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インテル、携帯端末向け次世代メモリー技術への取り組みについて説明

2001年07月16日 22時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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インテル(株)は13日、報道関係者向けに、将来の携帯電話端末などに向けた、次世代の大容量・低価格の不揮発メモリー技術への、同社の取り組みについて説明した。米国時間の12日に、米国で同様の説明会を開いている。

インテルのワイヤレス・コンピテンシ・センターの遠藤千里部長
説明を行なったインテルのワイヤレス・コンピテンシ・センターの遠藤千里部長

現在、携帯電話をはじめとしたモバイル機器向けメモリーでは、DRAMとSRAM、フラッシュメモリーが使われている。インテルのワイヤレス・コンピテンシ・センターの遠藤千里部長によると、将来のモバイル機器向けメモリーとしては、低価格、低消費電力、不揮発性(電流を流さなくても内容が失われない)、プロセッサーなどのロジック回路と1チップ上に混載しやすい、といった特性が求められているが、現在のメモリーには技術的な限界が見え始めているという。

DRAMは、データを保持するために常に通電している必要がある(揮発性)ことと、回路の特性上、ロジック回路との混載が困難であるという。SRAMは多くのトランジスター(1セル当たり4~6)が必要なことから高価であり、揮発性。フラッシュメモリーは、書き換え/消去回数が有限(10~数10万回程度)で、他のメモリーと比較して書き換えが非常に遅い(μsのオーダーで、2桁程度遅い)。また、いずれも、データ(bit)を電荷のある/なしで判断する仕組みだが、この先プロセス技術の微細化がさらに進むことを考えると、この方法には物理的限界が近づいているとしている。

こうしたことから、現在インテルをはじめ各社では、次世代メモリーの研究を行なっており、“MRAM(Magnetic RAM)”、“FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)”、“Polymer Memory(Polymeric Ferroelectric RAM:PFRAM)”、“Ovonics Unified Memory(OUM)”といったメモリー素子の実用化を目指している。

PFRAM(Polymer Memory)とSRAM/DRAMとの比較
PFRAM(Polymer Memory)とSRAM/DRAMとの比較

インテルでは、これらの次世代メモリー技術の中で、携帯情報端末向けとしてフラッシュメモリーに替わりうることを念頭に、PFRAMとOUMの研究を進めているという。

PFRAM(Polymer Memory)の特徴
PFRAM(Polymer Memory)の特徴

PFRAMは、高分子化合物(一種のプラスチック)の電荷の偏りを利用してデータを保存する不揮発性メモリーで、DRAM/SRAMよりは低速だが、フラッシュメモリーよりは高速な読み出し/書き換え性能を持つ。シリコンウエハー上に記録ポリマー層を積層(現在は8層程度)できることから、シリコンの面積に比例するコストが非常に低くなるという。またロジック回路との混載も容易としている。

インテルはPFRAMの基本特許を持つ、スウェーデンのThin Film Electronics(TFE)社に投資ししている。現在PFRAMの共同開発を行なっており、テストメモリーアレイ(※1)を製造しているほか、TFEから技術ライセンスを受ける権利を持っているという。

※1 メモリーアレイ:データを保存するための最小単位が“メモリーセル”。メモリーセルが複数集まったものがメモリーアレイ。例えばDRAMやSRAMチップはすべてメモリーアレイである。

PFRAMは低価格、単位面積あたり容量が大きい、不揮発、混載に向くといった特徴から、インテルでは、携帯機器の大容量のデータ保存用途向けと位置づけている。

OUM、MRAM、FeRAMと、従来型メモリーとの機能比較
OUM、MRAM、FeRAMと、従来型メモリーとの機能比較

もう1つのOUMは、CD-RWやDVD-RAMなどで利用されている、カルコゲン化物に熱を加えることで結晶状態と非結晶(アモルファス)状態が変化(相変化)することを利用してデータを記録する不揮発性メモリー。フラッシュメモリーよりSRAM/DRAMに近い読み出し/書き換え速度(書き込みは100n秒程度と少し遅い)を持ち、高密度化が可能、ロジック回路との混載も容易といったメリットを持つ。書き換え/消去回数は有限ではあるが、1012回で、フラッシュメモリーの100~1000倍と余裕がある。

OUM(Ovonics Unified Memory)の原理と特徴
OUM(Ovonics Unified Memory)の原理と特徴。ちなみに開発した企業の名前のほうは“Ovonyx”で綴りが異なる

OUMは米Ovonyx社が開発したメモリー技術で、インテルはOvonixと共同で開発中。OUMのシングルメモリーセルの動作を確認し、高密度メモリーアレイ製造技術が今後の課題となっているという。現在、試験的に0.18μmプロセス技術を用いて4MBのチップを製造し、基本的なセルとアレイとしての動作を確認した状況(アレイ中のすべてのメモリーセルの動作の確認ではない)で、セルの最適化や製造プロセスなどの研究中であるという。

インテルではOUMを、SRAM/DRAMほどアクセスが速くないこと、書き換え可能回数に限界があることなどから、パソコンなどのメインメモリー用などには向かないが、携帯機器などのメインメモリー(プログラムコード、データ保存)向けとしては十分な性能を持つとしており、プロセッサーのキャッシュメモリーなど、非常に頻繁な書き換えが発声するメモリーなどを除き、ほとんどの携帯機器のメモリーに向くとしている。機器によってはより安価で大容量のPFRAMと組み合わせて使用することも想定しているという。

MRAMの原理と特徴
MRAMの原理と特徴
FeRAMの原理と特徴
FeRAMの原理と特徴

なお、インテルではほかの次世代メモリー技術について、携帯機器向けメモリーとしてOUMと比較した場合、MRAMは書き換え速度が速く(50n秒以下)で、書き換え可能回数に制限がないなどの点はメリットだが、OUMよりも高価なことや、磁性材料を使用するためにCMOSの半導体の製造プロセスとの親和性に何があることが問題としている。FeRAMについては、破壊的読み出し(※2)を行なう点や、読み出し/書き出し可能回数が有限(1010程度)であること、OUMと比べ高価になるとしている。

※2 データを読み出す際に、そのデータの値に影響を与える読み出し。例えばDRAMは電荷によってデータ記憶するが、読み出すことによってその電荷が少しずつ失われる(破壊的読み出し)。これを防ぐためにDRAMでは定期的にデータの値を保存し直す“リフレッシュ”動作を行なう必要がある。

今回の説明会は、インテルの技術開発の状況をアナウンスする目的で行なわれたものであるため、PFRAMやOUMがいつ頃、どれくらいの容量で製品化されるかといった具体的な点については明らかにされなかった。3G携帯電話が世界市場で本格化し、現行の携帯電話に比較してずっと大容量のメモリーが要求されるようになる、3~5年後には実用化段階を迎えるのではないかと推測される。

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