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DC版「PHANTASY STAR ONLINE Ver.2」発売記念! ソニックチーム中裕司氏の“オンラインゲーム論”に迫る!!

2001年06月07日 20時18分更新

文● 小嶋・澤村/スタジオ百哩

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ネットワークゲームのパイオニア、その苦労の数々

──先ほどからの話をお聞きしていると、ネットワークでいろんな人が集まってその場を共有している、ということに重点を置かれているように思うんですが、そもそも新しいゲームを作るにあたって、“ネットワークゲーム”を選択したのはなぜですか?

ネットワークプレイ
世界中のプレイヤーと一緒に、ひとつのゲームを楽しむ。PSOは、その理想に挑戦した作品だ

【中】ネットワークゲームの何が面白いかというと、人とやるということですよね。いくらコンピュータの思考ルーチンを強化しても、人間には絶対かなわないですから。その“人とやる”という所ですけれども、もともと“他人とゲームをする”というのが本当に面白いのか、というところに疑問を感じてたんですよね。その疑問が、カプコンの船水さんの「ストリートファイターII」で、知らない人同士がゲームセンターで戦う状況が生まれて打ち破られたんです。そういうものを、ネットワークでやれないか、と。それもインターネットを使って全世界の人々と遊べればいいな、と考えたんです。

──ソニックチームとしてのネットワークゲームは、ドリームキャスト版「チューチューロケット!」が最初ですよね?



中氏

【中】「チューチューロケット!」には、ネットワークゲームのノウハウを蓄積する、という側面もありましたね。インターネットはどれぐらいイケるのか確かめるということも含めて。「チューチューロケット!」は、通信環境が悪くてもゲームとしては成り立つように作ったんですが、実際にやってみると意外と速い、ということに気づいたんです。本当はテレホーダイの時間になったとたんにゲームにならなくなるんじゃないかとも考えていたんですけれど、テレホーダイ中のトラフィックとか見てても「なんだ、これだったら十分いけるな」と。そんなことがあってPSOの制作に踏み切ったんです。

──通信インフラのハードルは越えられるだろうというところで制作が始まったと?

【中】そうですね。それで、こう説明すると「最近はブロードバンドが増えてきたからいいでしょう」って言われるんですけど、ヘタするとブロードバンド回線の方が悪いところがありますからね、いっぱい。

──そうなんですか?



通信環境整備にもひと役買っているPSO
日本の通信環境整備にもひと役買っているPSO

【中】ブロードバンド系のプロバイダは難しいですよ。柔軟性に富んでいないというか、非常に“固い”ですね。まあ、ひとことで固いと言っても、セキュリティの面ですとかメンテナンスの問題ですとか、いろいろあるんですけど。もうプロバイダさんががあまりにも多すぎて、しかもシステムはバラバラですから。みなさん簡単に「ネットワークで何か作ろう」と言いますけど、メチャメチャ大変ですよ。例えばPCであればOSがすごくカバーしてくれますし、たくさんのメモリとたくさんのHDDがあるから、どんなプロバイダにも繋がるようにするのは別に難しくないんですよ。けれど、それをコンシューマーゲーム機でやるというのは、もう本当に大変で(笑)。
 最近、ブロードバンド関連のISPさんとかに「PSOがプレイできるのか」というユーザーからの質問が多いらしいんですよ。そんなこともあって、ブロードバンドのプロバイダさんからウチの方に「PSOが動くか検証したい」とか、「PSOを動かすためにパッチをあてたので検証に立ち会ってほしい」とか、すごくたくさんの問い合わせがあります。そういう意味では今“日本の通信インフラをPSOで整備していっている”というような感じもありますね。ネットワーク上でゲームが走る環境作りにPSOはすごく役立ったんじゃないかと。
 だから今後PSOをはじめようという人は、かなり楽だと思いますよ。いろんなプロバイダさんのところでデータが上手く通せるようになってきているんで。まあ、ネットワークゲームの先陣を切ったパイオニアとしての苦しみってのはとてもありましたし、今も日々いろんなトラブルに悩まされてます(笑)。

──今言われた“パイオニア”という点に興味があるのですが、なぜ先陣を切ってネットワークロールプレイングゲームの分野に飛び込まれたんでしょうか?

【中】新しい物好きだからです(笑)。何でも1番が好きだからですね。それ以外の何ものでもないですよ。よく「そんな苦労してまで」と言われますけど、やはり何でも苦労してやらないと。何でも1番がやっぱりいいというか、“世界初”という言葉を使いたいんですよ、いつも(笑)。そうすると、苦労するのはしょうがないんですよね。

──PSOを発売する前に、ネットワークゲームであることのリスクというのは考えましたか? ネットワークということでさまざまなユーザーが参加してくると、普通のゲームに比べて不確定な要素が高くなると思うんですけど。



【中】正直なところ、あまり考えてなかったので、発売以来サーバ側のいろいろな対応に追われてました。これはもう勉強不足だったなと思いますし、甘すぎた所もありますし……。本当は発売したら、次のゲームのことを考えようと思ってたんですけど、全然終わらない。対応はエンドレスに続いてますよね。多分、今年の年末までは確実に引っ張ると思います。何らかのダウンロードやオンラインのクエストの配信を常に続けていく計画ですので。



購入者の6割以上がネットワークに接続

──ネットワークゲームを作るうえで、なぜRPGと言うジャンルを選択したのか、その理由をお聞きしたいのですが……。

PSOでは、マスターシステム版RPG「PHANTASY STAR」の世界観を一部利用しているが、実際はほとんど新作と言っていい

【中】コミュニケーションをしながらというところも含めて、毎日毎日プレイして何らかの成長をするものがネットワークに向いているんじゃないかなという考えがあったんです。アクションとかレースゲームとか、パっとやって勝敗が決まるというのもいいとは思うんですけど、ゲームへのモチベーションを保ち続けるのは非常に難しい。やっぱり、何らかのキャラクターが成長していくほうが、よりネットワークに向いているなと思ったんです。実際、海外でヒットしているネットゲームを見ても、RPGかリアルタイムストラテジーしかないですよね。で、僕自身は戦略的なゲームってあまり得意じゃないからRPGで。RPGなら、マスターシステムの「PHANTASY STAR」を作ったことがあるので、その世界観を使おうという話になったんです。

──“PHANTASY STAR”シリーズの新作としてPSO、そしてVer.2を見ると、前作からずいぶん時間が経っていましたが?



中氏

【中】SF調のRPGを、というアイディアで最初のマスターシステム版「PHANTASY STAR」を作ったんですが、ずっと「続編を作らないのか」って言われ続けていたんですよ。だから、せっかく名前が通っているタイトルだし、これを使おうと。ネットワークゲームというだけで一般の人には敷居が高いので、入りやすくするという意味もありますね。実際にはSF調であることと、一部の用語が共通なだけなんですけど、仮にまったく新しいタイトルを付けていたら多分第一印象の段階で興味を示してもらえなかったと思うので、そういう意味では「PHANTASY STAR」で正解でした。

【中】オンラインゲームって非常に面白いにもかかわらず、第一歩を踏み出すにはあまりにも障害がありすぎる。ほんの少しでもそれを和らげていかないと、全然伸びていかないですよ。業界の中にいると皆さん簡単に「ネットワークネットワーク」と言いますけど、世間を見てみると、ほとんどの人は全然そんな方向を向いていないですから。やれば面白い、というのもごく一部の人が理解しているだけで……。徐々にオンラインで遊ぶ人を増やしていきたいですけど、なかなかそうはならないですよね。
 そんななか、オンラインゲームの発達にPSOは貢献してると思いますよ。コミュニティーも形成されてますし。開発中にさまざまな会社の人と話をしたときに「購入者の30%がオンライン登録して、常時接続してくるのは約3%ぐらいだ」という話があったんです。でも、思っていた以上に接続率が高くてビックリしました。実質的に、購入した人の65%ぐらいが登録してますね。常時接続率も3%どころか10%ぐらいは軽く出ていますから。



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