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自己の選択によって自由を得るということを、常に目指している

【全記録】Linus Torvalds氏インタビュー ― サイン本プレゼント

2001年05月29日 17時38分更新

文● 編集部

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生越氏とLinus氏

[生越氏] 会社で自分の好きなことをさせてもらっている/自分の時間をLinuxに費やすことができる。そうしたら、普段の頭の中はどうやって切り替えているの? たとえば、私は自分が今考えているプログラムのことで頭がいっぱいになっちゃって、「ほかのことをやりたいな」と思いながらそのことを頭の中に入れておくことができないんだけれども。好きなことをやっているのはひとつじゃないわけで、それはどうやって頭を切り換えているのでしょう。
[Linus Torvalds氏] 実は切り替えはそんなに難しくないです。TransmetaではAdvanced Technology Groupeという、次世代のそのまた次のジェネレーションの開発にあたっているチームにいて、重要なことは自ずと明らかになってくるし、去年の夏はカーネル2.4を出すことに忙しかった。基本的にどうするかというと、1週間ごとに集中してそれを切り替える。たとえばTransmetaの仕事が忙しいときは1週間やって、でもその間Linuxコミュニティで動きがあるときはそちらのほうを1週間集中的にやることに切り替えたりしますし。その時どちらに重要な動きがあるのかというところで変えるわけです。同時にひとつのことだけ長期間やっていると飽きてきますので、Transmetaの仕事をしばらくやって飽きたら変える、飽きたら変えるという形で切り替えています。
[生越氏] それをしていいというのは羨ましいな。私は。
[Linus Torvalds氏] 自由というか……、もちろん有名になったということも利点ですが、6年前も自分の好きなことができていて。
[生越氏] うん、それはそうだ。
[Linus Torvalds氏] 自分がどういう選択をするか? という問題だと思います。当時大学にまだいようと思ったことも同じことで、「好きなことを自由にやりたい」と。Linuxではない会社に入ったのも、Linuxで「あなたはこうすべきだ」といろいろな人に言われたくなかったから。そういう意味で自由でいたいために選択しましたし。

どちらの辛い部分を取って、どちらの利点を取るかということだけを、自分で選べばいいということです。大学にいると、自由で好きなことをやって、面白いことをやっていればよしとしてくれるのですが、そのかわりお金にはならないということもあって。ただ、私としてはその自由がありがたかったので、お金にならなくてもまったくよかった。米国に行くことに決めたのも、やはり自分がしたいこと ― Transmetaで面白いことができたので行くことに決めましたし。そういう意味で、自分の自由というのを確保しながらやってきました。もちろん幸運じゃなかったとはいいません。ただ、誰にでも自由の確保はできると思っています。もちろん、やっていることに対して自分が秀でていたり才能があったらなおいいですけれども。
[生越氏] 自由というのは“選ぶ”ということだということですね?
[Linus Torvalds氏] そうですね。自己の選択によって自由を得るということを常に目指している、努力している。まあ、Linuxを作るのが可能だったのは、フィンランドにいたからということで、大学は無料で行けるから、そういうことができたのであって、ほかの国にいたりほかの状況にあったら、そういったことは可能ではなかったかもしれないというのはありますけれども。もちろん米国に行ったとき ― Transmetaに行ったときはリスクはありましたけれども、そのリスクを負うことにして、いい形になりました。いつも誰でもそうだと思うのですが、自分がしたいことと出世街道を天秤にかけて、どうしたいのかと。どちらが欲しいのかを選んで、なによりも楽しむべきだと思うのです。あらゆる人は自分のやっていることを楽しむべきじゃないかなと思います。
[生越氏] そうすると、今日は私いくつか質問を作ってきて、モチベーションを維持するには? という話を聞こうと思ったんだが、それはあまり聞く必要がないのかな?
[Linus Torvalds氏] ほんとうに最初から……大学に行くころから自分が何をしたいのかがわかっていた。自分のしたいこと、好きなことがわかっていました。でも、私の友人もそうですが、大学に行く頃に自分が何をしたいのかわからないで、漫然と行く人も多くて。自分のように「これだ!」と誰もがわかっているというワケではないことも、わかります。自分が好きなことがこれだけハッキリわかっていると、モチベーションを維持していくことは必要がなくて、自動的にモチベーションがありつづけることになると思います。

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