このページの本文へ

ガス冷マシンを作ろう! 第4回

ガス冷マシン完全自作編 ~その4~

2001年04月09日 02時21分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

■コア欠け対策

 通常CPUクーラーを装着する時には、CPUの中心に力がかかるようにクーラーをCPUコアと平行に保持し、金具で固定する。ここで不用意にヒートシンクをねじったり、傾けたりするとガラス質のCPUコアが欠けてしまう。CPUクーラー装着時に細心の注意を払うのは基本中の基本だ。しかし、これがガス枕の場合、コアと平行に固定するのは至難の技だ。

購入したAthlon1.2GHz(左)と破損したAthlon1.2GHz(右)
購入したゲルシート

 そんなことを考えながら半ば放心状態で秋葉をさ迷うと“ゲルシート”なるものが目についた。以前に一部で話題になった放熱グッズで、白と黒の2種類がある。ゲルという名の通りかなり柔らかい材質で弾性の熱伝導性シートのようだ。困った時にちょうど良いものに気づいたものだ。これを使えば多少ガス枕が傾いてもコアが欠けず、隙間も開かないのではないだろうか。ところがモノ自体は大抵のショップさんに置いてあるのだが、データが全く付属しない。質問しても白と黒の違いさえ解らないとのこと。そんな得体の知れないものに頼ったのが間違いのもとだが、この時にはこれが非常に魅力的な解決策に思えたのだ。千石電商秋葉原店にて大判のものを発見。ここにはデータ表も置いてあった。白の熱伝導率が1.0(W/mk)、黒の熱伝導率が1.5(W/mk)とある。黒は特に熱伝導を重視する場合向きらしい。電気抵抗はほぼ無限Ω。このゲルシートとCPUを購入して急いで帰る筆者であったが…。



■ゲルシートテスト

Apollo KT133Aを搭載したIwill製マザーボード「KK266」。SDRAMしか使用できないが、FSBを1MHz単位で設定可能

 CPUとゲルシートを買ってきて早速冷却テストだ。まずは得体の知れないゲルシートの性能をテストしようということで、焼けてしまったAD11からKK266にマザーボードを交換し、買ってきたばかりのAthlon-1.2GHzを装着して、自作の水冷クーラーとの間にゲルシートを挟みマザーボード上の温度センサでCPU温度を計測した。こういう場合、水冷クーラーは供給する冷却水の温度で自由にCPU温度をコントロールできるので実験には最適だ。冷却水量と温度を計っておけば、概ねのCPUの発熱量も計算できる。

 ところが、ところがである…。電源スイッチを入れてわずか10秒ほどで2個目のAthlonも昇天してしまったのである。BIOSの温度表示が29℃からパパッと上がって「ヤバイ」と思った瞬間(今回こればっかり…)画面が真っ黒になり、アルミの蒸発したような匂いが…。またもや慌ててCPUを良く見てみると今度は欠けてはいないが、コアの縁にコゲ痕がはっきりと。おかしい。こんなハズでは…。呆然としながら良く考えてみる。ゲルシートの熱伝導率は1.5(W/mk)、厚みが1mm、コアの面積が約128平方ミリ…。って、まてっ! 熱伝導率1.5(W/mk)つったら銅よりもずっと伝導率が低い!! Athlonの凄まじい発熱でそんなモノが1mmもあったらそりゃ断熱材みたいなもんだよっ!!  焼けるわけだ…。これはもともとCPUに使えるような代物じゃなかったんだ。良く考えてみれば予想できただろうに「オレのバカっ!!」。高い授業料でした。またCPU買いにいかなきゃ…。



■CPUの改造

購入したDuron700MHz(左)とさらに購入したAthlon1.2GHz(右)

 既に2日間徹夜状態で、ここでCPUを買ってもまた壊すという確信に近いものを感じていた筆者は、1日爆睡して考えました。
 ああ、AthlonがK6みたいだったらコア欠けなんてないのに…。ブルーな気分でまたまたAtlon1.2GHzを買ってくる。今度は動作確認用にDuron-700MHzも買ってくる。こちらの方がAthlonを焼くよりまだ被害額が少ない。こうなると完全に自腹なので背水の陣なのだ。今度CPUを破壊してしまうと原稿が間に合わない。それ以前に研究所が破産である。もう絶対に壊せない。絶対壊れないようCPUを改造しよう。CPU上に銅板でカバーを付けてしまおう。それで完成したAthlon改がこれです。名付けて“ダイハード雷鳥”。コアの周りにゲルシート黒を貼り、その回りを強力接着剤でコーキングし上に2mm厚の銅板を貼って椅子の足で12時間圧着した特製ガス冷用CPUなのだ。これなら心置きなくガス枕をグリグリできます。



改造したAthlon1.2GHz

■取り付け金具の製作

 冷却不足の場合、動かないだけではなく焼き切れてしまう恐るべきCPU、Athlon。それがハイエンドの宿命なのか? ガス枕とCPUコアの接触が悪いと3つ目の高価なCPUも破壊することになる。もう後がない。急がばまわれだ。確実にテンションをかけてガス枕を固定する金具も是非欲しい。悩み苦しんだ挙句、φ1.2ピアノ線を加工して強力なテンションを発生するSocketA用金具を自作した。また結露対策としてマザーの裏面と表面のCPU周辺に硬質発泡スチロール板を加工して断熱処理を施す。隙間は全てボンドとコーキング剤で埋め、最終的な組み込み時はガス枕を取り巻くように二重の断熱壁が完成する予定だ。

結露対策をしたマザーボード(左)、結露対策をしたマザーボード裏面(中央)、ガス枕取り付け金具(右)

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ