000回)に達しておらず、これを伸ばすことが当面の問題だと述べた。2001~2005年に、小型電気自動車や冷蔵庫などに向けた中容量の電池システムを実用化するほか、2006年度以降、家庭用や電気自動車用の大容量システムを実用化する計画であるとしている。

研究開発中の2次電池
研究開発中の2次電池(それぞれ20~30kgほどの重さがあるという)
リチウム2次電池プロジェクトの実用化・普及化のスケジュール
リチウム2次電池プロジェクトの実用化・普及化のスケジュール

先端科学技術講習会2001ではこれらのほか、午後には燃料電池発電システムや、キャパシター(コンデンサー)、次世代電子材料としてのダイヤモンド薄膜についての講演が行なわれた。会場では数十人が聴講しており、講演後には専門家らしい突っ込んだ質疑が行なわれていた。日々あまり意識することのない材料工学の分野においても、着実に技術革新が進んでいることを感じさせられた。

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