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自己の選択によって自由を得るということを、常に目指している

【全記録】Linus Torvalds氏インタビュー ― サイン本プレゼント

2001年05月29日 17時38分更新

文● 編集部

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座っているLinus氏
[生越氏] でも、時として楽しくないこともしなくてはいけないんじゃない?
[Linus Torvalds氏] 人前で話すというのが大嫌いで、本当にやりたくないんですけれども。Linux初期の頃はLinuxについて話ができる人が誰もいなかったわけで、話す人がいないといけないと思いまして、自分がやるほかないということで何回か話したりしました。おかげさまでLinuxについて話ができる人が増えましたので、今はやらずに済んでます。大勢の人の前に出て話をするのは嫌ですね。
[生越氏] 人前で話すというのは、楽しいときと楽しくないときがあるから。でも、楽しいときもあるでしょ? 人前で話すときは。
[Linus Torvalds氏] スピーチをすることが楽しいと思えることも、なくはないですが、それは聞いてくださっている方と題材によります。Linux初期の頃は「テクノロジーについて話してください」という機会が多かったので、それは個人的に興味があることですから、当然それに関して人前で話すのは、ある程度楽です。でも最近はLinuxの政治的な背景についても話してくれとか、社会的な現象についてとか、テクノロジーの将来についてとか……。そういうことについては興味がないので、話したくないですし。仮に興味があることを話してくれということになって、30分から45分のスピーチを用意しなければならないというときに、ある程度準備をしないといいトークにならない。さらに行く場所によってスピーチ内容を変えていくといった準備をしていくと、自分の生涯の中の1週間を準備のために費やさなければならないということになるし、準備をしなければスピーチの出来が悪いという結果になってしまいます。その1週間のことを考えるならば、自分のテクノロジーの仕事をやったほうがよっぽどいいですし、それでないのだったら家族と過ごしたほうがいい。特に質疑応答などの楽しい部分もありますけれども、それ以外は基本的に神経を使います。スピーチするのが好きだという人を私は知りません。いるのでしょうかそんな人。
[生越氏] ハハハハ。うーん、やっぱり技術的なスピーチは楽しいけれども、政治的なスピーチは、私たちエンジニアやプログラマはそれほど楽しいとは思わないよね。
[Linus Torvalds氏] テクニカルな話に関しても、Newsgroupのディスカッションのほうが効果があると思う。自分がただ用意していったスピーチを読んで聴いてもらうよりも、よほど楽しいと思うのですが。もっとダイナミックで動きがありますし。
[生越氏] (通訳に向かって)何人かの、彼(Linus Torvalds氏)が直接話をしているのを見ている人の中には、彼はフレーム(メーリングリストなどで激論 ― 時としてケンカになること)が好きだと思っている人がいるのだけれども、それは喜んでやっているのか、仕方なくやっているのか?
[Linus Torvalds氏] フフフ。Sometimes.
[生越氏] ウワッハハハハ!
[Linus Torvalds氏] ある種徹底的に誰かとやり合って議論して、徹底的にやるというのは開放的であることはあります。でも年に2回くらいしかやらない。あまりネガティブなそういったことをやってしまうと非生産的ですし。個人的なレベルで言いたいことをワーっと言うのは気持ちがいいという面はあるのですが、それは意識してなるべくやらないようにしています。自分は議論するのはすごくうまいほうだと思うのですが、あくまでテクニカルなレベルを離れないように努力しています。感情的になってしまって相手が傷ついてしまうと、自分が出したメールをその人が読んでくれなくなってしまって、その人とのコネクションが断絶してしまうので、感情的にならないように努力しています。
[生越氏] じゃあ、最後にひとつだけね。次のバージョンの作業はいつからはじめていつ頃終わる予定ですか?
[Linus Torvalds氏] (宙をみあげて……)2.5を開始するのが、6月終わりか7月中旬です。終わりはいつということは言わないようにしています(笑)。前の場合は9カ月といっていたのが2年間になってしまいましたし。1年周期を目標としているのですけれども、もちろん開発初期の、新しいフューチャーを作っている段階はみんな面白くて楽しくやっているんですけれども、それを安定化させるという作業は、本当にたいへんですが楽しくはないのです。やらねばならないのですけれども、誰もすすんでやりたいということにはなかなかなりません。 変化のどの程度かわからないから、2.6になるか3.0になるかわからないけれども、それを2002年に出そうとしています。
[生越氏] 誰もこう……、言ったとおりにできるとは思っていないので(笑)。
[Linus Torvalds氏] (笑)一応はちゃんと目標は目指している。
[生越氏] 誰も信じていないし(笑)、それよりも、ちゃーんとしたものが出るほうが期待されているし。
[Linus Torvalds氏] そうですね。これまでの2.4もそうですが、安定したカーネルを出すということについては自信があります。

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