オムロン(株)と米セルポートシステムズ社は18日、都内で記者発表会を開催し、テレマティックス(※1)事業に関して、広範囲な提携を行なうことで15日に合意したと発表した。オムロンがセルポートに11億円を出資するほか、10月に合弁会社を設立する。
※1 自動車など移動体での携帯電話による通信や、インターネットサービスを提供する技術。セルポートシステムズは米シスコシステムズ社や米AT&Tワイヤレス社などが出資する、自動車向けのワイヤレスコミュニケーションシステムやテレマティックシステムを開発するベンチャー企業。設立は'93年で、本社はコロラド州ボールダー。日本市場向けの製品開発と販売を行なう日本法人、セルポートシステムズ(株)(本社東京都渋谷区、大和宏司代表取締役社長)を2000年4月に設立している。
オムロン取締役執行役員副社長の増田英樹氏 |
今回の両社の提携では、自動車内と車外のネットワークを接続するゲートウェイ技術、車内における携帯電話のハンズフリー機能、音声認識を統合する機器が対象となる。オムロンの持つM2M(Machine to Machine)技術(※2)、センサー技術、音声・画像認識技術と、セルポートの自動車向けモバイルネットワーク技術を組み合わせた新製品の共同開発と、日本およびアジア地域での市場開拓を行なう合弁会社の設立が提携の骨子。
※2 M2M技術:ハードウェア同士のデータ処理や通信の技術。米セルポートシステムズ社、会長兼CEOのパトリック・ケネディー(Patrick Kennedy)氏 |
具体的には、1)オムロンがセルポートが提唱するグローバルパートナープログラムに参加し、オープンなテレマティックス事業を共同で推進、世界規模でのデファクトスタンダードを目指す。2)セルポートに対し11億円の出資を行ない(※3)、相互の技術交流や共同開発の展開をスムーズにする。3)10月1日をめどに、日本、中国およびアジア圏向けの新商品開発、生産、販売を行なう合弁会社(※4)を設立する、としている。
※3 この出資によるオムロンのセルポートへの出資比率は6%となり、同7%の米シスコシステムズ社に続く米AT&T社と並んで第2位となる。※4 資本金は1~3億円を予定。社名、代表者は現時点では未定。オムロンとセルポートの出資比率は1:1を予定する。
発表会で挨拶したオムロン取締役執行役員副社長の増田英樹氏によると、テレマティックス事業に関しては2007年に北米で230億ドル(約2兆8000億円)、日本、欧州でもそれぞれ130億ドル(約1兆6000億円)という、巨大市場になると予想されているが、現時点では自動車メーカー/サービスプロバイダー各社が独自・専用の多数のゲートウェイシステムを使用しており、今後デファクトスタンダード化に向けての変化が予想されるという。こうした状況下で両社はデファクトスタンダードの獲得に向けて提携を行なうとしている。
オムロンとセルポートの提携で可能になるシステムやサービスの概要 |
増田氏によると、セルポートは移動体内部のネットワークと外部のネットワークへの接続や、そうした接続の際に最適なネットワークを設定するモバイルルーター、各社の携帯電話を車内システムに接続するためのコネクターといった製品・技術において欧米で強い特許を取得しており、この点も提携、出資に関するポイントであるとしている。
セルポートが持つネットワーク技術 |
オムロンが参加したグローバルパートナープログラムには、現在ドイツのALAC社、英Anglo Communications社が参加しており、オムロンが3社目となる。さらに2、3ヵ月以内に3社の追加を発表する見込みという。なお、ドイツのALACや英Anglo Communicationsとのパートナーシップは、セルポートが特許を持つハンズフリーシステムの製造販売に関するもので、「商品の共同開発までを行なうというパートナーシップはオムロンが初めてのもの」(セルポートシステムズ(株)大和宏司社長)としている。
セルポートが米国で発表した、車載用ハンズフリーシステムの携帯電話アダプターである『Cellport 3000』右上にあるのがベースとなるシステムで、各社の携帯電話向けのアダプターソケット(左および下)を介して接続する。現在ノキアとモトローラ用があるという |
両社が設立する合弁会社は、当初はハンズフリーシステムの販売といった自動車のアフターマーケットで事業を開始し、デファクトスタンダードを作り上げることで、自動車メーカーにシステム採用を働きかける考えだ。