FIC AD11(ボードリビジョンV1.2)
次にAD11を手に取った。やはりCPUの倍率操作機能がもとから備わってる点はありがたい。ただ、気になったのはFSB設定クロックの最高出力周波数とその選択範囲である。マニュアルには、詳しい記述が見あたらず、ながめているだけでは全くわからないのでBIOSセットアップ画面からFSB設定クロックの項目を確認した。結果、最高150MHzまでの出力が可能なことがわかった。しかし、1MHzステップで…と言う訳ではなく100/103/105/110/113/117/133/138/140/144/150MHzと少々粗い。しかし、マザーボード上のPLLクロックジェネレータ(以下PLL-IC)には“ICS9248BF-153”が実装されており、そのデーターシートを入手して調べたところPLL-ICそのものの出力周波数としては上述のクロック以外にいくつか出せるようだ。例えば135MHzや146MHzと言った設定も可能なはずである(【表1】参照)。
【表1】ICS9248BF153の出せるFSB設定クロック
CPU、SDRAMクロック | PCIクロック | AGPクロック |
---|---|---|
90 | 30.00 | 60.00 |
95 | 31.67 | 63.33 |
100.7(※) | 33.57 | 67.13 |
100.99 | 33.66 | 67.33 |
102 | 34.00 | 68.00 |
103(※) | 34.33 | 68.67 |
104 | 34.67 | 69.33 |
105(※) | 35.00 | 70.00 |
106 | 35.33 | 70.67 |
107 | 35.67 | 71.33 |
108 | 36.00 | 72.00 |
109 | 36.33 | 72.67 |
110(※) | 36.67 | 73.33 |
111 | 37.00 | 74.00 |
112 | 37.33 | 74.67 |
113(※) | 37.67 | 75.33 |
114 | 38.00 | 76.00 |
115 | 38.33 | 76.67 |
116 | 38.67 | 77.33 |
117(※) | 39.00 | 78.00 |
118 | 39.33 | 78.67 |
119 | 9.67 | 79.33 |
120 | 30.00 | 60.00 |
133.33(※) | 33.33 | 66.67 |
135 | 33.75 | 67.50 |
136 | 34.00 | 68.00 |
138(※) | 34.50 | 69.00 |
140(※) | 35.00 | 70.00 |
142 | 35.50 | 71.00 |
144(※) | 36.00 | 72.00 |
146 | 36.50 | 73.00 |
150(※) | 37.50 | 75.00 |
どうにかして全てのFSB設定クロックがセットできないか調べてみたところ、製品に添付されているCD-ROMに収録されたClockometerなるユーティリティーを使用すれば、Windows上からFSB設定クロックを操作できることを知った。
ところが、収録されていたClockometerのバージョンは、Ver.1.2であり、なんとAD11をサポートしていないのである。そこで更に調査した結果、FICのサイトに最新のClockometer Ver.2.0 for Windows 9x/NT/2000/Meが登録されていることをつきとめた。早速、ダウンロードしてインストールしてみたところAD11で使用可能となったのだが、残念な事にPLL-ICが出せる全てのクロックを設定できないのだ。「ムムム...これでは面白くない」。そこで、最後の手段としてH.Oda!氏が開発されたSoft FSB(バージョンはVer.1.7 final)を使うことにした。ただし、もとから“ICS9248BF-153”をサポートしていないのでプラグインファイルを書く必要がある。プラグインファイル作成に必要なパラメータは、PLL-ICのデーターシートから導き出すのだが、筆者が算出した数値を下記の表(写真)に書き出してみた(一部に必要なデーターがデーターシートに見あたらないので適当な数値もある)。
【表2】SoftFSB用プラグインファイルパラメータ表
さて、筆者が作成したプラグインファイルをSoftFSBに読み込ませてみたところ(プラグインファイルの登録方法は、SoftFSB“SFSB17F.EXE”に同梱のSOFTFSBJ.HTMを参照)、目的としていた133.3MHz~150MHzを含めてPLL-ICが出せる全てのFSB設定クロックが選択できるようになった。試しに120MHzや135MHz(BIOSセットアップやClockometerでは設定できない)を選択してSet FSBボタンを押すとそれぞれの指定通りに動作した。ただし、AD11のFSジャンパーを133MHzにセットしている場合は、SoftFSBで119MHz以下のクロックを設定するとフリーズするが、これは、マザーボード側の仕様である。また、同様にFSジャンパーを100MHzにセットした場合、FSB設定クロックを120MHz以上にセットするとフリーズするので誤解のないように願いたい(おそらくPCIクロックのシフト条件が矛盾するからだろう)。
DDR電圧測定 |
他に、オーバークロック装備に関して言及すると、DDR電圧をコントロールできない点が挙げられる。これは、少し回路を追ってみたのだが、もとからその予定はなかったようで、2.65Vに固定されていた。なお、筆者が手にしたAD11の場合、DDR電圧を制御しているデバイスは、ボード上にU17と印されたSemtech製“EZ1580CT”であり、CPUソケットとDIMMスロットの中間に位置している。これは、5ピンの素子であるが、このうち2ピンの電位をR368とR369で調節する事により出力電圧を決定している(詳細はデバイスメーカーのデーターシートを参照してほしい)。
最後にもう一点、ノースブリッジにはファン付のチップセットクーラーが装着してあり、嬉しい配慮ではあるのだが、念のためにチップセットクーラーを取り外してみるとサーマルコンパウンドなどの塗布はなかった。このチップセットに限ったことではないが、やはりオーバークロックを前提とするならば、チップとヒートシンクのすき間には何らかの処置が必要かと思われる。筆者は、チップ上面、中央部に第2回のお話で紹介した“SCH-20”を少し多めに絞りだしてチップセットクーラーをもとに戻しておいた。