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今後2、3年はPC用プロセッサーに注力――日本AMD『Athlon MP』発表会詳報

2001年06月06日 23時45分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本AMD(株)は6日、同社初のマルチプロセッシング対応プロセッサー『AMD Athlon MP』とチップセット『AMD-760 MP』などを発表した。発表会には米本社からヘクター・ルイズ(Hector de Ruiz)社長兼COO(最高執行責任者)が出席し、今後の戦略について語った。

日本AMDが発表会場で配布した資料には、Athlon MP-1.0/1.2GHz、AMD-760 MPチップセットのほか、先週から秋葉原の一部店舗で販売されている『Athlon-1.4GHz』『Duron-950MHz』も含まれていた。Athlon MP/AMD-760 MPは、台湾の台北で開催中の“COMPUTEX TAIPEI 2001”において5日(台湾時間)に発表している。残りのAthlon-1.4GHz/Duron-950MHzは、6日(米国時間)に発表している。日本AMDのプロセッサー関連製品の発表は、各地での発表と同日に行なうことが通例だが、今回はルイズ社長兼COOの来日スケジュールに合わせたという(日本AMD広報)。

日本AMDの堺和夫代表取締役社長
日本AMDの堺和夫代表取締役社長

発表会では、まず日本AMDの堺和夫代表取締役社長が挨拶した後、ルイズ社長兼COOがスピーチを行ない、その後日本AMDのCPGテクニカルマーケティング部の小島洋一部長がAthlon MPについて説明した。Athlon-1.4GHz/Duron-950MHzについてリリース以外の説明はなかった。

ビジネスの中心はパソコン用プロセッサー

日本AMDの堺社長はルイズ社長兼COOを紹介するにあたって、日本AMDの業績について触れ「日本AMDのプロセッサービジネスは非常にうまくいっている。Athlon、Duronを搭載したデスクトップ用パソコンはコンシューマー向けだけでなく企業向けパソコンにも採用された。シェアについてはいろいろな調査があるが、デスクトップ向けでは50%近いというような数字も出ている。先頃発表したMobile Athlon 4を搭載したノートパソコンも登場、さらにスモールフォームファクターパソコン(スリムPC)にも、AMDのプロセッサーが採用されてきた」と、日本でのプロセッサービジネスの好調さをアピールした。

ヘクター・ルイズ社長兼CO
米AMDのヘクター・ルイズ(Hector de Ruiz)社長兼COO(最高執行責任者)

堺社長に紹介された米AMDのルイズ社長兼COO(※1)は、「日本市場は米国に次ぐ大きな市場で、スモールフォームファクターやモバイルパソコンにおいては特に重要な市場。日本でのビジネスは非常にうまくいっている。これは我々の製品の品質の高さが評価されたことによるものだ」と、日本でのビジネスを評価した。

※1 ヘクター・ルイズ社長兼COOは、米テキサス・インスツルメンツ社、米モトローラ社と渡り歩いた半導体の専門家。AMD入社直前は米モトローラ半導体製造セクター(SPS)の社長を務めていた。AMDには2001年1月に、それまで空席となっていた社長職として入社し、2002年4月に、現会長兼CEOのジェリー・サンダース(Jerry Sanders)から、CEO職を譲り受けることが決まっている。

次にルイズ社長兼COOは最近のAMDの業績について触れ「Athlon、Duronの成功によって2000年度(2000年1~12月)の利益が9億ドル(約1090億円)に達し、'96年以来の設備投資や研究開発による赤字を一掃できた。この成果は、過去のインテルとの裁判中に達した結論――インテルのマイクロコードを使ったクローンを使ってインテルプロセッサーとのピンコンパチ路線をとるよりも、Windowsとの互換性を重視して、独自のマイクロコード技術によるプロセッサー開発を選択した――によるものだ。'99年夏に投入したAthlonによって、AMDの形勢は大きく変わった。新しい競争のやり方によって、AMDは'90年代半ばころとはまったく違った企業になった」と述べた。

'96年以来の売り上げと利益のグラフ
ルイズ社長兼COOが示した、'96年以来の売り上げと利益のグラフ
AMDの研究開発費の伸び
AMDの研究開発費の伸び

また、サンダース会長の“体重400kgのゴリラと戦うためにはバーチャルゴリラになるしかない”という言葉に表わされるAMDの“バーチャルゴリラ戦略”について説明した(体重400kgのゴリラとは、巨大半導体企業である米インテル社を指す)。

「2000年には100億ドル(約1兆2000億円)以上もの売り上げをフラッシュメモリー事業から得ている。フラッシュメモリーでは富士通とパートナーシップを組み、合弁で設立した富士通AMDセミコンダクタ(FASL)社によるところが大きい。AMDのフラッシュメモリー設計ノウハウと、富士通の半導体生産ノウハウを合わせ、大成功を納めたものでこれこそがバーチャルゴリラ戦略だ。各社の持つノウハウを集めて全体として高い能力を発揮しようというもので、今後もプロセッサー事業などでも、さまざまな企業、開発者などと連携して開発を行なう。どんなに強い企業であっても1社だけで行なうのは得策ではない」と、今後も技術提携などを基本にしたバーチャルゴリラ戦略で、インテルに対抗していくとした。なお、AMDが発表しているプロセッサー関連技術の提携では、'98年に行なった米モトローラとの契約(モトローラの銅配線技術の導入)、2001年には米IBMとSOI(シリコン・オン・インシュレーター)技術導入に関する契約を結んでいる。

ルイズ社長兼COOは最後にパソコン用プロセッサーに関して触れた。それによると「2000年にAMDは2650万個のパソコン用プロセッサーを出荷し、パソコン用プロセッサーシェアとして10数%を得た。2001年第1四半期には730万個を出荷し、シェアは21%に達している。AMDの目標として、世界市場におけるパソコンプロセッサーのシェア(台数ベース)で30%台を維持するというものがあるが、1、2年のうちに達成できると考えている」

ルイズ社長兼COOが示したプロセッサーロードマップ
ルイズ社長兼COOが示したプロセッサーロードマップ。5月15日のMobile Athlon 4発表時に公開したロードマップから変更はない

「今日はワークステーション向けのPalominoコアのプロセッサーであるAthlon MPを発表したが、第3四半期にはデスクトップ向けにPalominoとMorganコアのプロセッサーを発表する。来年の下期には、いよいよHammerファミリープロセッサーが登場し、AMDが挑戦したいと願ってきたハイエンドマーケットに参入できるようになる。インテルはItaniumを発表しているが、Itaniumでは既存の32bitアプリケーションがネイティブモードでは走らない。Hammerファミリーでは、既存の32bit資産を使いつつ、必要ならば64bitのパワーを利用できるので、メリットは大きい。年末までにはサンプルを出荷する予定だ」

「現在、半導体市場はドットコム関連企業の落ち込みによって、通信関連製品の売り上げが急減している。半導体市場全体では今年は15%程度落ち込むだろう。ただしAMDはそのような状況の下でも、PCプロセッサー新製品を次々と投入することで、売り上げ増を見込んでいる。今後2、3年間はPC関連市場にフォーカスしていくつもりだ」と、第1四半期の好調を受け、強気の発言を繰り返した。

Athlon MPでワークステーション/サーバー市場に参入

ルイズ社長兼COOのスピーチ後、Athlon MPについて小島部長が説明を行なった。Athlon MPが狙う市場は、銀行や証券など金融関連、アニメーションやビデオ編集などのデジタルコンテンツ制作、回路部品設計などのエンジニアリング向けのワークステーションと、キャッシュやNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)、ウェブなどのアプライアンスサーバーの市場。今回発表したAthlon MPとAMD-760 MPの組み合わせでは、2基までのマルチプロセッシングに対応している。4基以上のマルチプロセッシングには、2002年下期投入予定ののHammerファミリーで対応する予定で、Athlon MPでは2基以上のマルチプロセッシングの予定はないとしている。

日本AMDのCPGテクニカルマーケティング部の小島洋一部長
日本AMDのCPGテクニカルマーケティング部の小島洋一部長
『Athlon MP』と『AMD-760 MP』
『Athlon MP』と『AMD-760 MP』

Athlon MPは、5月に発表したMobile Athlon 4同様、Palominoコアのプロセッサーで、従来のAthlon(Thunderbirdコア)と同じ0.18μmプロセス技術を使用しているが、同クロックで約20%低い消費電力、データプリフェッチ機能付き2次キャッシュ(384KB)、インテルのストリーミングSIMD拡張命令(SSE)互換のマルチメディア命令セット“3DNow!プロフェッショナル”、マルチプロセッシングのための“Smart MPテクノロジ”を搭載する。

AMD-760 MPチップセットの概要
AMD-760 MPチップセットの概要
パフォーマンス比較グラフ
Athlon MPデュアルシステム、Pentium IIIデュアルシステム、Pentium 4シングルシステムのパフォーマンス比較グラフ

Smart MPテクノロジは、チップセットとプロセッサーごとに独立した2系統のシステムバス(266MHz)で接続し、マルチプロセッシングに適したキャッシュ方式“MOESI(Modified Owner Exclusive Shared Invalid)”や、高速のプロセッサー間通信バスなどの、マルチプロセッサー対応技術。発表会ではインテルのPentium III-1GHzデュアルシステムとのパフォーマンス比較グラフや、3Dアニメーション作成ソフトLightWave 3D 6.5を使った、1プロセッサーと2プロセッサーの処理速度比較デモが行なわれた。デモでは、レイトレーシングによる3Dオブジェクトのレンダリングが行なわれ、Athlon MP1つで34秒かかる処理が、2基構成とすることで20秒で終了した。デュアルシステムとすることで、最大73%の性能向上が図れるとしている。

LightWave 3D 6.5によるレンダリングのデモ
LightWave 3D 6.5によるレンダリングのデモ。2基のAthlon MP-1.2GHzで20秒、1基では34秒かかった
Athlon MPの今後のロードマップ
Athlon MPの今後のロードマップ

日本においてAthlon MP搭載システムは、(株)フェイス、(株)神代(フロンティア神代)、(株)エムシージェイ、(株)プロトン、(株)フリーウェイ、アロシステム(株)(パソコン工房)、ぷらっとホーム(株)、(株)アイ・オー・ネットから順次発売する予定。

(株)プロトンが発売予定のAthlon MP-1.2GHz×2搭載パソコン『UXPK7-1200D』(仮称)
(株)プロトンが発売予定のAthlon MP-1.2GHz×2搭載パソコン『UXPK7-1200D』(仮称)
デジタルビデオ処理専用機『StormRack』
米カノープス社が発売を予定している、デジタルビデオ処理専用機『StormRack』。Athlon MP-1.2GHzを2基搭載し、複数のデジタルビデオ素材をリアルタイムに合成して表示できる

PCプロセッサーに注力することで業績の拡大を目指すAMD

堺社長、ルイズ社長兼COOの言うように、AMDはAthlon投入以来急激に業績を伸ばしてきた。米国における景気後退によるパソコン市場の減速も起きているものの、Athlon/Duronは企業向け市場に浸透しつつあり、さらにAMDは5月に、一時撤退に近い状態であったモバイル市場にMobile Athlon 4を投入、今回はこれまで手をつけていなかったワークステーション/サーバー市場向けのAthlon MPを発表した。半導体市場がシュリンクしてもAMDは売り上げを伸ばす、というルイズ社長兼COOの言葉も、新しい市場へ参入するためと捉えると理解しやすい。Athlon自体のコストパフォーマンスの高さは、すでにユーザーにもパソコンメーカーにも浸透したと言えるが、コンシューマー向けパソコンと比較して、格段に信頼性が求められるワークステーション/サーバー市場で、多くの実績を持つインテルに、AMDがどこまで食い込めるか。技術面だけでなく、マーケティング面からも、Athlonの次の期待の星であるHammerファミリーにうまくつなげていくことができるかどうか、AMDの正念場が来たといえるだろう。

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