日本アイ・ビー・エム(株)は11日、米IBM社が現地時間の8日、シリコンを利用したマイクロチップの処理速度を最大35%向上できる技術“ストレインド・シリコン(Strained Silicon)”を開発したと発表した。
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ストレインド・シリコン技術で試作した素子 |
これは、シリコン素材を引き伸ばすことで、トランジスター内の電子の移動を高速化し、処理速度を向上させる技術。同時に電力消費も低減できるという。同社では2003年までに製品化できると見ている。
| 従来の構造 |
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| 引き延ばされた状態 |
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新技術は、化合物内部の原子が互いに整列しようとする特性を利用したもの。原子の間隔が開いているシリコン・ゲルマニウムの基板上にシリコンを堆積させると、シリコン内の原子は基板上の原子と並ぶように強く引き伸ばされた状態(strained)になる。この状態のシリコン内部は、電気抵抗が小さくなり、電子の移動が最大70%高速化されるという。これによりチップの処理速度を最大で35%まで高速化できる。
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従来の構造を流れる電子のイメージ |
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ストレインド・シリコン構造を流れる電子のイメージ |
現在、半導体デバイスのサイズが原子レベルに達しており、ムーアの法則に沿った単純なスケーリングによる集積化が難しくなりつつあることから、同社ではトランジスターを小型化せずに高速化できるストレインド・シリコン技術により、他社より1~2年半導体技術で先行できるとしている。2003年までに製品化できると見込んでいる。