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『m500』『m505』発表会詳報――「今日から第2フェーズ」とウィル社長

2001年04月24日 00時41分更新

文● 編集部 佐々木千之

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パーム コンピューティング(株)は23日、都内で『m500』『m505』の新製品発表会を行なった。クレイグ・ウィル(Craig Will)代表取締役社長は席上、「日本法人設立から1年が経ち、今日から第2フェーズに入る。企業内のeメールやグループウェアにいつでもアクセスできるビジネスのための端末として企業向けに売り込んでいく」と挨拶した。発表会ではこのほか、Palm OS 4.0の新機能である“Web Clipping”機能や今後のマーケティングについて説明が行なわれた。

代表取締役社長クレイグ・ウィル氏
パーム コンピューティング代表取締役社長クレイグ・ウィル氏

ウィル氏の挨拶に続き、同社プロダクトマネージャーのジム・エングルソン(Jim Engleson)氏と営業部チャネルセールスマネージャーの藤原正三氏が新製品説明を行なった。m500とm505はそれぞれモノクロ/カラーディスプレーを搭載するPalmハンドヘルドでは最も薄く(m500は10mm、m505は13mm)最も軽量(m500は113g、m505は139g)であることや、電池をリチウムイオン充電池からフィルム型のリチウムポリマー充電池に変更したことで、バッテリー寿命が延びたことなどが紹介された。

ジム・エングルソン氏と藤原正三氏
プロダクトマネージャーのジム・エングルソン氏(右)と営業部チャネルセールスマネージャーの藤原正三氏(左)

特にm505のディスプレーについては、同社の初代カラーディスプレー搭載機であるIIIcが透過型の256色表示だったのに対して、反射型の6万5000色表示TFT液晶ディスプレーとなり、明るいところでも暗いところでも良好に使用できるとした。また、暗いところでライトを点灯させた場合、ディスプレーだけでなく、入力エリア部分も照らされるという。

今回から採用されたSDカードスロットについては、なぜSDカード/MMCを採用したのかという理由が示された。それによると、200社以上がサポートする業界標準であること、サイズが小さい、I/O機能を持つ、オープンプラットフォーム、セキュリティー機能、データ転送速度(毎秒10MB)などが理由としている。パーム コンピューティングが発売予定の“PalmPak Games Card”を使って、スロットに刺すだけでそのカードのフォルダーが開き、カード上から直接アプリケーションが実行できるというデモンストレーションが行なわれた。

SDカードアプリケーションのデモ
ゲームカードをSDスロットに差すと自動的にそのカードのアイコンが表示される。右上にSDカードのアイコンが表示されている
SDカードを選んだ理由
パームがSDカードを選んだ理由

HotSync機能については、Microsoft Outlookと連携してメールやスケジュールデータのやりとりができる『Pocket Mirror日本語版』を標準添付することや、HotSyncソフト“Palm Desktop”からソフトをインストールする際に、本体かSDカードかを選択できることが紹介された。また今回から搭載された新しい日本語フォントも示された。

新しいPalm Desktopでは、プログラムの格納先を選択できる
新しいPalm Desktopでは、本体にSDカードが刺さっているとプログラムの格納先を選択できる
右側がm500/505に採用された新型フォント。一回り大きくなった印象だ
右側がm500/505に採用された新型フォント。一回り大きくなった印象だ

続いてマーケットデベロップメントマネージャー橋澤満貴氏が、SDカードを利用したコンテンツの発売を予定しているコンテンツプロバイダー3社を紹介し、各社が自社製品の説明を行なった。(株)三省堂は“デイリーコンサイス英和・和英・国語辞典”、(株)昭文社はビジネスマン向け地図・ガイドコンテンツ“シティガイド マップル”、(株)ダイヤモンド・ビッグ社が海外の都市ガイド情報“地球の歩き方”を発売予定としている。

ダイヤモンド・ビッグ社の“地球の歩き方”のデモ
ダイヤモンド・ビッグ社の“地球の歩き方”。ニューヨークのマンハッタン島の地図に、レストラン、劇場の情報を表示させている
レストラン1件の情報を表示させてみたところ
レストラン1件の情報を表示させてみたところ

さらに、コンテンツディベロップメントディレクターの山辺仁美氏がWeb Clippingサービスの詳細についても説明した。米国で開始しているPalm.netのような、Web Clippingコンテンツを集めて必要なものだけをダウンロードできるコンテンツサイトを、夏をめどにオープンする予定としている。なお5月末の製品発売時点で提供されるWeb Clippingコンテンツは以下の通り。

  • 経済・金融ニュース(ブルームバーグ)
  • 天気情報((株)ウェザーニューズ)
  • IT、企業関連ニュース((株)日経ビーピー)
  • オンライントレード(イー・トレード証券(株))
  • 株価情報(東京三菱TDウォーターハウス証券(株))
  • グルメガイド((株)クリエイティヴ・リンク)
  • ゴルフ情報((株)ゴルフダイジェスト・オンライン)
  • 音楽、スポーツ情報(社本産業(株))
  • 海外旅行情報((株)ダイヤモンド・ビッグ社)
  • 地図サービス((株)アーパス)
  • タウン情報((株)スコツプカンパニー)
  • 生活情報サービス(ニフティ(株))
  • 転職情報((株)ダイジョブ・ドットコム)
  • 名刺交換サービス(ソシオウェア・ドットコム(株))
  • 文字数無制限メール(ネットビレッジ(株))
Web Clippingの仕組み
Web Clippingの仕組み
ウェザーニュースによるWeb Clippingサービスのデモ
ウェザーニューズによるWeb Clippingサービスのデモ
ウェザーニュースによるWeb Clippingサービスのデモ2
ウェザーニューズによるWeb Clippingサービス。気象衛星からの画像を表示している
Web Clippingサービスのアイコン
各社が予定しているWeb Clippingサービスのアイコン

マーケティング部部長の鳥谷幸二氏は、同社の製品の登録ユーザーに対して行なったアンケート結果を紹介した。それによると、製品が気に入り、誰かに推薦した、あるいは推薦したいユーザーは96%、生活や仕事の生産性向上を実感したユーザーが73%と、高い数値を示しており、Palmハンドヘルドのシンプルな使いやすさが日本でも広く受け入れられた結果だなどとした。また、女性ユーザー比率も2月の数字で12%に達したことで、Palmハンドヘルドが幅広いユーザー層に浸透しつつあると述べた。ただし、同社製品の売り上げやマーケットシェアなどについては一切触れられなかった。

マーケティング部部長の鳥谷幸二氏
マーケティング部部長の鳥谷幸二氏

今後の戦略として、さらにユーザーの満足度を高め、Palmハンドヘルドをより深く利用してもらうため、同社製品の登録ユーザー向けにユーティリティーや地図データを収録したCD-ROM“Simply Pack IV”(※1)を配布することや、ユーザー同士のコミュニケーションの場としてパーム コンピューティングのウェブサイトにユーザーコミュニティーサイトを開設すべく準備中であることも紹介した。

※1 m500/505にバンドルされる松下電器産業(株)の手書き文字認識ソフト『楽ひら』、Web Clippingアプリケーション集、銀座、名古屋、大阪の地図データ、電源オン時からライトを点灯させるユーティリティーが含まれる。

『楽ひら』
『楽ひら』

最後に再び登場したウィル氏は、冒頭の挨拶で述べた企業向け戦略として、本日発表された同社とシステムインテグレーター/サービスプロバイダー11社の協業について紹介した。パーム コンピューティングは各社に対して、システム開発支援や企業向けセミナー、営業やSEの教育プログラムなどを通じてサポートを行なうという。11社は以下の通り。

  • (株)内田洋行
  • (株)エヌ・ティ・ティ エムイー
  • (株)大塚商会
  • 兼松コミュニケーションズ(株)
  • シーアイエス(株)
  • 新日鉄ソリューションズ(株)
  • (株)テクノアート
  • 日本通信(株)
  • (株)日立インフォメーションテクノロジー
  • (株)富士通プライムソフトテクノロジ
  • 三井情報開発(株)

パーム コンピューティングは設立後の1年で、ブランドとその製品は日本のコンピューターユーザーにほぼ浸透したといえるだろう。ただ、2000年4月のVxとIIIc発売直後に、PDAの売り上げシェアにおいて1社で過半数(55.9%)を占めた勢いは、その後のソニー(株)のCLIEやハンドスプリング(株)のVisorシリーズの発売によってそがれてしまった(数字は(株)コンピュータ・ニュース社のBCN総研調べ)。特に10月に発売されたVisorシリーズは、流行のデザインとコストパフォーマンスの高さでパーム コンピューティングからシェアを奪ってしまった。2001年4月13日付のBCN総研のデータによると、2001年第1四半期におけるパームコンピューティングのシェアは11.5%で、Palmハンドヘルド陣営ではハンドスプリングの17.5%に次ぐ2位。またベンダー全体で1位のシャープ(株)の23.5%からは大きく離されている。

同社が“第2フェーズ”として企業を狙うことには、コンシューマー市場での競争激化による伸び悩みの影響もあると考えられる。ただ、企業向けに“作り込んだ”端末では、日本電気(株)やカシオ計算機(株)、セイコーエプソン(株)といったライバルが多く、コンシューマー市場以上に簡単にはいかないだろう。

今回発表された今回のm500/505は、その小型サイズやカラー、モノクロとそろっていること、バンドルソフトも画像編集ソフト、ゲーム、メーラーなどバラエティーあふれることなどから、コンシューマー市場において、かなり競争力のある製品であることは間違いない。ただ、ビジネス向けとなると、これだけでは他社の製品との差別化は難しいかもしれない。同社が今年半ばに発表を予定しているという、通信機能内蔵のPalmハンドヘルドが登場したときが、本当の仕掛け時となりそうだ。

m500とm505
m500(左)とm505(右)ボタンやスタイラス部分の違いがわかる
『PalmPak Games Card』
『PalmPak Games Card』のパッケージ
ユニバーサルコネクタ対応携帯電話モデムアダプター
サン電子(株)が展示していた、ユニバーサルコネクタ対応携帯電話モデムアダプター『Poche Tail』

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