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恐竜はどこにいる?

2001年07月29日 00時00分更新

文● 渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp)

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まもなく「ジュラシックパーク」の新作が公開される。なんと言っても娯楽作品のこと、「それはおかしいんじゃない?」といったシーンの揚げ足取りをすることもあるが、筆者はこの手のものが好きなので、今回もまた見に行くつもりだったりする。

というわけで、実は筆者はけっこう恐竜が好きである。しょせんは素人の域を出るものではないが、恐竜に関する新発見や研究動向、最新の学説など、目に留まるものがあれば一応チェックしてみる、くらいのことはしている。

Dinosaur Field Guide表紙
Dinosaur Field Guide
先日米国に出かけた折りに見つけて購入してきたのが、Random House発行のJurassic Park Instituteシリーズの1冊で、『Dinosaur Field Guide』というものだ。発行日は2001年6月となっているので、多分まだ日本語訳は出ていないだろう。というか、日本語に訳されるものかどうかもよく分からない。

この本は子供向けの「恐竜図鑑」といった趣のものだ。もちろん全部英語で書いてあるわけだが、子供向けということで英語力に乏しい筆者でも何とか理解できたので、楽しく読めたというわけだ。この手の本は、コンピュータ関連でも事情は同様だが、テクニカルタームを知っていさえすれば、基本的には使い物にならないレベルの英語力でも何とかなるものなのだ。

この本のいいところは、最新の動向を反映した記述と挿絵が入っていることだ。最新の恐竜としては、2000年記載のSauroposeidonなんてのが紹介されている。ちなみに、「記載」というのは化石の研究成果を記述した学術論文が公式に出版された、ということを指すようだ。当然、化石自体の発見はそのさらに数年前の話である。で、なかでも比較的大きく扱われているのがSinosauropteryx(1996年記載)とかSinornithosaurus(1999年記載)といったものだ。読み方は発音記号らしいものが紹介されているのだが、英語を母国語とする人向けのようでよく分からない。自信はないがカナ書きを試みてみると、「シエノサウロプテリクス」「シエノニソサウルス」といった感じのようだ。何がポイントかというと、これらの項に添えられた復元図では、全身が羽のようなもので覆われているのだ。これらの化石は中国で発見されたもので、非常に微細な岩石からなる地層に埋没していたため、骨の周囲に皮膚の印象が型押ししたように残っていたという。そこに、羽毛のような構造(原著にはprotofeathersとかlong filamentsとある。後に鳥の羽毛になる先駆的構造ということのようだ)が見られたというわけだ。

現在、恐竜は絶滅したとされているが、一方で数年前から「鳥の恐竜起源説」が有力になっており、今では「鳥は恐竜そのもの」という言われ方をされている。この説自体は数年前、最初の「ジュラシックパーク」の時の恐竜ブームの際に発行された本で見て知っていたが、今ではこれは「有力な説」どころか、子供向けの図鑑にまで紹介される「定説」なっていることが分かって感慨深い。個人的にも、動物園などでダチョウを見るたびに「これは恐竜以外の何ものでもないだろう」と感じているほどで、この説は全面的に信じているのである。



巨大でウスノロの恐竜が滅びて

さて、ここしばらくの間、Sun Microsystemsの新聞広告などに恐竜の化石の写真が使われていたことはご存じだろうと思う。広告の中では恐竜に関連する説明はまったくないので、なぜ恐竜があしらわれているのか分かりにくいが、IT業界で「恐竜」と言ったら、普通はメインフレームを揶揄する表現である。

ここには、「巨大になりすぎたウスノロで、環境の変化に対応できなくて滅びてしまった大昔の生物」という認識があるのだろう。そして、これをメインフレームに当てはめて、「そんなものをいつまでも使っていて大丈夫ですか?」と問いかける意図があるように感じられる。

しかしながら、Robert Bakkerが「恐竜温血説」を派手に宣伝して以来、この古いイメージ(昔ブロントサウルスと呼ばれていた恐竜の絵に見られたほのぼののんびりした感じ)のほうが古くなっている。ちなみに、Robert Bakkerとは「古生物界のRichard Stallman」という感じの人物らしく、過激な言動で有名な恐竜学者である。ご存じのとおり、「ジュラシックパーク」でこうした認識が映像化されてからは、恐竜を「愚鈍・鈍重」というイメージで見ることは少なくなった。もちろん、「ジュラシックパーク」は娯楽として演出されているので、いくら何でもあれでは極端すぎるとは思うが、そうは言ってもまぁ、恐竜が優れた体制を備えていたと考えるほうが現在では一般的だろう。

なんだか裏の裏をさらに裏読みするような感じではあるが、実はメインフレームを恐竜に例えるのは、やはり的を射た表現なのかもしれない。というのも、滅びたと思われていた恐竜は意外に敏捷で優れた生物であっただけでなく、鳥として現在まで生き延びていたわけだ。メインフレームも、この10年以上の間ずっと「もう古い」と言われ続けながら、少しずつ形を変えつつも使われ続けている。一方、メインフレームを恐竜呼ばわりしたSunは、折からのIT不況の影響もあり、2001年会計年度の業績は、通年(2000年7月~2001年6月)では売り上げは16%増、利益は22%減という「増収減益」という結果だが、第4四半期(2001年4~6月)だけで見ると対前年同期比で売り上げ20%減、利益81%減となっている。

恐竜は、白亜紀末期の環境変化(隕石衝突説が有力と言われるがよく分からない)で絶滅したと言われてきた。現在、IT業界もバブル崩壊と言われ、経営環境の激変期にある。さて、ここを乗り切って生き残るのは誰だろう? 恐竜呼ばわり、絶滅動物呼ばわりされないためには、ともかく生き残らないと話にならないのである。まだまだ、勝負の決着はついていないと見るべきだろう。

さて、余談ではあるが、Sunの広告に載っていた恐竜化石(やはりティラノサウルスなのだろうか)は、プロポーションがちょっと古いかな、という感じだった。上体を起こして尾を引きずったゴジラ的な姿勢は過去のもので、現在は「ジュラシックパーク」に見られるとおり、背骨を地面に水平になるように腰を中心にバランスを取る姿勢に復元することが増えているのに比べると、頭の位置が高いように感じたのだ。どうも、あの広告は古い恐竜イメージに引きずられ過ぎた結果のようである。

渡邉利和

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