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「インテルからMCHの供給を受け、チップセットに注力」――米SMSC社CEO

2001年04月10日 00時58分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米スタンダード・マイクロシステムズ社(SMSC)は9日、都内で報道関係者を招き、社長兼CEOのスティーブン・ビロドー(Steven Bilodeau)氏が事業説明を行なった。ビロドー氏は「研究開発費の半分はチップセットにつぎ込んでいる。インテルからMCHの供給を受け、チップセットビジネスに注力する」などと述べた。

スティーブン・ビロドー社長兼CEO
SMSC社長兼CEOのスティーブン・ビロドー氏

ビロドー氏によると、SMSCは'71年に設立された、パソコンや組み込み用ICメーカーで、本社は米ニューヨーク州ハーパーグ。特に、シリアル/パラレルインターフェースコントローラー、キーボードコントローラーなどの機能をまとめた“Super I/Oチップ”と呼ばれるI/OコントローラーICに強く、パソコンに搭載されているSuper I/Oチップのおよそ4割(※1)が同社の製品。SMSCは工場(ファブ)を持たない、いわゆるファブレスメーカーで、生産はTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)、シンガポールのChartered Semiconductor社、スペインのAgere Systems社などに委託している。

※1 米ガートナーグループ データクエスト部門およびSMSCの推計による。

SMSCの2001会計年度(2000年3月~2001年2月)売り上げは1億6300万ドル(約204億円)で、前年度比で6.7%増加。純利益は2000年度の470万ドル(約5億9000万円)から2690万ドル(約33億6000万円)に増加した。同社の売り上げは、3分の1が組み込み向け製品、残りの3分の2がパソコン向け製品から得られている。組み込み向け製品では、工場の制御機器などの工業用LAN“ARCNET(アークネット)”(※2)用コントローラーチップ、USBコントローラーチップなどに強みを持つという。

※2 ARCNET:米Datapoint社が'77年に提唱した工業用ネットワークの規格。トークンパッシングと呼ばれる方式で、Ethernetのような信号の衝突が起こらず、システムの最大待ち時間が予測できるため、リアルタイム制御に向く。

パソコン向けでは、前述のSuper I/Oチップが主体だが、製品ライフサイクルが比較的短く、利益率では組み込み向け製品に及ばないという。また、米インテル社と'99年9月にプロセッサー用チップセットに関する技術相互利用に関して合意しているが、この合意によって、SMSCはインテルのチップセットと完全互換のチップセットを開発する権利を得たという。特にインテルが『Intel 810チップセット』以降採用している、MCH(Memory Controler Hub)とICH(I/O Controler Hub)を繋ぐ“Intel Hub Architecture”について、ライセンスを受けているのはSMSCだけだという。現在同社は、研究開発費のおよそ半分をプロセッサー用チップセットの開発に投資しており、パソコンメーカーの要望に応じてICHにSuper I/Oの機能を取り込んだ高付加価値製品を提供するという。なお同社が開発するチップはICHであり、MCHはインテルからコアの供給を受けるとしている。

『VictoryBX-66チップセット』
2000年10月に発表した『VictoryBX-66チップセット』North Bridge(Memory Controller)はインテルの440BXをそのまま使い、South Bridge(I/O Controller)にSMSCが開発した『Victory66』を使用している

そのほか日本市場では、インターネットアプライアンス製品向けのSuper I/Oチップを、メーカーの要求に応じたカスタマイズ製品の開発や、ARCNETコントローラーにプロセッサーを組み合わせた通信コントロール用プロセッサーなどの拡販に力を入れる。SMSCが'86年に日本市場参入を目的として設立した東洋マイクロシステムズ(株)(TMC)の鈴木康夫代表取締役社長は「1、2年以内にSMSCの全世界市場の売り上げの3分の1を日本市場で得られるようにしたい」という(現在の具体的な売上高や割合は明かさなかった)。

鈴木康夫代表取締役社長
TMCの鈴木康夫代表取締役社長

SMSCでは現在、チップセット関連の売り上げは100万ドル(約1億2500万円)以下とわずかだが、今後高付加価値分野のパソコン向けSuper I/O市場は10倍以上に急拡大するとしており、将来の事業の柱にと狙っている。チップセット市場では、デスクトップよりもノートパソコン向けのほうが、参入する余地が大きいとしており、特に小型のノートパソコンを多く製造する日本メーカーと密接な関係を保ちつつ、SMSCが得意とするカスタマイズ製品の売り上げ拡大を図りたい意向だ。

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