シリーズ初のリアルタイムバトル採用など、前作から一新されたシステムで話題を呼んだコーエーの歴史SLG「信長の野望 嵐世記」だが、来る8月3日にはシリーズ恒例の「パワーアップキット」(以下、PK)がリリースされる。今回の目玉は、期間限定シナリオ「ミッションチャレンジモード」と歴史イベントを創造できるエディタの搭載だ。
本体発売(2001年2月)からすでに約半年。嵐世記のプレイには相当習熟した、と自負する方も多いことだろう。前作「烈風伝」のいわゆる「箱庭システム」から一転し、いにしえのコマンド中心主義に回帰。そして最大の特徴は、「AoE」(Age of Empires)ライクなリアルタイムバトルシステムの採用だった。つまり前作とは断絶した、まったく違うスタイルのゲームとして登場したわけだ。
正直に言うと、筆者は前作までの「Civilization」的箱庭システムがかなり「お気に」だったし、AoEなどをプレイしてもあまり入れ込んだほうでなかったので、ワタシとしては珍しく、今(この原稿を書く)まで嵐世記をプレイしていなかった。これが初プレイになったため、すでに嵐世記を極めた人にとっては若干ピントの合わない(初心者的な)記述もあるかもしれないが、そこは長年「信長シリーズ」という同じ釜のメシを食った同志として(笑)、ご容赦あれ。
進化の余地がある新システムに
PKとしてどういう調味料を加えるべきか?
メイン画面。街中を歩いているキャラがしゃべったりするのは、最近のコーエー作品でおなじみの演出。コマンド体系は「天翔記」とも違い、「奉行」コマンドで内政、軍事任務を割り当て、「人事-賞罰」コマンドで武将の知行を上げる、というのに慣れるまでは違和感もあった。 |
率直に言えば、「大胆な方向転換を図ったなぁ」というもの。すなわち、第6作「天翔記」に近い、軍団制を軸にしたコマンドオペレーションは、「箱庭」至上主義のワタシにとってはあまりにも単純化され過ぎたシステムなのだ。一応、メイン画面の城下グラフィックスには内政の成果が反映されるのだが、箱庭システムの“見た目の変化”と比べるとどうしても直観的に分かりにくい(これは、芸術性を優先した画面デザインのためかもしれないが)。
軍団長への委任指示。天翔記を確認してみたら、委任指示の種類はあちらのほうが多かった……。個々の武将は国に所属することになるため、複数の国を持つ軍団の場合、軍団長のいる国が本拠となる。 |
リアルタイムバトル。出陣した敵は、こちらの大将を集中的に狙ってくる。せめて、大名や軍団長を移動・戦闘中の集団(陣形)の後方へ配置させる方法があるといいのだが。攻城戦のほうは疲労するのが非常に早いので、荷駄隊の同伴は必須だ。 |
ただし、ワタシ自身、嵐世記の方向性を否定しているわけではないので誤解のないように。個々の新機軸、たとえば国人などのシステムは、今後熟成すれば“不確定要素の導入”と“ゲーム難度の低減”という両面で活かせる重要なシステムになりうる。リアルタイムバトルも、ブラッシュアップの道筋はAoEなどである程度見えているから、そこに“戦国ならでは”の要素をうまく組み合わせれば、相当おもしろくなるハズだ。
ゲーム全体のバランスや完成度も決して低いわけではない。むしろ、システムを「天翔記」プラスαにシェイプアップした一方で、敵味方入り乱れたダイナミックなバトルがしばしば展開されるという方向性は、今のPCゲームが向かう潮流に乗っていると言える。PCゲームのニューカマーや多忙な社会人からは「覚えやすく、短時間でインパクトのあるプレイができる」と支持を受けやすいシステムだろう。
以上から考えると、嵐世記のPKに求められる要素としては、
- コンピュータのAI(軍団や他大名)の強化
- リアルタイムバトルシステムの改良
あたりが満たされていれば、かなりオッケーではないかという気がする。