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アナログ・デバイセズ、インテルと共同開発したアーキテクチャー搭載DSPを発表

2001年06月11日 19時48分更新

文● 編集部 佐々木千之

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アナログ・デバイセズ(株)は11日、都内で記者発表会を開催し、米アナログ・デバイセズ社と米インテル社が共同開発(※1)したDSPアーキテクチャー“マイクロ・シグナル・アーキテクチャ(MSA)”を搭載した16bit DSP“Blackfin(ブラックフィン)”ファミリーを発表した。

※1 アナログ・デバイセズとインテルは、1999年2月にDSPの共同開発について合意したと発表、2000年12月にその共同開発の成果としてマイクロ・シグナル・アーキテクチャ(開発コード名は“Frio”)を発表している。MSAの特徴は、DSPで実行されるソフトウェアをモニターし、あるタスクに必要なだけの動作クロックとコア電圧を、動的に変更しながら動作することや、アプリケーション開発言語としてC言語、C++言語をメインとして使用できるというもの。インテルは今年4月に東京で行なわれた開発者向け会議“Intel Developer Forum 2001 Spring Japan”において、次世代携帯電話用の“インテルMSA”プロセッサーの動作デモンストレーション(動作クロックは170MHzと340MHz)を行なっている。

DSP部門ディレクターのマーク・ギル氏
米アナログ・デバイセズ、DSP部門ディレクターのマーク・ギル(Mark Gill)氏
Blackfin DSPのロゴ
Blackfin DSPのロゴ

Blackfin DSPファミリーは、音声/画像のストリーミング処理や通信に最適化した低消費電力の16bit DSP。今回発表したBlackfin DSP『ADSP-21535』は最大300MHzで動作(最大200MHz動作製品も用意)し、600M(メガ)MACS(※2)の処理速度を持つ。300MHz動作時(コア電圧1.5V)の消費電力は350mWで、150MHz動作時(コア電圧1.0V)では80mW、100MHz動作時(コア電圧0.9V)の消費電力は42mWとなる。48KBの命令/データキャッシュ、260KBのオンダイSRAM、シリアルインターフェース、PCIバスインターフェース、USBインターフェースなどを備える。なおアナログ・デバイセズはMSA/Blackfin DSPの特徴である駆動周波数と動作電圧の動的制御機能をサポートするために、Blackfin DSP用の電源コントロールICを合わせて発表している。

※2 MMACSは1秒間に積和演算を100万回実行できるという処理速度単位。

Blackfin DSPの動的なパワーマネージメント機能
Blackfin DSPの動的なパワーマネージメント機能

Blackfin DSPのデータ演算ユニットには、2つの16bit乗算機、2つの32/40bit算術論理演算機(ALU)、4つの8bitビデオALU、16個の16bit/8個の32bit演算レジスターが含まれる。特徴の1つである画像処理関連の機能として、動き予測処理、ハフマンコーディング処理をサポート、8×8の離散コサイン変換(DCT)処理を300クロック以下で実行可能など、MPEG-2、MPEG-4、JPEGで使用される演算のソフトウェア処理をしやすくするとしている。例えばBlackfin DSPを使い、ソフトウェアでQCIFサイズ(176×144ドット)で毎秒15フレームのMPEG-2コーデック(エンコード/デコード)を行なった場合、消費電力は50mW以下に抑えられるという。

Blackfin DSP『ADSP-21535』の概要
アナログ・デバイセズが今回発表したBlackfin DSP『ADSP-21535』の概要

従来のDSPを使って画像、音声、インターネット通信を含むシステムを構築した場合は、ビデオ用に1つのDSP、オーディオ用に1つのDSP、ユーザーインターフェースやIPスタック向けに1つのマイクロコントローラーの、3つが必要だったが、Blackfin DSPであれば、1つで済むという。また、従来のシステムでは、それぞれのDSPやマイクロコントローラーごとにアプリケーションを開発する必要があったが、Blackfin DSPでは1つのRTOS(リアルタイムOS)カーネルの上にアプリケーションが乗る形となるため、統合して開発が行なえる。また、RTOSカーネル部分はアプリケーションから保護されており、アプリケーションの異常な動作がOSに影響を与えることはないという。Blackfin DSPは従来のアナログ・デバイセズのDSP製品群と比較して、およそ4倍以上の性能を持ち、消費電力を3分の1に抑えられるとしている。

Blackfin DSPの開発ツールである『VisualDSP++』(※3)もインテルと共同開発したもので、信号処理ソフトウェアのためのDSPコンパイラーと制御ソフトウェアのためのマイクロコントローラーユニットコンパイラーを統合した。VisualDSP++によって、より高速で小さなコード生成が可能という。なお、VisualDSP++で開発したバイナリーは、MSAベースのDSPであれば、アナログ・デバイセズ、インテル両社の製品で利用できる。

※3 VisualDSP++はアナログ・デバイセズの商標。インテルからは別の名前で提供される。

アプリケーション開発における、開発期間短縮の効果グラフ
VisualDSP++を使ったC言語によるアプリケーション開発における、開発期間短縮の効果グラフ

ADSP-21535は2001年9月にサンプル出荷開始、評価ボードとBlackfin DSP ICEを10月に出荷、2002年第1四半期に量産出荷を開始する予定。1万個ロット時の価格はADSP-21535-300MHzが34ドル(約4130円)、同-200MHzが27ドル(約3280円)となっている。今回の製品は当初0.18μmプロセス技術で製造するが、その後0.13μmプロセス技術での生産に移行する予定で、将来は動作クロックを1GHz以上に引き上げるとともに、コア電圧を0.7Vまで引き下げる予定。

同じMSAをベースとしながら、インテルは3G携帯電話にターゲットを絞っているのに対し、アナログ・デバイセズでは、PCIインターフェースやUSBインターフェースを備えていることにも現われているように、携帯電話だけでなく衛星放送向けやCATV向けセットトップボックスなど、リアルタイム映像信号処理が必要なインターネット機器も視野に入れている。インテルとの競合は3G携帯電話分野のみとなる模様だ。

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